人はひとりではいきられないのだろうか。
ひとりでは不完全なのだろうか。
ひとつの答えとして、毛人は
この世は男と女の二つで成り立つと云う。
毛人は厩戸も布都姫も愛しているのだろう。
そして布都姫を選んだ。
「女と男は対になることで生み出されるものがある。
男である私と男であるあなたが一緒になっても先に進まない」と
毛人は答えを出したのだ。
厩戸は自分と同じものを求め
毛人は自分とは違うものを求めている。
厩戸が女であったならなにか違ったであろうか。
毛人は愛したかもしれない。
けれど、厩戸は毛人を愛して幸せになれただろうか。
厩戸の心は複雑だ。深い傷がある。
人には理解できないほどの天才であるがゆえの孤独ではなく、
母の愛に飢えている。
彼は幸せだったことがないのだ。
毛人を失った瞬間、永遠に誰も救うことはできない。
孤独が続く。
読んでいて虚無感に飲み込まれそうになる。
無駄だとわかっていても活きてゆく厩戸の強さは凄まじい。
最後になって厩戸の冷酷さは
生きるのびるために彼には必要なことなのだと理解できる。
哀しい。なんだろうこの哀しさは、
人はみな哀しいのかもしれない。