海と月の迷路

著者 :
  • 毎日新聞社
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  • / ISBN・EAN: 9784620107967

作品紹介・あらすじ

海に浮かぶ「密室」殺人者はここにいる。昭和34年。満月の夜に不審な死を遂げた少女。若き警察官が追うものは殺人鬼の"幻影"か。わずかな土地に五千人がひしめく炭坑の島。少女の事故死を疑う若き警察官・荒巻の"許されざる捜査"は、しきたりや掟に支配された島に波紋を広げていく。警察の正義は守られるのか。次の満月-殺人者はふたたび動き出すのか。

感想・レビュー・書評

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  • 設定が軍艦島であるところが、魅力のところ。
    ミステリー作品として読むと、すぐに犯人はわかって
    しまうので、物足りなさを感じた。
    ただ、露骨には歴史資料として残っていないが、複雑な人間関係が容易に想像でき、そこがいいところかもしれない

  • 迫力があった!
    軍艦島と言う逃げ場のない場所で起きた事件に、これまた軍艦島ならではの人間関係が絡んで面白かった。
    テーマが婦女暴行と重苦しかったが、事故ではなく事件だと感じ追跡していく様にも引き付けられる。
    最後のスリル満点の追跡劇にはぐいぐい引き込まれた。

  • 大沢在昌さんといえばハードボイルド。
    それと双璧をなすのが、青っくさい青春系ミステリ。
    オバちゃんくらいの年になると、
    正直、後者のほうは読むときにお尻のあたりがムズ痒くなったりもする。

    このお話も、どっちかと言えば青クサ系なんだけど
    昭和半ばという年代と特異な土地柄が醸し出す、
    ちょっとおどろおどろしい雰囲気のおかげか
    ヘンにもぞもぞすることもなく落ち着いて読めたわ。
    ま、逆に言えば
    血みどろアクション系場面もお色気うっふんな場面も殆どなく
    全体的に地味~な印象は否めないけども
    『大沢在昌!』を期待せず、中堅ミステリ作家作品として読む分には充分ではないかと。
    ラストの曖昧さも「リアル感」で片付けようと思えばできんこともなっしん。

    それよか個人的に気になったのは
    やたらと土地をイニシャル表記にしてるとこかなぁ。
    フィクション感を表に出したかったのかなぁ。
    私がN県N市(と思われる土地)に住んでるからか、
    「なんの為?」ってずっと思いながら読んでしまったことであるよ。
    だってできれば堂々と自慢したいじゃない。
    大沢作品の舞台になったんだよ!
    犯人が判るの、方言も絡んでなんだよ!ってさ。(笑。

  • 軍艦島がモデルのお話
    N県H島などとせずに長崎県端島というふうに表記してくれた方がいいのにな、と思いながら読んでました。

    実際にあり今は誰も住んでいない場所、とても特殊な島でこんな人間模様がきっとあったんだろうなととても興味をもてながら読めた。

    久しぶりに読んだ大沢在昌の作品おもしろかった

  • これまでとは一線を画す大沢作品

    本作の舞台はあくまでN県H島となっているがそれは長崎市端島=軍艦島がモデルとなっていることは作者も後記で述べている通り。軍艦島というと無人状態の写真を目にすることが多いので、実際の暮らしぶりを想像することもなかったが本作ではその生活感がリアルに伝わってくる。そんなH島で起きた少女の不審な死は事故なのか事件なのか。島という限られた空間を密室に見立て住民5,000人が容疑者たり得るという恐怖、そして島の掟とも戦わなければならなくなっていく警察官の葛藤も上手く描かれている。大沢作品らしくテンポ良く物語に引き込まれる。

  • 大沢在昌ってよりも佐々木譲の警察物みたい。面白いけど。

  • 吉川英治文学賞受賞作。
    昭和30年代、孤島に赴任した新米警官が、ある少女の死に疑惑を抱く。

    軍艦島をモデルにした作品。
    当時の様子がわかって、面白かった!!
    (図書館)

  • 上巻の後半から一気に面白くなる。それまで我慢

  • 大沢在昌が本気で書いた小説は格式と品があってとにかくストーリーに引き込まれる

  • 硬派で読み応えのあるミステリー。
    長崎県の軍艦島がモデル。海底炭鉱を掘り出すために作られた人口の島は、極めて特殊な構造をしており、人口増加によって住宅を建て増し続け、島全体が立体迷路になっている。
    読み始めてすぐに、モデルとなった実在の軍艦島の写真をいくつかインターネットで見たことは、邪道かもしれないけれど、物語をイメージするのに大いに役立った。
    新米の派出所警察官の青臭い感じや、島で働く男たちの描写がうまい。

    物語の時代背景のせいか、作者の年齢のせいか、いい意味で古いにおいのする作品。
    ここで言う古いとは、重厚で堅実で正統派なと言う良い意味での古さ。最近の軽くサラサラ読める作品とは違った、深みが感じられる。

