- Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
- / ISBN・EAN: 9784622075240
作品紹介・あらすじ
15歳の少年が経験したアウシュヴィッツを静かに崇高に綴った自伝的小説。死の淵から"人間性""信仰""愛"とは何かを問いかける永遠の古典を改訳でおくる。
感想・レビュー・書評
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ホロコースト関連では、今までで一番ショッキングな本だった。
極限状態が続くにつれ、次第に神を信じられなくなり、最愛の父さえ捨ててしまう。
著者が特別冷酷な訳ではない。全ては戦争のせい。
私達が読めるのは、何らかの幸運により生き残った人の自叙伝であり、大部分の人は死んでいった。
本を読んでいると自分も前者になるかのように思うが、実際は後者なのだろう。
平和が如何に脆く、尊いものであるかと考えさせられる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
アウシュビッツ体験記のなかでも必読の1冊。
ということで、読んでみた。やはり、重いです。
アウシュビッツでの生活の描写は、他の体験記とも共通するところが多いのだが、この本の特徴は、敬虔だった著者が神の存在を信じなくなったということにある。そして、信仰をなくしたにもかかわらず、著者はなんとか生き延びるわけだが、そこには父の存在がある。なんとか、父を守ろうと努力を続けるのだが、そうした中で、何度も父がいなければ楽になる、自由になれるという思いが湧き上がってくる、そのあたりなんともいたましい。そして、父親の息子への愛も胸が詰まる感じがする。
もう少し、事実的な発見としては、
・著者はハンガリーのユダヤ人で戦争も終わりかけている1944年にアフビッツに送られるのだが、その時点で、アウシュビッツやユダヤ人の最終解決について、ほとんど知識がなかったということ
・著者によるとガス殺されるまえの子どもが直接焼却されていたというニュアンスの記述があること
・ソ連軍の前線が近づいてくるにあたって、収容者は前線から離れるために、集団で退去し、より前線から遠い収容所に「死の行進」をさせられるのだが、その過酷さが生々しく記載されている(収容所がソ連から解放されたとしても、そこに収容されていた人がそのまま解放されるわけではないというのが、あらためて理解できた) -
★4.5
少年だった著者が過ごした強制収容所での生活は、あまりに残酷であまりに無慈悲。そして、彼の心が蝕まれていくのが本当に悲しい。が、そんな彼を責められるはずはなく、そうならざるを得なかった環境に憤りを覚えるばかり。タイトル「夜」が示す通り、いつ明けるとも知れない闇が本当に恐ろしく、解放後も彼の側には常に夜があったと思える。ちなみに、表紙はアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所のガス室の壁画。どんな思いでダビデの星を描いたのか?縦に走る線は苦しさに悶えた人たちの爪痕なのか?と考えるとただただ胸が痛い。 -
アウシュビッツの本をもう一つ読もうとこの名著を。父を、信仰を棄てる程の凄惨な様に没頭し過ぎて電車を乗り過ごす。全ては狼少年を誰も信じないうちに、ある日突然思いもよらず、始まった。悲劇はそういうものなのではないか。
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覚悟して開いだが、やはり当然打ちのめされた。
楽観性バイアスへの後悔、信仰への枯渇と絶望、人間感情の放棄や虚無感…戦争は終わっても、生き延びた事実や当時宿った感情に、ずっとさいなまれ、業火に焼かれるおもいだろうと思う。 -
子供が授業で読み、薦めてきたので私も読んだ。アウシュビッツが題材の、有名な本ですね。人間が人間をこんなふうに扱ったという事実に言葉を失う。本当に苦しくなる本です。
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読んだのは日本語訳だけどこんなん書いてみたいと思うほど文章表現が格好よすぎた。戦争を伝える資料的価値の他に文学作品としての価値も高いと思っている。
アウシュビッツに着いて最初に目にしたものは、子供達を焼く炎だった。
積み重ねてきた信仰すら一瞬で霧散するほどの理不尽な仕打ち。命の選別。恐怖。
昨日まで普通の生活を送っていたユダヤ人達が強制連行され、全てが変わってしまう。収容所から逃げ延びた少年の警告を誰も本気にしなかったらしい。ゲットーでの暮らしが続くと皆信じていたかった。しかしそんな暮らしは唐突で理不尽に奪われる。
少量の食べ物、長時間の労働。生きる希望が尽きても休むことは許されない。止まれば銃で撃たれて死ぬ。本来ならこんな目に合わずに済んだはずの人々が疲弊して死んだり飢えてパンを奪い合う。
世界との深い断絶の溝に堕とされた経験のある人が持つ絶望の哲学。そんな人にしか綴れない言葉がここにあると感じる。前書きからは著者が外部からの無理解や誤解をどんな思いでやり過ごしてきたか垣間見える。
外国のヒドイ話とか戦争の話として読むだけじゃなく、日本社会で理不尽な目にあってる人もあわせてる人も 今こそこれを読もうぜ! -
4.33/224
内容(「BOOK」データベースより)
「15歳の少年が経験したアウシュヴィッツを静かに崇高に綴った自伝的小説。死の淵から“人間性”“信仰”“愛”とは何かを問いかける永遠の古典を改訳でおくる。」
『1944年、トランシルヴァニアの小さな町にドイツ軍が姿をあらわす。15歳の少年とその家族はゲットーへ移送され、さらにアウシュヴィッツへ……、そして強制収容所での選別、幼児の焼却、公開処刑、極寒の死の行進。
「飢え、渇き、恐怖、輸送、選別、火、煙突など。それらの単語はいまはなにごとかを意味している。しかしあの当時、それらの単語が意味していたのは別のことがらであった」
《人間》《神》《愛》といったすべてが死んだ極限状態を格調高い筆致で淡々と描くこのドキュメンタリー小説は、われわれを決して忘れてはならない記憶へと引きもどす。
「証人であろうと願う生き残りにとって、問題はいまも単純なままである。すなわち彼の義務は、死者たちのためにも、同じく生者たちのためにも、そしてとりわけ未来の諸世代のためにも陳述することなのである」
今なおやまぬ民族対立の時代にあって、ホロコーストという《夜》から立ち上げるべきものを問いかけつづけるロングセラーを改訳、さらに著者による新たな序文を付してここにお届けする。』
(「みすず書房」サイトより)
著者:エリ・ヴィーゼル(Elie Wiesel)
訳者:村上 光彦
出版社 : みすず書房
単行本 : 232ページ
メモ:
・オプラ ブッククラブ『Oprah's Book Club』 -
著者は15歳のときに父、母、姉、妹とともに強制収容所に送られ、一家全員が虐殺される中、奇跡的に生き延びる。
その体験を綴った自伝的作品。