- Amazon.co.jp ・本 (40ページ)
- / ISBN・EAN: 9784593503032
感想・レビュー・書評
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アメリカの詩人エミリー・ディキンソンと小さな女の子の交流を描いた絵本。
エミリー・ディキンソンは、1830年マサチューセッツ州のアマーストで生まれ、1886年その地でなくなりました。
ずっと独身で両親の家で妹と暮らし、内気で知らない人には会おうとせず、とくに亡くなる前の25年間は家を出なかったそうです。
死後に1800もの詩が見つかり、発表された詩で有名になりました。
最初にそう聞いたときには、鬱蒼とした館で鬱々と暮らしていたイメージでしたが、そんなに暗くはないようです。
通りに面した家で、庭仕事もしていて、草花を育てる達人でした。
近所の子供とは付き合いがあったそうで、家に来る子供と話したり、窓から籠に入れたクッキーを降ろしてあげたりしていたとか。
きちんと髪を結って、白いドレスを着た、内気な女性。
丁寧なタッチで、あたたかく描かれています。
おむかいの黄色い家には、姉妹が住んでいて、お姉さんの方は外に出てきたことがない謎の女性。
小さな女の子の家に、ある日手紙が舞い込みます。
いつもピアノの練習をしているママにあてて、家に来てピアノを聞かせて欲しいというお誘い。
その夜、「興味はあるんだろう」とパパがママに話しているのが聞こえました。
次の朝、家中が音楽で溢れていました。
「詩ってなんなの?」とパパに聞くわたし。
新しい絹の服を着て、ママと一緒にお向かいに出向きます。
謎の女性は、部屋の外の階段で聞いている様子。
一曲ひき終えると「ごしんせつなおとなりさん。コマドリもあなたにはかないませんわ。もっと弾いて下さい。もう、春がそこまで来ているような気がしてきました」と小さな声がします。
部屋の外に出て、階段にいるエミリーに会った女の子は、紙切れを見て「それ、詩なの?」と聞きます。
「いいえ、詩はあなた。これは、詩になろうとしているだけ」と答えるエミリー。
1993年度コルデコット賞受賞作。
バーバラ・クーニーは3度目の受賞だそうです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
多分バーバラ・クーニ―の絵が好きで、読みたいと思ったのだと思います。
表紙の、青いケープコートとマフの女の子のことをエミリーと言うのだと思っていました。
エミリーとは表紙の、2階の左端の部屋から外を見ている女性のことです。
語り手の私はまだ本の少女で、新しい家に引っ越してきたばかり。
その家の向かいにある黄色い家には、町の人たちから”なぞの女性”と呼ばれている、20年近くも家の外に出たことのない人が、妹とふたりですんでいました。
少女のお母さんはピアノが得意で、ある日”なぞの女性”から、「家に来てピアノを弾いてくれ」と正体を受けます。
少女もついていきますが、”なぞの女性”は姿を現わしません。
でも、部屋の外に出ると、階段の踊り場で小さな椅子に座ってピアノを聞いていた女性がいたのでした。
少女はポケットからユリの球根をふたつ取り出し、「春を持ってきてあげたの」と言います。
少女と女性の小さな交流。
それだけの絵本ですが、とても温かい気持ちになれる絵本です。
途中で、エミリーの正体はわかりました。
生涯を屋敷の中で隠遁して過ごし、死後になって大量の詩が発見され、アメリカの人たちに愛されている詩人、エミリー・ディキンソンのことですね。
私ちょっとエミリー・ディキンソンって、宮沢賢治に似ているような気がしていました。
死後に作品が発見されたこと、その作品を多くの人が知っていて国民的詩人であること、子ども好きなこと、自然に対する観察の鋭さなどなど。
だけど日本語に訳された彼女の詩を読んでも、あんまりピンとこなかったんですよね。
国民性の違いなのか、私の感受性の問題なのか。 -
バーバラ・クーニーの絵は静かで、話も静かにすすんで・・・
静かにあたたかい。 -
詩人エミリー・ディキンソンとエミリーと出会う少女とのささやかな交流を描く絵本です。
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上品で神秘的で詩的な絵本。
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バーバラ・クーニの絵が好きです。
最後に書かれていたエミリーの詩がステキです。
天国をみつけなければ--地上で--
天上でもみつけられないでしょう--
たとえどこへうつりすんでも
天使はいつもとなりに家をかりるのですから-- -
この静かなあたたかさがわかる人になってほしい。