- Amazon.co.jp ・本 (327ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591170069
作品紹介・あらすじ
「あいつはな、誰よりも悠然と歩くんや」時代の大きな曲がり角となった70年代の京都に「河原町のジュリー」と呼ばれる有名なホームレスがいた。無数の視線に晒されてもいつも目抜き通りの真ん中を歩き、商店街の一等地で眠る男。ガラス玉のような目で空を見上げる彼は、いったい何者なのか。なぜこの街にやってきたのか。交番に赴任したばかりの新人巡査・木戸が最初にその名を聞いたのは、ひったくりにあったと交番に駆け込んできた女性からだった。彼女は自分のネックレスを「河原町のジュリー」がひったくっていったと言うのだが――。京都国体の開催を機に、街から「異物」が排除されようとしていく中で、彼の伝説は生きていた。かつてこの街で彼と人生を交錯させた人々は、やがてその「真相」を知る。人間の自由と尊厳を昭和の時代と令和の現代に浮かび上がらせ、人が「物語る」ことの意味を問うた感動作。
目 次
プロローグ
第一話 花の首飾り
第二話 坂の向こう
第三話 夜の猫たち
第四話 鳥の名前
第五話 熱い胸さわぎ
第六話 ジュリーと百恵
第七話 黒と白の季節
第八話 四十年後
第九話 真珠貝
第十話 再会
エピローグ
あとがき
感想・レビュー・書評
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本書は2021年4月に刊行され、第10回京都本大賞(2022)を受賞、最近文庫化されたようですが、単行本で読みました。
いきなり余談ですが、自分の知らないところで、知らぬ間に、「ご当地版本屋大賞」なるものが誕生しているようで‥。京都、広島、沖縄、大阪、兵庫、神奈川の他、既に終了しているものや地方新聞社主催のもの等様々なようです。ここからの〝発掘本〟探索も面白いかもしれません。
地方発のベストセラーなんて、とても素敵ですね。聖地巡礼など、観光客誘致にも多大な効果をもたらし得る可能性を秘めている気がします。何よりも地方が元気になるのは大歓迎ですよね。
んでもって本書です。京都に実在したホームレス「河原町のジュリー」の物語です。彼が何をしたわけでもなく、ただそこにいた、悠然と歩き、空を見上げていただけ‥。正体不明でも誰もが知り、伝説となっているのでした。
1979年、三条京極交番に配属された木戸浩介。彼と上司や市井の人々との日常の陰に、何故か存在感のある彼がいつもいたのです。
個人的に見たことも遭ったこともないのに、この懐かしい感覚はどこから来るのでしょうか? 郷愁を誘う昭和の出来事・カルチャーがふんだんに登場するからでしょうか?
もう、ほぼJR東海の「そうだ 京都、行こう。」感覚です。このキャンペーン、今年で30周年だとか‥。本気で京都に行きたくなる小説でした。
著者の増山さんは、若き日に彼を何度も見たそうなのですが、「河原町のジュリー」とあの時代のことを書きたいという想いは、ただのノスタルジーではない気がします。
特に私のような人生の旬を過ぎた者には、他人事と思えない読後感でした。そうです、誰にもあるのではないでしょうか? 自分にとっての、あの「時代」の、あの「街」の印象に残っている風景‥。
じんわりと心に染み込み、胸が熱くなる京都本でした。 -
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猫丸(nyancomaru)さん
> 本物のジュリー(沢田研二)のドキュメントかと
実は猫も
略称「本とコ」さんのレヴューを拝見して...猫丸(nyancomaru)さん
> 本物のジュリー(沢田研二)のドキュメントかと
実は猫も
略称「本とコ」さんのレヴューを拝見して、遠い記憶が蘇って。。。
文庫なので、猫も早々に読む予定。あくまで予定。。。
2023/10/02 -
猫丸(nyancomaru)さん
他の方達のレビューを読んで益々気になってます。
今読んでいる本を読み終えたら、読んでみようかな?猫丸(nyancomaru)さん
他の方達のレビューを読んで益々気になってます。
今読んでいる本を読み終えたら、読んでみようかな?2023/10/02 -
darkavengersさん
登録は単行本で行いましたが、9月に文庫化されたので、猫も早めに読みます。。。
darkavengersさん
登録は単行本で行いましたが、9月に文庫化されたので、猫も早めに読みます。。。
2023/10/04
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京都、四条河原町。
1970年代後半から1980年代前半にかけて、「河原町のジュリー」と呼ばれる男がいた。
