新宿の猫 (ポプラ文庫 と 1-6)

  • ポプラ社
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (271ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591172049

作品紹介・あらすじ

何をやってもうまくいかない「ボク」は、明日が見えない闇のなかでもがいていた。そんなある夜、ぶらりと立ち寄った小さな飲食店で、さまざまな猫の特徴がしるされた一枚の紙に心をうばわれる。それは店で料理をつくる夢ちゃんが描いた「猫の家族図」だった。行き場を失った猫に寄りそう彼女は、「ボク」に猫と自分の秘密を打ち明け、ふたりは大切な約束をする――。夜の底からあふれだす優しさ、胸に灯る温かないのちの物語。

感想・レビュー・書評

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  • 猫の物語というより、猫が繋いだ人にまつわる物語で好きな作風でした。
    新宿ゴールデン街には行ったことありませんが、「花梨花」の様に喜びや痛みや悲しみを受け入れてくれる場所や人は必要なんですね。それと同じ様に猫の居場所も必要なんです。

    山ちゃんの色弱も夢ちゃんの斜視も猫には関係ない。なぜなら猫は目の光や輝きを見ているのだから。確かに人の浅はかさや本質を見透かしたような気高さが猫にはあります。

    山ちゃんと夢ちゃんの関係性が切な過ぎて、この感情をどう消化すればいいかと思いましたが、2人の気持ちは最終章に凝縮されていました。
    読み終わった後、何とも言えない余韻と共に一役買ったトムウェイツのダウンタウン・トレインが聴こえてくる様です。

  • 猫の話と思ったら、猫が繋いだ人の話って感じでした。
    バブルの頃は知らないけれど、今では考えられないくらいに派手で明るくて、乱雑で粗暴な、色々な意味で野心と夢に滾った人が多かった頃なんだろうなぁ。
    山ちゃんは大問題な職場環境だし、夢ちゃんも大問題な家庭環境だし。
    猫のギャンブルすごくいいですね。猫好きじゃなくても、酒好きじゃなくても、その場の雰囲気をすごく楽しめて隣の人と仲良くなれそう。
    餌付けを良いとは思わないけど、なんとなく飲み屋街にいる自由猫達って好きです。
    誰かは飼ってるつもりだったり、自分が世話してるつもりだったり、でも猫は養われてる気がさらさらなくて、適度な距離感ですごく可愛い。
    夢ちゃんが消えてしまった原因はとても悲しいことだったけど、最後にハッピーエンドになってて良かった。
    途中から入ってくる2人の詩もとても良い。
    葛藤と幸福感がじわじわ滲み出てくるような、焦ったい人情ものだったので、特別猫好き向けの小説ではないかも。
    でも猫はいっぱい出てくるので、好みのコを見つけたくなります。

  • 居酒屋「花梨花」の客と夢ちゃんとボク山ちゃん、そして通りすがりに覗いていく猫たち。
    ほぼほぼボクの視点で語られる世界は小さいけれど広く、狭いけれど奥深い。そしてちょっぴり哀しい。けれど、ホッとする。
    泣いてしまった 久しぶりだった

  • 自分は最後に出てくるスマホを眺めながら一杯飲んだ青年の立ち位置だから、この話の温かさをふわりとしか感じ取れないが、時代という背景を知っていればより心に響くんだろうなと惜しく感じた。

  • 新しく改装などしたら絶対に復原できない、新宿のゴールデン街。

    そのひとつの飲み屋さんに通うようになった1人の若者。

    夢ちゃんと呼ばれる店員さんと、お店に貼られていた猫の家族図

    切ないけれど希望の光が見えるお話

    猫達だけが信じられる 猫達だけしか信じられない

    「金のあじさい 銀のあじさい」のエピソードがこころが痛む

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著者プロフィール

ドリアン助川 訳
1962年東京生まれ。
明治学院大学国際学部教授。作家・歌手。
早稲田大学第一文学部東洋哲学科卒。
放送作家・海外取材記者を経て、1990年バンド「叫ぶ詩人の会」を結成。ラジオ深夜放送のパーソナリティとしても活躍。担当したニッポン放送系列『正義のラジオ・ジャンベルジャン』が放送文化基金賞を受賞。同バンド解散後、2000年からニューヨークに3年間滞在し、日米混成バンドでライブを繰り広げる。帰国後は明川哲也の第二筆名も交え、本格的に執筆を開始。著書多数。小説『あん』は河瀬直美監督により映画化され、2015年カンヌ国際映画祭のオープニングフィルムとなる。また小説そのものもフランス、イギリス、ドイツ、イタリアなど22言語に翻訳されている。2017年、小説『あん』がフランスの「DOMITYS文学賞」と「読者による文庫本大賞(Le Prix des Lecteurs du Livre du Poche)の二冠を得る。2019年、『線量計と奥の細道』が「日本エッセイスト・クラブ賞」を受賞。翻訳絵本に『みんなに やさしく』、『きみが いないと』(いずれもイマジネイション・プラス刊)がある。

「2023年 『こえていける』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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