人間機械論 第2版 新装版: 人間の人間的な利用

  • みすず書房
3.53
  • (4)
  • (2)
  • (8)
  • (0)
  • (1)
本棚登録 : 76
感想 : 8
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622073185

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 結構お勧めの本。

    本書は、ギッブスの見解が近代生活へ与えた衝撃を、それが現実の科学にもたらした具体的な変化と、世界全般に対するわれわれの態度に間接的にもたらした変化との両面にわたって論ずるものである。したがって本書の諸章は、われわれが実際にしていることと、われわれが直面している信施愛に対してわれわれがいかに対処すべきであるかということとの、技術的な議論と哲学的な議論とを含む。

    本書の多くの部分は、固体の内部間および固体相互間のコミュニケーションの限界を扱う。人間は自己の感覚器官を通じて知覚する環境の中にひたされている。人間が受け取る情報は、脳と神経系を通じてコーディネート(整合)され、貯蔵や照合や選択からなる適当な過程を経てのち、行動器官―ふつうは筋肉―を通じて外へでていく。これらの行動器官は外界に作用を及ぼし、さらにまた自己運動感覚を持つ末端器官のような感受器を通じて中枢神経系へ反作用を及ぼす。そして、これらの自己運動感覚が受け取った情報が、当人のすでに貯蓄された貯蔵情報と組み合わされて、将来の行動を決定する。

    p95?
    全世界を見て、全世界に命令を下すことは、いたるところに存在するのとほとんど同じことである ―技術への問いから

  • 図書館で借りた。
    ウィーナー2冊目。原題は「The Human use of human beings - Cybernetics and Society」
    1冊目の「サイバネティックス」は数式がたくさん出てくる専門性が高い本だったのに対し、この本は一般向けで数式は全く出てこない。
    昨今のAIブームに繋がる、広いバックグラウンドを捉える本なのだろうと思う。
    …とは言え、難しい。ただでさえサイバネティックスが「計算機」「物理学」「数学」「生物学」と広いのに加え、「歴史」「法律」さらには「宗教」(本文中に何度か「マニ教的悪魔が…」とあったのが印象的)と、様々な側面から論じられる。私は教養が試されているように感じた。

  • サイバネティックスとは心理学や神経系についての考察を含む通信と制御の理論として、熱力学第二の法則によりエントロピーが増大して、秩序が破壊されて混沌となるのを、人間や機械が秩序を取り戻し進歩に導くための学問であるとして、本書を「これからの通報(信の間違い非ず)および通信機関が将来発達するにつれて、人から機械へ、機械から人へ、および機械と機械との通報がますます大きな役割を演ずるに違いないことを示す」と昨今盛り上がっているIoTを示唆する1950年に発表されている驚きの先見性に満ちているとともに、とても一般向けに書いたとは信じ難い難解な本でした。

  • 東大京大教授が薦めるリスト100選抜

    No.78

  • 久方ぶりに手に取ってみました。
    改めて見返しましたが邦題はどうかと思う、原題The Human Use Of Human Beings、題名からして明らかにヨーロッパに端を発する科学的志向の産物だし、実際の内容もそう。
    相当に際どい議論を展開しているし、それ故に影響力の強い主張かと思われる。
    フィードバック、まさに企業というメカニズムの中での重要な要素です。そう考えるとやっぱり歯車なんですな、当方のような凡人は。円滑に動くことのみに価値を見出されているのかと。

  •  宗教や倫理といった物差しを抜きにして、純粋に科学的に人間を言う生物を見ろ、という内容。自然や神様には、人間に対する悪意など微塵もない。あるとすればそれは、人の中にある「弱さ」に由来するもの。それが、目を曇らせて道を誤らせる。……ただ、プロメテウスの神話にあるとおり、神様の英知を盗み撮らなければ、人の繁栄はなしえない。だが、その大権を犯す行いは、それなりの罰によって報いられてしまう。よくよく覚悟しないといけない。
     人の中にある機械的な部分、機械の中にある人の部分。著者は、機械を単あるモノとしてみているのではなく、生物に近い意思あるものと見ているのだろうか。

  • 攻殻機動隊「イノセンス」で参照。私が持っている版(ISBN4-622-01609-5)は既に古書扱いでした。イノセンスでは、少佐がこれまでと違う別の義体(犯罪を冒したロボット)で登場する所に作者の意図(やりたかったこと)が込められているかと。

全8件中 1 - 8件を表示

著者プロフィール

1894-1964。ポーランドに生れ、アメリカに渡ったユダヤ人の言語学者レオ・ウィーナーの長子として生れた。天才肌の父のもとで知能早熟児として出発した彼は、9歳でハイスクールに特別入学し14歳でハーヴァード大学に入学、18歳で数理論理学の論文で学位をとる。まもなくイギリスに渡りケンブリッジ大学でバートランド・ラッセルから数理哲学を学び、ついでゲッチンゲン大学にも学び、帰米して1919年マサチューセッツ工科大学講師、34年以後同大学の数学教授。30年頃から神経生理学者と共同研究に従事し、計算機械も生物における神経系も同じ構造をもつことを認め、その数学的理論としてのサイバネティックスを創始する。1948年『サイバネティックス』(邦訳、岩波書店、1958)を著わして生物学、工学、社会学等広汎な分野に関連し、著者の視野の広さと鋭さを示す。著書はほかに『サイバネティックスはいかにして生まれたか』(1956)『科学と神』(1965)『人間機械論』(第2版、1979)『神童から俗人へ』(1983)『発明』(1994、以上みすず書房)などがある。

「2020年 『発明 【新装版】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ノーバート・ウィーナーの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×