香乱記〈中巻〉

著者 :
  • 毎日新聞出版
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感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620106779

感想・レビュー・書評

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  •  中巻に入って、というか、項羽が登場して(だと思う)、描写が丁寧になってきた。史書に現れない、人物の思考を辿っていくような描写。そこに筆者の人となりも反映されて、そこに厳しさと優しさとを感じるから、この人の作品が好きなのだと思う。上巻は、物語の基部を固めるのに一生懸命で、そこまで手が回らなかったのか? という好意的な見方もできるけれど、しかしプロの仕事なのだから、そういうことはできれば言いたくないなぁ。<br>
     物語の中心点がぶれ続けている、落ち着かなさがあります。田氏を当初中心に据えていたはずなのに、気がつけば史書に振り回されている。そんな感じがする。項羽と劉邦だったり、秦帝国の興亡だったり、古今いろいろなところで作品化されてきた、それらが筆者の頭の中でちらついて、振り回されているのではないか、と思う。読者も同じところに立てれば、そこに破綻はないのかもしれないが、同じところに立てない読者には、破綻しかない。小説とはそれでいいのか、という想いが沸々としている。

  •  田横を主人公とした小説の第二巻です。
     この巻の前半では、田氏兄弟の挙兵・斉王への登極、陳王朝の瓦解が描かれています。田横は、地位は将軍として遇されていますが、実質この時期から宰相同然の働きをしています。
     後半は田横が、魏の周市将軍に諮られて単身魏王の寝所に忍び込み、囚われの身になるが逆に魏のために起ちます。魏王(魏咎)が民の助命を申し出て自殺するのは田&#20747;が死後を付託する場面と並んで、名場面だと思います。後は、項羽と劉邦を中心とした各勢力の話へと移っていきます。
     最後のエピソードは、馬鹿の話でしたので二世皇帝がもうすぐ趙高に殺されるはずです。次巻はこのペースだと、随分圧縮して書かれたのではないかと心配です。宮城谷昌光氏の小説はそういう傾向が多々有りますので・・・・。

著者プロフィール

宮城谷昌光
1945(昭和20)年、愛知県蒲郡市生れ。早稲田大学文学部卒業。出版社勤務のかたわら立原正秋に師事し、創作を始める。91(平成3)年『天空の舟』で新田次郎文学賞、『夏姫春秋』で直木賞を受賞。94年、『重耳』で芸術選奨文部大臣賞、2000年、第三回司馬遼太郎賞、01年『子産』で吉川英治文学賞、04年菊池寛賞を受賞。同年『宮城谷昌光全集』全21巻(文藝春秋)が完結した。他の著書に『奇貨居くべし』『三国志』『草原の風』『劉邦』『呉越春秋 湖底の城』など多数。

「2022年 『馬上の星 小説・馬援伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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