極大射程 下 (扶桑社ミステリー)

  • 扶桑社
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  • Amazon.co.jp ・本 (454ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784594068523

感想・レビュー・書評

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  • まさに娯楽エンターテインメント小説の決定版。
    狙撃手(スナイパー)を主役にした小説は数あれど、本書が元祖スナイパー小説の最高峰だろう。
    ボブ・リー・スワガーシリーズの第一巻。映画化もされている。
    恥ずかしながら僕はこの本のことはずっと前から知っていたのだが未読だった。

    いや、みなが傑作ということだけのことはある。
    この本が1993年の刊行だとは思えないほど古さを感じさせない。
    まさに手に汗握る大活劇。
    主人公は、ベトナム戦争で海兵隊の狙撃手として活躍したスワガ―軍曹。現在は退役し、余生を一人で過ごしている。そんな彼のもとに特製のライフル用弾丸を試射してほしいという依頼がくる。そこからスワガ―は大統領暗殺計画という陰謀に巻き込まれていくのだ。

    まじで、面白い。
    冒険小説が好きで、スナイパーものが好物の人にはたまらない物語。
    未読の人はぜひ、騙されたと思って読んでもらいたい。本当に冒険アクション小説の要素がすべて詰まった傑作だ。

  • 主人公は退役した海兵隊員、ベトナム戦争の英雄ボブ・リー・スワガー。銃を持てば右に出るものなしの天才スナイパーです。
    巧妙な罠に嵌ってしまったボブの戦闘を描く、いかにもアメリカ的な、ハリウッド映画さながらのアクション小説。

    が、そんじゃそこらのよくあるアメリカンヒーロー物と一緒にしちゃあいけません。
    ボブの老練の渋さに痺れて一気読み間違いなしの超ド級のおもしろさ。
    高度な頭脳戦も繰り広げられ、単純なドンパチ物ではないのです。

    そして、これは徹頭徹尾「銃」の物語でもありました。

    銃というものがこれほどまでに哲学的に描かれているのには驚きました。
    銃についての薀蓄が満載で分からないながらも楽しい。慎重に事前準備を重ねるボブの仕事っぷりがとても地味なのも意外。

    ハリウッド映画のような派手なアクション、弾丸飛び交う展開が満載ながらも、ボブの静かで冷静なプロの姿勢によって、静謐で緊張感ある雰囲気が常に漂います。

    脇を固める登場人物たちも素晴らしい。敵も、仲間も、犬や鹿でさえも!
    ボブの無実を信じる人々がボブを信じる理由というのが、「あの男が失敗するはずがないから」というのがなんともかっこよかったです。

    銃に魅せられた男の、銃による銃の為の銃の物語。
    銃という力の象徴に人間の生き様が映る、渋くて熱くて、そして爽やかな大作でした。

    ネタバレ・・・・・・・・・・・・・・・・・・















    まさか最後は法廷で決着をつけるとは。

    最後の最後も銃で締めるというのが気持ちいい。
    最初から無実の証拠を持っていたとなれば、ボブはまさしく汚名返上の為だけに行動していたのだと気付きます。
    法廷で惨めな思いをするニックに向けてのボブの破顔一笑にはワクワクしました。

    • しろコシオさん
      未読なのですが、なんだか懐かしい…というか…
      自分の積読の最古参クンです、もう10年になるかも?読まなくちゃなりませんね!ていうかニコルさ...
      未読なのですが、なんだか懐かしい…というか…
      自分の積読の最古参クンです、もう10年になるかも?読まなくちゃなりませんね!ていうかニコルさんのおかげで思い出しました。
      2014/11/26
    • ニコルさん
      わたしも新潮文庫をずーーーっと積んでました。。。
      なのに読んだのは扶桑社;
      読みだしたら止まらないくらいおもしろいです!
      まぁ、その読...
      わたしも新潮文庫をずーーーっと積んでました。。。
      なのに読んだのは扶桑社;
      読みだしたら止まらないくらいおもしろいです!
      まぁ、その読みだすまでが大変なんですよね……。
      2014/11/26
  • このミス海外編2000年版1位。海外編もこの年代になると普通に面白い。この年の2位がボーン・コレクターだし、この先も楽しみ。本作はのちにシリーズ化される第1作目であり、スーパーヒーローが活躍するやつってわかってるので安心して楽しめる。話は比較的わかり易い娯楽大活劇。主役がかっこいいし、魅力的な女性がからんでくる。まあ、最初はちょっととっつきにくいとこあるけど、途中からはグイグイ進む。前半は緻密なロジックでスゲーと思うけど、後半はなんだか雑な感じで大味になってきて、そんなとこブラついてたら殺られてまうでしょとか、ちょっとご都合主義すぎるでしょと思ったりします。それでも、最後に大技がかかるのが爽快。文庫上巻の242頁の「数分間の溶接と、ちょっとした調整ですむことで、少なくとも彼らがなんらかのやり方で自分を利用しようとしたときには身を守る手段にもなる。」を読んだあとしばらくはこの伏線はどこで回収されるのか気になっててたのですが、下巻の最後にはすっかり忘れてました。