  • 面白かった。島という空間的に閉じた世界の中での犯罪を、まだ新米の警察官が追いかけ、解き明かすという設定。全体的にかなりずしりとした長編になるし、舞台設定の特殊さを読者に説明する難しさがあるわけだが、そのせいで前半少しもたる気がしないでもない。が、それでも後半から最後に畳み込む展開のうまさは、さすがハードボイルド作家として人気の高い作者の力量を認めたい。

    近年、廃墟ブームというものがあり、舞台となった軍艦島も今や人気の観光スポットらしい。いちおう記号化されてはいるが、舞台はその軍艦島。ただし、登場人物はもちろん、舞台背景として重要となる住民の様子なども、まったくのフィクションであると、あとがきで作者が断っている。

    であるならば、そういう舞台設定を、おそらくは丹念な取材を重ね、構想した作者のストーリーテラーとしての力量に改めて感心する。つまり、本作品はその舞台設定自体がまず屋台骨として見事であり、クライムストーリーとしては凡庸になりがちな連続殺人事件を文句なく読み応えのある良作にしていると思う。さらにそれを、警察学校を退官する警察官に昔話として語らせる、という、一皮つつんだ設定にしたのも、作品に深みを与える効果があると思う。やはりこの人の作品は面白い。

  • 軍艦島という閉鎖環境では島全体で家族の様な一面も垣間見えるが、そこは職場であり職能による上下関係が支配している側面もある。新しく赴任した警官がある事件をキッカケに、島に波紋を起こす様な微妙な話題に触れる。島に殺人者がいる…

    【感想】
    人間関係に悩まされそうな狭い環境で生きていくには自分はどの様な対応を取るだろう。味方が一人もいない状況では自分は耐えられそうにない。あまり綺麗な話ではないので、好き嫌いが分かれそう。

  • 面白かった!
    大沢在昌ってあんまり読んだことなかったけど
    文章がきっちりしてて
    昨今のなよなよ小説に飽きた身には
    嬉しい歯ごたえだった。
    なんか時代感とか生き生きしてて、
    映画化するかな⁇

  • 私も3,4年前、軍艦島観光に行きました。軍艦島の全盛期の雰囲気が読めるだけで楽しいのに、ストーリーもしっかり面白く楽しめた。

    軍艦島が舞台のサスペンス。炭坑企業が優位に立つ島で、新しく赴任してきた警察官が、死亡時件に不振を持ち島の過去を調べ、謎に迫っていく話。

    新宿鮫の著者かだいぶ昔に読んだな。作風の変化を感じ、著者も年を重ねたのだなあと思う。もう一度新宿鮫読んでみよう。

  • 大沢在昌が 緻密に 物語を つくりあげた感じがする。
    長崎県の軍艦島を舞台に、
    新米警官 荒巻が ある少女の死に 疑惑を抱く。

    小さな島に 5000人が住み、石炭を掘る。
    管理職、鉱員、組夫。
    その人間社会の階級制があるなかで、
    新米警官は いろんな矛盾を感じ、複雑な人間関係を
    かいま見ながら、自分のナカにある疑問に 素直に向き合う。
    組夫のリーダー 金太郎 こと小宮山。
    そして、足を引きづりながら歩く 長谷川。
    その二人の サポートで、真相が 明らかになる。

    その少女は、自分で誤って 海に落ちたのか
    自殺なのか と思っていたら、
    同じような事件が 8年前にもあったことがわかる。
    共通していたのが 髪の毛と満月。

    その駐在所にいる岩本は、会社にまかせて、
    なるべく摩擦を起こさないようにしていた。
    長谷川の正体がわかり、東京の過去の事件とつながっていく。

    一体 その残酷な仕打ちをするのは、
    誰なのか?
    推理は、推理を呼びながら、犯人にたどり着く。
    ストーリー性があり面白い。

  • 20151125。採炭の島、長崎県の軍艦島を舞台にした殺人事件を題材にしたストーリー。新米巡査が手探りながら事件を究明して行く。島には色んな役割の人びとがいる。不公平感は否めない。公平に職務を全うしようとすると反発がある。ましてや同僚からも。島の平和を願い犯人を捕まえようと一部反発を受けながらも周りを巻き込み職務を全うして行く様には島民を必ず守るという信念を感じた。ラストにタヌキを追い詰めて行くところはかなり緊迫感があった。溺死ではなく捕まえて欲しかった。軍艦島ツアーに行ってみたいと思った。

  • 長崎の軍艦島が舞台。今軍艦島は、観光地になってるけど、昔は外界から閉ざされた炭坑の町だった。そこで起きた悲しいお話。誰が犯人なのか最後まで気になってしかたなかった。

