習慣と脳の科学――どうしても変えられないのはどうしてか

  • みすず書房
3.68
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本棚登録 : 471
感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622095880

作品紹介・あらすじ

「習慣」の概念は、実は意外と漠然としている。そんな習慣のありようを、脳画像研究の最先端を走る研究者が明快に解説。本書の中心テーマは「行動変容のむずかしさ」。巷にあふれる「習慣を変える簡単なコツ」程度では、残念ながら習慣は変えられない、と著者は断言する。それでもそのむずかしさの先に、望みのある手段は見つかるのだろうか? 学術研究における「再現性の危機」を越えた、新しい行動変容の科学へのガイド。

感想・レビュー・書評

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  • 本のタイトルに惹かれて図書館で予約。順番待ちして受け取った時、ハードカバーだったことにまず驚いた。

    一般読者を惹きつけるタイトルとは裏腹に、内容は徹頭徹尾アカデミック。論文を読んだ感覚。

    自己啓発本には習慣が9割、10割などと謳われるタイトルが多いが、そもそも習慣を変えること(特に長く続けた習慣)は、事故や病気で脳の一部が損傷でもしない限り不可能だとさえ感じた。

    ただ、人の行動は環境に依存することは間違いないので、「自制心」に頼るのではなく、「自制心が必要とされる環境を回避する」ことで「悪い習慣」に導かれるきっかけを減らす方が、(やめたい習慣を変える)成功率は高いようだ。

    同時進行で読んでいた『小さなダイエットの習慣』の内容を後押しする学術的な本を読めて良かった。

    税抜3600円。いわゆる自己啓発本が1200円程度なので、学術本ならではのお値段。日頃ビジネス書に慣れ親しんだ一般読者としては読書体力のいる本に間違いない。

  • 感想
    なぜ自分はダメなのか。責める必要はない。脳がそのようにできているから。習慣を変化させた人が特別。それを理解した上で人間を眺める。

  •  この本は、習慣と脳の関係性を、科学的エビデンスを下に整理し、習慣がどのようにして形成されるか、そして習慣を変える事が如何に難しいかを、これでもかも言うぐらい説明してくれる。
     だが、良い習慣(例えば早寝早起き)などを身に付けたい、という方が読んだ場合、肩透かしをくらうかもしれない。本書の主は「悪い習慣が何故止められないのか」を軸として、感覚や精神論には一切触れず、科学事実だけを述べていく。読者はタイトルなどをキッカケとして本選びをするが、タイトルが幅広い問いかけを促しているので、間口は広いが、結果として読者を選ぶ内容になっている。
     だからこそ、読解というよりむしろ、「誤読」とも言うべき、内容を取り込み、変換解釈する読書法が必要な本となっている。何度も言うが、本書は科学的エビデンスを述べ、最前線の状況を教えてくれる。過去のセンセーショナルな習慣に関する知識をアップデートしてくれる。ひたすら俯瞰された視点であり、個人に寄り添うための、心地よいフレーズなどは存在しない。「明日からはこうしなさい」という押し付けもない。あるのは「習慣がどのように形成され、止められなくなるか」であり、習慣が形成される脳の仕組みのみだ。
     だが、習慣というものが、精神論や自制心などに結び付けられ論じられがちだが、それは脳の仕組みとは関係のないことであり、一歩引いた視点での科学本として、本書はとても骨太である。
     
     悪い習慣を止めたい、良い習慣を身に付けたい、子どもや部下に良い習慣を身に付けさせたい、といった場合に、主観的精神論に陥る事なく俯瞰できるきっかけが欲しい方にオススメの1冊である。

  • 【配架場所、貸出状況はこちらから確認できます】
    https://libipu.iwate-pu.ac.jp/opac/volume/570493

  • 良くない習慣がなかなかやめられないのは、意志が弱いと言うより、むしろ自制心が強いと思われる人が、衝動を抑えるのが上手いのでは無く、そもそも自制心を働かせる必要性を感じない、というのは目から鱗でした。
    読んで良かった。

  • 系・院推薦図書 3系(情報・知能工学系)
    【配架場所】 図・3F開架 
    【請求記号】 491.371||PO
    【OPACへのリンク】
    https://opac.lib.tut.ac.jp/opac/volume/468208

  • 「習慣」とは何か?どうして私たちはそれを変えられないのか?と科学的に説明しようとする(しきれないのが脳科学の難しさだ)大著。

    行動に報酬を与えるドーパミンという一般の理解を裏切るが、実はドーパミンは動機づけの役割の方が中心らしい。いや、役割が多すぎて正確にはわかっていない、というのが実情だそうなのだけど。
    「習慣」とはつまり「選択肢を狭めようとする脳の作用」と言って差し支えないかな。選択肢が無限にあっても動けなくなるので、脳はある程度のすることを勝手に決めてしまう。それが意識しなければ実行されるような「習慣」になるわけだな。
    それを意志の力でやめようとしても無理なので、環境から変えたり他の習慣で上書きするしかない…という、まぁそりゃあそうですよねみたいな…。

    本筋とは関係ないのだけど、科学世界の持つ不完全さをポルドラック氏が誠実に語ってくれる部分も好印象。みんな思ってたけど、それをここまでの人が言ってくれるのはマジで凄いな…。
    あとカール・ダイセロス教授が言っていた「光遺伝子学」が至る所で使われていて結構燃えた。fMRIのような主流技術になりそうで期待ですね。

  • 習慣化は条件反射からやめたいものまで多種多様。これを脳神経科学だけで説明できれば良いがそれも難儀。まだまだ実像には遠いのかもしれません。

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著者プロフィール

(Russell A. Poldrack)
スタンフォード大学心理学部教授。イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校にてPh.D.を取得。2014年より現職。人間の脳が、意思決定や実行機能調節、学習や記憶をどのように行っているのかを理解することを目標としている。計算神経科学に基づいたツールの開発や、よりよいデータの解釈に寄与するリソースの提供を通して、研究実践の改革に取り組んでいる。著書にThe New Mind Readers What Neuroimaging Can and Cannot Reveal about Our Thoughts(Princeton University Press, 2018)がある。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。

「2023年 『習慣と脳の科学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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