  • 下巻から
    ようやく本格的な戦闘へ
    敵味方の両脇役たちもいい味を出してきます。
    ボブがまたどうにもカッコいい
    御都合主義?いやいやベタでいいじゃんよ
    最後の最後まで勝てるかわからない。

    でも、お財布事情的に
    (^^; シリーズを追うのはまだ後でいいかな?

  • んー、最後まで、「これ、もう、主人公まけんじゃない?」シチュエーションが立て続けに続くが、驚異的に勝ち抜く。エンターテイメントとしては面白いんだけど、さすがにややご都合主義が鼻につく。シリーズ、たくさん出てくるけど、すぐに次作に取り組むほどは印象に残らなかったかなぁ。

  • 何度も主人公や、その仲間達が死んだと思った…絶体絶命のピンチを全力で跳ね返して立ち向かうの格好いい!
    ラスト近く、また終わったと思ったら、もう忘却の彼方にあった某保険が見事に働いて大逆転。痺れたー!
    老弁護士も惚れ惚れする仕切りで、大勝利を収めた2人は共に女と幸せになりましたとさ。
    めでたしめでたし。
    個人的には犬の記述に泣けましたよ…そう、あいつらは健気なんだよ…

  • 続編も読まなければ。

  • 銃についての描写が詳細で、正直読み飛ばす部分が多々ありました。
    思ってた以上に戦争ものでした。

    ラストの法廷対決の場面は良かったです。

  • 読了。
    原作より映画の方を先に観たのであまり期待して無かったのだが、正直映画の10倍は面白かった(笑)。映画の方は、如何にもハリウッドが好きな典型的な合衆国政府陰謀モノ。
    原作も主たるプロットはそうなのだが、まず主人公「ボブ ”ザ・ネイラー"」の造形がはるかに映画より魅力的。なんせ映画のボブは「テッド」のダメにーちゃんだったからな…。
    あと映画では只のわき役だったFBI捜査官のメンフィス。彼も己のカルマをボブの過去と交錯させながら、ある意味この物語の主役を担っている。
    ミステリーとしても当然面白いのだが、小説としても結構高レベル。

  • エルサルバドルの大司教暗殺の容疑でCIAとFBIから追われる、ベトナム帰還兵のボブ・リー・スワガー。彼の名誉回復をかけた男の戦いに胸を打たれる。

    八方ふさがりの展開にハラハラしっぱなし、手に汗を握らずには読めない!ラストはどんでん返しの連続だった。心臓によくないな、この種のエンターテインメントは。

    多くを求めず、一つのことにまい進する男は修行僧のようだ。
    そんなスワガーの美学に惚れた。
    実に男臭い冒険小説だ。

  • ライフル射撃のレジェンド、ボブ・リー・スワガー・シリーズの第一作。これ草食男子ならずとも憧れる男像では。作品で描かれるような窮地にはたいていは出会わないと思うけど人生の窮地にはいつかだれしも遭遇するわけでその時に自分のオトコが試されるのも事実。そんな時にスワガーを思い出せると頑張れるかもって一冊です。

  • 爽快な読了感を持つ類い稀なる冒険小説。男たるもの、こうありたいというような人物がボブ・リー・スワガーであり、ボブ・リーの父親アール・スワガーの物語も、現在進行形の息子レイ・クルーズの物語も、全てこの作品から始まるのだ。