  • 007/スカイフォールで風景を参考にしたり世界文化遺産になった長崎県の軍艦島をモデルにしたミステリーを大沢在昌さんが執筆されていたので読んでみました。人口5000人の閉ざされた島を舞台での殺人事件。これが7年前に起こった殺人事件、また戦時下での殺人事件に結びついていく。事件は全ては満月の夜に起き、戦利品として被害者の髪が切られていくが、それを新米の巡査が捜査していく物語。大沢さんは「新宿鮫」しか読んだことが無かったがこれは長編にも関わらず重苦しくもなくスラスラ読める

  • 大沢在昌が本気を出すとやっぱり面白い。軍艦島に行ってみたくなりました

  • 軍艦島(端島)という特殊環境を十二分に活かした傑作。図書館から娘経由で借り、京都・枚方への出張で一気に読み終える。何か、自分に投影してどうこう、というような内容ではなく、ただストーリー展開を楽しんだ。尾形忍が唯一の救い、その救いが救いで有り続けたという点が、よくもあり、また男らしい単純さでもある。

  • 世界遺産候補として話題の「軍艦島」(長崎市)が舞台。無人の廃墟と化したこの島には、炭鉱として栄えた時代があった。そこで起きた、事故…に見せかけた殺人を、若い警察官が追うミステリー。密室同然の島…犯人は誰だ?

    軍艦島を見に行ったことはないけれども、実際にある場所なので、リアル感がUP。若い警察官の危なっかしさにヒヤヒヤしつつ、その真っ直ぐな正義感がまぶしかった。
    閉鎖された環境のなかに入ろうとすれば圧力がかかる。そこで作られてきた掟に抗おうとするなら、なおさら。それは、離島だけでなく、どの集団でも起こりうることだなぁ、と、改めての気付きにもなった。

  • 事故か自炭鉱の島、軍艦島を舞台に、戦後起こった少女の死亡事故。
    殺か、殺人事件か。
    赴任したばかりの若い警察官が、閉ざされた島で、職務のために奮闘する。

    面白かったです。
    軍艦島に興味を持って、手に取った本、初読みの作家さんでした。
    軍艦島が栄えていた頃の描写が鮮明で、とても興味深く読みました。フィクションかと思うほどリアルで、あとがきを読まなかったら、そう信じてしまっていたかも。
    事件が解決に向かう様子も、とても面白く、ページをめくる手が止まりませんでした。

    小さな島に、5000人以上が暮らしていたという軍艦島、ますます興味がわいてきました。

  • 単行の島での連続少女殺人事件を追うミステリー。

    ミステリーとしては、伏線もあり上出来だと思います。
    展開もテンポもよく、一気読みしてしまいました。
    特に謎解きには破綻はないと思いますが、月単位でなく年単位で犯罪の空白期間を置く犯人像ととラストの年を開けずに犯罪を繰り返そうとする犯人像が一致しませんでした。

  • 閉ざされた空間での事故。それを殺人と思い追いかける若い警察官。彼の捜査を阻むのは、閉ざされた空間ならでは、戦後という時代ならではの秘匿性。
    面白い。面白いのだ。読み始めて一気に読み終えてしまう面白さ、読みやすさ。、安定してこんなに面白い作品を世に出せる大沢在昌という作家はやはりすごいと思うのだ。
    だけど、心は騒がないのだ。『新宿鮫 毒猿』『新宿鮫 無間人形』『新宿鮫 氷舞』『心では重すぎる』といった作品で感じた心がざわつく感じはなかった。
    ただ、最近はチャイニーズマフィアなど大陸に目をやっていた作者にしては異色の普通の(マフィアとかヤクザとかが出てこないという意味で、ね)警察ものであった。

  • 「不夜城」以来の大沢在昌作品。作風が変わったと思ったけど、面白かった。

  • 軍艦島ファン垂涎 こんなに島内の描写がしっかりされているとは思わなかった 感激‼

  •  戦後史の一つとして。

  • 軍艦島を題材にした小説は、はじめてだ。大沢在昌っぽくない感じだ。内容は引き込まれていき、一気に読めた。犯人は途中で分かるし、最後も工夫が欲しい。

  • 軍艦島を舞台にしたミステリー。
    ただ、自分には作者名を伏せて読んだら大沢作品とは思はなかっただろうなという出来でした。
    うん、面白かったんですけどね。

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著者プロフィール

1956年愛知県名古屋市生まれ。慶応義塾大学中退。1979年に小説推理新人賞を「感傷の街角」で受賞しデビュー。1986年「深夜曲馬団」で日本冒険小説協会大賞最優秀短編賞、1991年『新宿鮫』で吉川英治文学新人賞と日本推理作家協会賞長編部門受賞。1994年には『無間人形 新宿鮫IV』直木賞を受賞した。2001年『心では重すぎる』で日本冒険小説協会大賞、2002年『闇先案内人』で日本冒険小説協会大賞を連続受賞。2004年『パンドラ・アイランド』で柴田錬三郎賞受賞。2010年には日本ミステリー文学大賞受賞。2014年『海と月の迷路』で吉川英治文学賞を受賞、2022年には紫綬褒章を受章した。


「2023年 『悪魔には悪魔を』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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