平和政策 (有斐閣ブックス 100)

制作 : 大芝 亮  藤原 帰一  山田 哲也 
  • 有斐閣
3.59
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本棚登録 : 91
感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (370ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784641183438

作品紹介・あらすじ

国際紛争はなぜ起こるのか。地域紛争や内戦など、開発途上地域を主な戦場とする「現代の戦争」に対して、どのような対応が可能なのか。達成されるべき政策目標として平和をとらえ、安全保障のみならず、政府の機能回復から社会経済の復興支援にいたるまでを含めた「平和構築」という政策領域を体系的に議論する、初めてのテキスト。国際政治の基礎理論、現代国際紛争の実態、平和構築の実際について、第一級の執筆陣が的確に分析・考察する。紛争事例などについてのコラムや、基本用語についての解説も充実し、現代の戦争や国際関係について初めて学ぶに最適。

感想・レビュー・書評

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  • 平和政策というタイトルは確かに相応しくないかも知れないが、平和というものをいろんな観点から考える基礎になるものを提供してくれる。理論と実際について、17章だてで、それぞれ専門家ぎ書いている。国際紛争、現代の紛争、国際法と国際組織、地域機構、国際経済組織、植民地支配、兵器の規制、核軍拡及び核軍縮、移民と難民、テロ、軍事介入、政治・法制度改革、紛争後選挙と選挙支援、国際犯罪、開発協力、ジェンダー、NGOといったテーマ。

  • 抑止戦略はパワーバランスと似ているが、違う。パワーバランスは相手が戦争に訴えた場合は戦争をすればよいだけだが、抑止戦略では戦争に訴えること自体は目的にされていない。

    テロリストは特定の国家にも依存しない傾向がいっそう進む。
    侵略対処は、ある主権国家の行動が他の主権国家の安全保障に対する脅威となった場合の国際的な対応の例であった。
    テロの脅威と並んでアメリカが神経をもっとも尖らせている脅威が大量破壊兵器の拡散問題。

  • ▼大学院入試に向け通読(2回目)。
    ▼ポスト・冷戦期の紛争の特徴といえば、それが主権国家同士の争いとしてよりも、ある国・地域の内戦として戦われることが多くなことがあげられるだろうか。また9・11後の「新しい戦争」もまた、標的がテロ組織(そしてその支援国家)であるという点が、特徴であろう。
    ▼かつての勢力均衡観に基づく抑止論は、あくまで主権国家同士の力の「安定」を目指していた(それは「安定」あって、即ち「平和」を意味するもではない)。しかし、注目すべき行為者が国家以外にある以上、防衛力の増強がイコール安全保障とはならなくなった(だからといって、それを無用・不要と主張するものでもない)。
    ▼「平和」とはそこに「ある」現実ではなく、常に求め続けなければ得られない理想である。現代の世界において平和政策を模索する努力こそ、私たちが生き延びていく術(すべ)となろう。

  • 近年は過激で尚且つドグマティックであり、シンプルな内容の本が多い中で複雑に入り組んだ世界情勢等を前提に極めて現実的で実現の可能性のある指針を提示していた。有斐閣だから当然ともいえるけど・・・

  • 何が平和政策なのだろうか。単なる国際政治学の教科書。それはいいのだが、題名で人を裏切らないで。単に理論に終始するのではなく、また歴史の羅列に終わらずに、一つの教科書の中に最低限の理論と、その実践の紹介がなされていることは、おもしろいのである程度は評価しますがね。

  •  平和政策、特に紛争問題の多面性に着目し、それを改善する方法論にも多様性を持たせている。誰でも読者は感じる事だが、「なぜ本書のタイトルが平和政策なのだろう」と私も感じた。内容的には、今までにあまり掲載されてこなかった視点(ある意味でうさんくささやテクニカルな議論が出来ていなかった視点<ジェンダーやNGO・・・>)が含有された国際関係テキストという印象だろう。正直、これから国際関係を学ぶ人には適していると思うが、国際政治のテキストとしては物足りなさを感じる。

     では、タイトルを考えるとやはり、平和政策ではなく、国際政治学における一つのグルーピングの「平和研究」が一番適していると思った。そこで、なぜ平和研究ではなく、平和政策なのかという疑問も生まれる。政策と研究の違いは勿論背景があり、より実践的なものをいう意気込みがあるのだが、むしろ平和研究の歩みを考えた時に非常に納得した。

     彼ら自身はそこまで先人の批判をしていないが、冷戦期における日本における二つの巨大な学会は、まあこれはあくまでも国際関係におけるものだが、国際政治学会と日本平和学会だった。国際政治学会はリアリズム的でアメリカの視点。日本平和学会は、左派思想が多く、平和研究も理論研究がメインだった。90年代に入り、冷戦が終了すると日本平和学会の平和思想、左派思想に関わる研究の意味が消え、その研究者の価値もなくなる。一方の国際政治学会はアメリカを中心に国連新秩序の中で生まれる諸問題を冷静に分析する視点などが評価され、リアリズムの復興が進んだ。平和学会は無用の長物のようになったが、問題は民族紛争などの新しいニーズに具体的、特定的対応策や分析、考察のできない日本平和学会に問題があった。90年代後半から00年代前半にかけて、30代の若手を中心に民族紛争や平和構築などを現場レベルで研究する者が現れた。これらの研究者が本書でも平和構築の章で主に執筆している。彼らは日本の平和研究に足りなかった三つの視点を導入した。第1に、現場レベルの分析、考察を伴ったテクニカルな政策議論である事。第2に、理論研究よりもむしろ、その後実践する事に意味を見出し研究している事。第3に、英国やカナダにおける進んだ平和研究の手法、議論を踏まえている事、である。
     こうした背景の中で日本平和学会には、新しい世代が生まれている。日本の平和研究は変化したわけだが、その一方、平和研究という言葉にはかつてのイメージがつきまとう。研究であり、政策にはなかなか結びつかないというイメージである。そこで本書は「政策」という言葉を選んだと思われる。また平和構築としなかったのは、平和構築だと具体的特定的論考に終始し、その前提知識として必要な国際関係論を踏まえる事ができないからだろう。学部1、2年生は是非、読むべきだ。

  • 06冬学期の国際政治の教科書。
    オムニバス形式で用語解説も豊富。
    読みやすい。

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