ファルマゲドン――背信の医薬

  • みすず書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622079071

作品紹介・あらすじ

◆『抗うつ薬の功罪』の著者が、薬に依存する医療の背景にある医薬業界の巨大な錯誤を明らかにする。とくに臨床試験データの不適切な操作や改ざん、医学論文のゴーストライティングなどの実態を、本書は徹底して暴いている。科学的な医薬への信頼を逆手にとったトリックが特許薬とその需要をつくりだし、医療・医薬のあらゆる側面が人間よりもその経済に奉仕させられる──こうしたディストピア的様相からどうすれば脱却できるのか。◆患者のための医療を取り戻すべく、ヒーリーがまさに抜本的と言える対応策を提言する。目指すのは、医薬に関わる権限と知識をできるだけ民主化・透明化し、ボトムアップでディストピアを解体するという構想である。

感想・レビュー・書評

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  • ファーマ(医療)のアルマゲドン:ケアの能力を排除しつつある変化。その背景に定量化へのシフトがある。  

  • 製薬業界による悪魔的な手法、特許の濫用。
    その手法はタバコ業界の如く、科学的手法・マーケティング理論・ロビー活動を悪用し、医師・患者を共に縛って操る。
    腑に落ちるところが多いが、袈裟まで憎んでいないか、各論の正統性については見守っていきたい。
    併読に「フラジャイル 病理医岸京一郎の所見」を強くおすすめする。
    特許が有効な薬が治すとされる疾患を新しい病として作り出す。特許期限切れの薬は、たとえそれによって治る病気があっても処方しないようにガイドラインで巧妙に定められている。

  • インプテンツ/勃起不全 不感症/女性の性的欲望傷害 子どもの騒々しさ/ ADHD
    パニック障害、骨減少症、むずむず脚症候群、線維筋痛症
    病気づくり disease mongering

    マーケターは医師たちを野心家、懐疑的な実験者、規則に縛られたもの、声なき大衆の4つに分別

    エントレープ(デュロキセチン)腹圧性尿失禁治療薬
    リリー社は1990年代に抗鬱薬として開発するのをあきらめた。副作用のひとつに尿の貯留誘発があったので、ヨーロッパで尿失禁治療薬として上市。プロザックの特許が2001年に切れ、その後続薬とされたzァルトリアが心臓障害をもたらすように見えた時、リリー社はデュロキセチンをサインバルタという名前で再び抗うつ薬として再登場させる道を選んだ。また医師がさまざまな痛みを訴える患者がよく訪れるのだが、どう治療したらよいかわからないと市場調査で答えていたから、うつ症状の軽減に加えて、疼痛緩和薬としても重点的に売り込まれた

    医学分野ゴーストライティング
     アメリカと英国で50社

    ハミルトンうつ病尺度 マックスハミルトンが開発したことになっているが、ガイギーファーマスーティカル社によって、イミプラミンの臨床試験で使うために策定された

    測定づくり measurement mongering

    健康で60歳の女性だった彼女は骨粗鬆症であると告げられた。だがそれは彼女の年齢にとってはまったく正常なことで、骨折のリスクなどない状態だった。しかし病気だと思い込まされ、ア◯やフ◯を処方されたジョセフィーンは、転倒して腰の骨を折ることを恐れて芝刈りができなくなった。これらの薬を飲むよりも芝を刈ったほうがよほど骨折の危険防止に役立ったのだが。

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著者プロフィール

医学博士、精神科認定医。精神医学・精神薬理学史家。カーディフ大学、北ウェールズ心理学的医学部門、教授。英国精神薬理学会(British Association for Psychopharmacology)の元事務局長。多数の著書がある。公式ウェブサイト(http://davidhealy.org)に自身の活動に関する多くの情報をアーカイヴしている。2012年には、薬のリスクに関する情報を草の根的に募り、集積・公開するプロジェクトRxISK.org(https://www.rxisk.org)を立ち上げた。

「2018年 『〈電気ショック〉の時代』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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