生きる者の記録 佐藤健

著者 :
  • 毎日新聞出版
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本棚登録 : 37
感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (173ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620316253

作品紹介・あらすじ

定年を目前に末期がんを宣告された新聞記者が、最期の一カ月、病床で自らの生を刻々と記した。その日々を伝え毎日新聞で大反響を呼んだ、魂のルポルタージュ。

感想・レビュー・書評

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  • http://www.my-cancer.net/cafe/book/bs_006.html

    先週紹介した「がんと明け暮れ 記者が綴る10年の記録」の著者 村串記者自身が闘病記を書くきっかけになったという闘病記。佐藤氏は33歳で取材のために剃髪し、雲水になったこともある名物記者だが、定年直前の2001年に肝細胞がんと診断される。長年の飲酒で肝機能が低下しているために外科手術は出来ず「肝動脈塞栓術」による治療が始まるが、翌年には更に食道がんが発見され、放射線治療が加わる。

    定年を延長した記者は、東大病院入院棟14階の「ターミナルケア病棟」から、自分の病状を読者に報告し続ける。この本が異色であるのは「がんに効く」として知られ、湯治客の7、8割が末期がん患者という秋田県の玉川温泉を訪ね、そのルポに多くのページを割いていることだろう。この本の表紙には、ゴザを抱え、岩盤浴に向かう佐藤記者の写真が使われている。各地のがん患者が集まり、「死」が食後の話題になる岩盤浴の地で、佐藤氏は宗教の原風景を見る。



    うーん、これは、かなり、厳しい・・・。すみません。皆さんこんにちは、店員の山田です。今回紹介する「生きる者の記録」、僕も今回はじめて読んでみたのですが、その厳しい内容に衝撃を受けました。
    還暦を目前にして肝臓がんを患った筆者、佐藤健氏は新聞記者です。仏教から野球のイチロー選手、果てはゴリラの生態まで、様々な題材を追ってきた取材記者の最後として、佐藤さんは自分自身を題材とし、その闘病の記録を新聞に連載します。しかし、病状はあまりにも過酷でした。肝臓がんからやや遅れて食道がんも発見され(転移ではなく別々のがん)、しかも遠隔転移もしていたのです。
    読み始めて気がついたのですが、僕は25年ほど前に佐藤さんの講演を聞いたことがあります。仏教を取材するため自ら出家し、僧侶となり、雲水となった顛末を、面白おかしく話してくださいました。およそ新聞記者らしくない、大らかで自然体の雰囲気。こんな記者もいるのかと非常に感銘を受けたことを覚えています。その佐藤さんが、こんな闘病記を残していたとは。今まで知らなかった自分が情けない思いです。
    話を戻しましょう。佐藤さんは自分の病状や治療の様子を連載記事にしますが、やがて右手が動かなくなり、同僚の記者に口述筆記を頼みます。さらに、自分が口述さえ出来なくなった時の代筆も。そのため、ほかの闘病記にはまずありえない、本人が意識不明となったあとの描写、さらに臨終の描写までも、本書には含まれています。これは読んでいて辛い。厳しい。でも読んでしまいました。
    本書には連載時に読者から寄せられた手紙や佐藤さんの写真も数多く収録されており、連載時の反響の大きさや、佐藤さんの人となりを感じることができます。また、前半に湯治で有名な玉川温泉についての詳細な記述、体験記があります。僕も玉川温泉のことはかねてから知りたいと思っていたので、大変に参考になりました。
    それと最後にもう一つ。佐藤さんは酒豪であったそうで、本書の記述で飲酒により肝臓がんになったと断定的に書かれています。しかし、最新の知見では、飲酒は肝臓がんの原因とならないとされています。飲酒により肝硬変になり、さらに肝臓がんになる、という道筋は間違っていないのですが、実際には飲酒からがんに進むには非常に時間がかかり、毎日浴びるほど飲んだとしても、肝臓がんになる前に寿命が来てしまうのだそうです。
    現在では、肝臓がんの最大の原因はウイルス(B型肝炎、C型肝炎)であることが知られています。その次に肝臓がんの原因となるのは、意外なことに糖尿病です。
    がんについての正しい知識を多くの人に知っていただきたいのでこのことを書きましたが、もちろん飲酒を勧めるわけではありません。佐藤さんは食道がんも患いましたが、こちらは飲酒が大きく関係しているはずです。飲酒は咽頭がんや食道がんの原因となるのです。また、肝臓がんを患った佐藤さんは、飲酒により肝機能が低下していたため、手術や抗癌剤といった治療をすることができませんでした。やはり飲酒には大きな代償が伴うようです。

  • マンダラ探検を書いた佐藤さんの最後の本。

  • 4620316253 173p 2003・3・15

  • 仕事と自分に最後まで正直に向かい合いながら生きた人。
    死と向かい合いながらこれだけの記録を残せるなんて。

  • 学生時代購入。かっこいい記者さん。

  • 毎日新聞を読んでいたとき、ある日ふと連載が始まった、ある記者のがん闘病記。これから死を前にして、自分がどう生きているかが書かれた本。著者は残念ながら亡くなってしまったが、壮絶な闘病を残された記者がまとめた。

  • 俺の人生の師匠の遺稿。ガンに冒された自分をテーマにルポを綴るというとんでもないことを最後にやっていってくれました。最後の最後まで新聞記者として人生を見つめつづけた凄い人間の記録です。また、筆者が取材の課程で本物の禅僧になってしまったという脅威の記事も収録されています。これは必読!なお、Amazonのレビューで適当なこと言ってる阿呆がいますが彼は恐らくこの本を読んでいないので無視しといてください。

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著者プロフィール

俳優。1989年埼玉県生まれ。ドラマ「天皇の料理番」「恋はつづくよどこまでも」「義母と娘のブルース」「100万回 言えばよかった」、大河ドラマ「龍馬伝」、連続テレビ小説「半分、青い。」や、映画「るろうに剣心」シリーズ、「8年越しの花嫁 奇跡の実話」「護られなかった者たちへ」、Netflix「FirstLove 初恋」など多数の作品に出演。東北復興支援を目的にしたプロジェクトとして、神木隆之介との共著『みやぎから、』や、プロデュースを手がけた仙台謎解きウォーク「街に願いを」がある。

「2023年 『るろうにほん 熊本へ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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