下流の宴

著者 :
  • 毎日新聞社
3.67
  • (91)
  • (280)
  • (218)
  • (29)
  • (8)
本棚登録 : 1587
感想 : 275
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620107530

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 「いい大学を出ていい会社に入れば一生安泰」
    そんな価値観が崩壊して久しいですが、まだ信じきっている人もいるのだろうなと感じました。自分も少なからず考えている事なので。
    学歴はつけておいて損はないし選択肢も増えるから、子供たちにもそれなりの……という思想こそもう通用しないのでしょうか。
    考えさせられます。

    由美子の口惜しさと子供・孫への執着、母の価値観を受け継いだ可奈、昔で言う三無主義の翔、存在感のない父親(名前すら印象にない)……福原家の人々は好きになれませんでしたが、珠緒とその母親の気風の良さは読んでいて心地よかったです。

  • この本のタイトルを見たとたん、あの林真理子さんが下流?と一気に興味をもち読みたい!と思いました。
    林真理子さんの本は読みやすくて面白い~と思い、昔から読んできましたが、嫌だな~と思うのは、毎度毎度作品にバブルの頃はどうの、学歴がどうのという記載があることです。
    女なら短大卒が最低の学歴(短大というのが時代を感じるけど・・・)だというのは何度も目にしたし、登場人物はお金や地位のある男性と何とか縁をもちたいと奮闘している。
    それ以外の人って、この作者にはアウトオブ眼中なんだな~とずっと思い、ハナにつくと同時にうんざりしてました。
    だからこの人がどんな下流を描くのかと興味津々だったけど・・・。
    主人公は普通よりちょっと学歴があり裕福な主婦で、その一人息子が高校中退してフリーターになった。
    しかも結婚したいと言い出すが、その相手というのは主人公が「下流」と見下げる、高卒の沖縄の女の子。
    だから自分は下流になったと嘆くわけですが・・・。
    これが下流なのか・・・というのが正直な感想でした。
    プライドや優越感をもつほど、主人公も上流階級の人間でもないのに。
    それにいつものように、金持ちで条件のいい男性と結婚しようと目論む女の子が出てきてタイトルは下流だけど、書かれてるのはいつもと同じ内容。
    まあ、ここくらいまでが限界なんだろうな・・・。
    想像通りの「下流」でした。

    とまあ、そんな風に今回もハナがついた所がありつつも、楽しんで読めました。
    ラストも何とも皮肉だし。
    印象的な場面は、主人公の娘と、息子の恋人がすれ違うシーンです。
    お互いとも相手が自分にとってどういう存在なのかしらない。
    主人公の娘はいかにも林真理子さんの書く女の子という感じで、人生の目標を裕福で何不自由ない暮らしを送らせてくれる相手と結婚するということにおいている。
    一方、息子の恋人は自分の力で、何と医大を目指そうとしている。
    そんな対照的な二人が白金という場所ですれ違うというのが何とも皮肉で印象的でした。
    読み終えて、美しさとか若さとかそういうものって頼りないものだし、自分で手に入れたものでないものは移ろいやすいものよな~と思いました。

  • それぞれに、ひどく単純な価値観で生きてる人たち。ちょっと極端に書かれてる分、「こんな人いるいる」って、リアルに思い浮かべやすい。

    真剣に、一生懸命になればなるほど滑稽。それが他人事なら。こんな家族に生まれたら、こんな境遇になったら…まったくぞっとするけど。

    男性も出てくるけど、女性のがキャラが濃い。女として私は、登場人物の誰の生き方ならできるかな、と考えたりした。母娘三代にわたる生き様比べが、時代感もあっておもしろい。

  • まるで自分を見ているような……と言う事はないが、なんとなく、どの登場人物にも少なからず共感する部分があった。
    体裁ばかり気にせず、ガッツを持って生きて行きたい(笑)

  • 初読。

    もうちょっとで突き抜けれそうなもどかしさや欲求不満は
    あるのだけれど、久しぶりにやっつけでない、
    林真理子にはまだ作家魂があったのだ!と思わされた作品。

    沖縄出身の珠緒ちゃん、こういうタイプも書けるんじゃん!
    ちょっとステレオタイプで少女漫画的だけどね。

    母由美子の気持ちもね~、わかるわ~、、、
    翔とかホントどーすればいいのだw

    答えは出てなくて、読後感も良くなくて、エピソードがブツブツした印象で
    決して好きな小説じゃないんだけど絶対嫌いじゃない小説。

  • 一気に読破。裕福な暮らしをする一家と、いわゆる貧困層と言われる一家を対比的に描き物語が進んでいく。

    この物語を読んでいてすごく思うのは。否が応でも、子供というのは親を見て育つ。親の常日頃の発言と思考が子供に浸透していく。そのまま何の引っかかりもなく、そして親に共感し親の言うように育てば、同じようにコピーされた子になる。逆に親の意見や考えに賛同できない場合は、どこかで爆発するか、糸がプツン、と切れてしまうようなタイミングがある。

    この本の救いは、この本で言われる"下流の人"(この言い方、本当に嫌だな、、)とされる沖縄出身の高卒の女の子が、悔しさをバネに一発奮起して医師を目指し、そこに光が当たることだ。しかしその傍らで「育ちのいい自分の息子は彼女とは違う世界に住むから結婚なんて絶対にダメだ」と言う母親の姿。日本の縮図なんじゃないかとも感じる。表では格差なんてないようにみんな生きている。でも、こうやって、自分達が上だ、と思っている人は"自分より下だ"と思う人たちを蔑み、絶対に血が混ざらないようにする。、、この方の小説は、こう言う、人間の暗いところや闇の部分が露骨に出てくるからこそ、こんなふうにならないように、考えないようにしよう、と改めて感じさせられる。すごく後味が悪い。

  • 南琉球島って…。

  • 再読。

  • 勧善懲悪とは言わないが、著者自身による人生訓をストーリー化した小説である。各キャラクターへの著者自身の好悪がはっきりと打ち出されているので途中でオチもだいたいよめてしまうし、その意味で後半はもう少し短くてもよかった。
    著者が下流と考える生き方が、なぜ世間一般に選好されるのか、もう少し突っ込んでもいいのでは、と物足りなさも若干。

  • 最近、林真理子づいているのである。
    これも新聞に連載されていた。
    上流社会を目指す一家と、下流に近い一家の子供たちが結婚するということから、二家族の目線での話が交互に語られる。
    お互いの家のやりこめ合いで延々話が続くのかとうんざりしかけたころ、物語は急展開、うん?どうなる?
    とちょっと引き込まれる。

著者プロフィール

1954年山梨県生まれ。日本大学芸術学部を卒業後、コピーライターとして活躍する。1982年、エッセイ集『ルンルンを買っておうちに帰ろう』を刊行し、ベストセラーとなる。86年『最終便に間に合えば』『京都まで』で「直木賞」を受賞。95年『白蓮れんれん』で「柴田錬三郎賞」、98年『みんなの秘密』で「吉川英治文学賞」、13年『アスクレピオスの愛人』で「島清恋愛文学賞」を受賞する。18年『西郷どん!』がNHK大河ドラマ原作となり、同年「紫綬褒章」を受章する。その他著書に、『葡萄が目にしみる』『不機嫌な果実』『美女入門』『下流の宴』『野心のすすめ』『愉楽にて』『小説8050』『李王家の縁談』『奇跡』等がある。

林真理子の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×