彼は、誰とも話すことはなく商店街のアーケードの下の柵にもたれながら、東の空を見上げているのが常だった。
彼の名前もわからず、何処から来たのか、いつ頃から京都に居るのかは漠然としている。
孤独なように感じるが、心の内は温かだったように思えるのは何故だろう。
京都の街並みに馴染んでいたのだろうか。
また、京都へ行ってみたいとおもった。
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1970−1980年代の懐かしい空気に浸れた小説でした。ジュリーや百恵ちゃんやピンクレディーやサザン、インベーダーゲームなんてのまで出できて懐かし過ぎ(年齢バレ⁈)「河原町のジュリー」を介してあの昭和の時代の京都の一場面のストーリー群と、はじめは理解してテンポの良い文章に心地よく読み進めましたが、「河原町のジュリー」の過去の記述を読んでから彼への想いが格段に変わりました。そして彼の行動の意味や気持ちを想像して胸が熱くなりました。大勢の人にとって50年経っても戦争は終わらないのだ。京都を徘徊していた彼が見て感じていたものを想像し、私なりに考えさせられたのでした。
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かつて京都に住んでいた「河原町のジュリー」と呼ばれたホームレス。
街に暮らし、街で死んでいった一人の男。
知り合いではない、でも知らない人ではない。
その人のことを何も知らない、でも知っていることもある。
街の巡査と中学生。ジュリーの思い出。
人生のとある一時期に出会った、そんな人が誰にでも一人くらいはいるだろう。
忘れてしまったその人の、忘れられない思い出。
いつまでも心のどこかにいたんだと、時々ふと浮かぶ一瞬。
そんな人のことを、私もふと思い出した。 -
河原町のジュリーが、なぜ河原町にやってきたのか?最後の章でその謎が解けて、しっくりきたのと同時に、そんな過去があったんだと胸が痛んだ。
途中、この下りいるのか?ってちょっと飛ばし気味に読んでいたのが、ちゃんと全部繋がっていて面白かった! -
この小説の発想は何処から浮かんできたのか不思議に思いました。
河原町のジュリー、実在していたんですね。
昭和を懐かしく感じました。 -
実在した人物、河原町のジュリー。
どんな人生を歩んだのか、京都の街と一体になっていたらしい…
一気に読ませて頂きました。 -
あの、河原町のジュリーをめぐる話。虚実は分からないが、思いもかけない方向に時が行き交う。
そして描かれる70年代後半の京都河原町は、僕が知る80年代の京都の面影を忍ばせる。
1984年の4月に京都に来た僕と入れ替わるように、彼が去ったのだと初めて知った。あの年の2月は本当に寒くて雪が多かった。
今年ベストワンの小説。20代を70年代〜80年代の京都で過ごした人、必読です! -
私の大学4回生の頃の河原町界隈が舞台。実際に「河原町のジュリー」と呼ばれたホームレスの方がいたらしいが、映画見に行く時くらいしか出ないところなので、私は知らない。でも、その頃歩いてたところなので、なんか懐かしい。第6話で主人公が見に行く「太陽を盗んだ男」、彼らは11月に菊映に見に行ってるけど、私は10月22日に「配達されない三通の手紙」との2本立てを見た。なぜか東宝と松竹の組み合わせで、京都でなく大阪の京橋で見た。作者は77年同志社法学部入学と云うことで、3回生の時か。1学年下やけど、この辺りをフラフラしてはったんやろな。あと、初めの方に「大文字焼き」と云う記述があるが、そうそう今は送り火って云わんと二重焼きかって云われるけど、昔は京都でもどっちでも云われてたわ。そう云うのも実感あり
そう言えば居らっしゃっいました(残念乍らお目にしたコトはないが)。猫が若かった時に目撃...
そう言えば居らっしゃっいました(残念乍らお目にしたコトはないが)。猫が若かった時に目撃談を何度か聞いたのを思い出しています。
もっと最近の話になりますが、大阪には「淀屋橋ゴッホ」なる絵描きさんが居て(スミマセン今どうされているか不明)、一度だけ遭遇したコトが。。。
ホームレスを許容出来ない(しない)社会の貧しさを感じる今日この頃でした
コメントありがとうございます。貴重なお話ですね♪
かつての方が〝市民権〟あったかも、ですね。
だんだんと生き...
コメントありがとうございます。貴重なお話ですね♪
かつての方が〝市民権〟あったかも、ですね。
だんだんと生きにくい世の中になってる(^^)?
> だんだんと生きにくい世の中に
多様な働き方と言う名目で切り捨て易くなったり、...
> だんだんと生きにくい世の中に
多様な働き方と言う名目で切り捨て易くなったり、
「排除アート」と言う訳の判らないモノも増えてる。
何だか遣り切れないですよね。。。