    凶悪な狙撃犯として、全米を敵に回したボブ・リー・スワガーは自らの無実より、己れの信念のまま正義を貫く…そして、結末は…

    スティーヴン・ハンターのマニアックなまでの銃火器の緻密な描写にも驚かされるが、何よりも冒険小説の中にミステリーの要素をふんだんに盛り込み、予想も出来ぬ結末を用意しているところが凄い。

    未読の方は是非、読んでみては。

  • 本書を読むきっかけは、スティーブン・ハンターの新著『囚われのスナイパー』の書評を読んだこと。「な〜んだ、シリーズものか〜、じゃ最初から読まないと」ってことで図書館で借りました。

    上下2巻で、返却期限までに読めるかな?と思いましたが、"page turner"(=ページを捲る手を止められない)で余裕で読了。ハラハラさせられ実に面白かった。ウォシタ山脈とハード・バーゲン・ヴァレーでの死闘には正に手に汗握りました。"twists"も練れていて満足。

    私は映画の"Jason Bourne"シリーズが超お気に入りなのですが、その私のテイストにピッタリでした。『囚われのスナイパー』まで充分楽しめそうで嬉しいです。

  • 思った通りに大団円。
    確実に狩る事が出来ると思っている大悪党共の
    裏をいともたやすく画く、この気持ちよさ!
    にくいね~ボブ。
    コロナで閉塞感のある毎日を送ってる今だからこそ、
    小説の世界だけでも、スッキリ爽快な気分に
    させてくれるのは、とても素晴らしい事だ。

    やっぱり悪党は絶対的に悪党であって欲しいものだ。
    そしてヒーローは常に完璧でなくてはいけない。

    悪党に同情したり、ヒーローが悩むのは頂けない。

    暑くて喉がカラカラに乾いてる時にキンキンに冷えた
    ビールを一気にゴクゴク呑むような突き抜けた爽快感が
    冒険小説の醍醐味なのだ。

  • 1993年発表、ハンターを一躍メジャーな作家に押し上げたボブ・リー・スワガーシリーズ第1弾。銃器への偏愛が全編にわたり横溢し、かの大藪春彦を彷彿とさせるほど。マニアックなディテールは、時に筋の流れを堰き止めかねない分量に及ぶ。だが、勢いのままに筆を走らせる作者は、力技で読み手を捩じ伏せる。起伏に富むプロットに緊張感溢れる活劇を盛り込み、燃える男を活写。ハンターの並々ならぬ意気込みを感じる力作だ。

    ベトナム戦争時、米軍海兵隊2位の腕を持つといわれた名射撃手スワガー。除隊後はウォシタ山脈で隠遁生活を送っていた。そんな中、米政府の法執行関連テクノロジー/武器/訓練/小火器の専門的助言を請け負うという組織の者が、新開発した銃弾の試射を依頼。極めて精密な長距離狙撃を可能にするという誘い文句に興味を引かれたスワガーは受託。難なく仕事を終えたが、組織はさらなる要望を加えてきた。近々当地で演説する大統領の暗殺計画を入手。〝いつ、どこで〟は掴んでいるが、〝どこ〟から狙うかが分からない。某国に雇われた暗殺者が、かつてベトナムの地で己に重傷を負わせ、親友を殺したロシア人と同一人物だと知ったスワガーは、大統領がセレモニーを行う現場を視察、トップレベルのスナイパーが選択するに相応しい狙撃の場を事前に突き止め、組織に告げた。
    そして、世捨て人同然だった男は、己自身の過信と油断故に、罠に嵌まる。大統領狙撃は阻止されず、スワガーは暗殺者として仕立て上げられた。使用したライフルや銃弾、暗殺実行日直前の行動など、全ての証拠がスワガーが殺し屋であることを指し示した。銃弾を浴びながらも辛くも逃げ延びた男は、抑え切れぬ憤怒を抱えたまま、壮絶な復讐戦へと没入する。

    様々な伏線を貼る序盤はややもたつくが、暗殺者の汚名を被る場面から一気に加速し、終盤までスピードを緩めない。図らずもスワガーの味方となるFBI捜査官や、凄腕の車椅子スナイパーなど、一癖ある登場人物を配置。ただ、女性を描くことは不得意らしく、ロマンス的要素は浅い。必然、本作での読みどころは射撃のエキスパートによる白熱の闘いにある。中でも白眉となるのは、数百人の戦闘員に囲まれた山上で迎え撃つ高密度のスナイプで、ハンターは圧倒的な筆力を披露している。

    本作は世評も高く、ハンターの代表作に相応しいのだが、粗さも目立ち、私は絶賛とまではいかない。その最大の理由は、冒頭で二度と「殺さない」と誓っていたはずのスワガーが、自尊心を傷付けられたが故に、何の葛藤もなくあっさりと撤回することにある。まるで開放/爽快感を味わっているかのように繰り広げる殺戮。導入部で森の中に棲まう老鹿とスワガーが触れ合うシーンがあり、無意味な死に与しない信念を伝えているのだが、このエピソードが浮いてしまっている。主人公の変貌に触れないことは、展開上不自然な欠落であり、深みにも欠けていると感じた。また、今ひとつ感動の度合いが低いのは、射撃に特化したヒーローとして割り切る〝ゲーム性〟に重点を置いているからだろう。銃器のみに愛情を傾けるという非情なアウトローという設定では情感が流れず、アクションのみを目玉とせざるを得ない。所詮は、ベトナムで何人殺したかが尺度となる世界のストーリーを、読み手が受け入れられるかどうかで違ってはくるのだが。さらにもうひとつ。終幕近くでスワガーの罪を問う裁判のパートは明らかに蛇足で、もう一捻り付け加えているとはいえ、クライマックスの高揚感を弱めている。

    本作は、物語として充分完結しているのだが、読者の評判が良く、作者自身も自信があったため〝サーガ〟化したのだろう。スワガーは、第一弾の時点で四十代半ば。驚くべきことに、シリーズ最新作「狙撃手のゲーム」(2019年)では七十代の老人である。如何に高齢化社会とはいえ、いい加減ヒーローから解放したらどうかと思うのだが。自らの年齢を反映させているらしいハンターはともかくとして、老いたスワガーの活躍さえファンは待ち望んでいるのだろうか。

  • 最高

  • スティーヴン・ハンターによるボブ・リー・スワガーシリーズ第一弾下巻。
    容疑者となったボブとFBIを追放されることになったニックがともに協力しながら自らの無実の証明と自らを窮地に追いやった相手への復讐を果たすために動き出す。
    やがてニックはボブの無実を確信し、CIAの汚れ仕事を担ってきた組織の証拠集めを始める。ボブは意外とそこへの執着はなく、ニックはそんなボブの態度に苛立ちを隠せない。
    この辺りの二人の描写の上手さ、これが最後の最後に法廷でのボブの公判の際まで効いてくる。なぜボブがこれほどまでに証拠に固執しなかったのかが明かされると、ボブという人の奥深さに改めてハッとさせられるとともに、ますます魅力ある人物としての印象を残す。全てがすっきりと、何も思い残すことなくラストを迎えるあたりも素晴らしい。

  • スナイパーの実態、実在のスナイパーの引用、そしてストーリー展開、面白いです!1400ヤードの狙撃がどんなものなのか、ストーリーの中でゴルゴ13より分かりやすく理解できます!続編というかシリーズ読んでみます!2015/2読了。

  • 徐々にストーリー展開が早くなって、引き込まれていった。(8月のお盆休みに)映画も見た。本を読んだ時のイメージしていたものとは明らかに場所の設定が違っていたので、多少違和感を感じたところもあったが、最後は本と同じような感情にしてくれた。映画化された本を読む気になった。

  • 上巻からの物語的な溜めが見事にカタルシスに繋がっている。敵にまんまと嵌められたボブの逆襲はもちろん、上巻で冴えなさっぷりを発揮したお人好しニックが活躍するのでとても胸がすく。

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著者プロフィール

Stephen Hunter
スティーヴン・ハンター

1946年ミズーリ州カンザスシティ生まれ。
68年ノースウェスタン大学卒業。
71年ボルティモア・サン紙に入社。
書評担当などを経て映画批評担当になる。
96年ワシントン・ポスト紙に転じ、
映画批評部門のチーフとなる。
2003年ピューリッツアー賞(批評部門)を受賞。

「2022年 『囚われのスナイパー(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

スティーヴン・ハンターの作品

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