施設で育った子どもたちの語り

制作 : 『施設で育った子どもたちの語り』編集委員会 
  • 明石書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750336145

感想・レビュー・書評

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  • タイトル通り、児童福祉施設など社会的養護によって育ち成人した21人の当事者による、彼らの生い立ちの語りである。
    みな現在は、その苦境を乗り越え、それぞれ結婚したり職を得たりして社会人として立派に生計を立てている方たちばかりで、ほとんどが、施設職員など福祉関連に身を置いているというのも、やはりという気がする。
    社会での居場所が確立されていればこそ、このような本の編集に協力できたとも言えるのだろうが。

    当事者たちの声を聞くと、身体的にも精神的にももちろんネグレクトでも、明らかな虐待行為が親によってなされているのだが、当人たちは当時、それを虐待とすら認識できていなかったことが改めてよくわかる。
    それほど、家庭の中での子どもの立場というのが、絶対的に弱いものであるということだ。その弱い立場の者が、絶対的庇護者が壁になって(もしくは庇護なく社会に放り出されて)、その存在すら社会に認めてもらえず必要な庇護が受けられないとしたら、それはそのまま命の終わりをも意味する。
    少なくとも、ここに登場した21人は壮絶な子ども時代を過ごしたとはいえ、それなりの時期に大人に守られ、その先の道筋をつけてもらえた分だけまだマシだったとも言えるのかもしれない。

    そういう転機となるタイミングに然るべき救いの手が差し伸べられなかった人物もきっといるに違いない。だからこそ、現在は社会での居場所を得た彼らが、少しでも救われる子どもが増えるように、社会的養護が受けられるように、社会の仕組みと人々の意識が変わるように、自らの過去を語るという辛い作業を厭わず買って出たのだろう。

    文章の巧拙どうこうではなく、当事者の言葉には深い深い重みを感じずにはいられなかった。

    巻末には、9つの社会的養護の推進団体が紹介されており、活動を知る参考になる。また関連する基本的な用語の解説もまとめて掲載されているので、大まかなことを知りたい向きには役に立ちそう。

  • 施設で育って大人になった方たちが、今までの苦労や
    これからの希望を綴ってくれている本。

    きれいごとかもしれないけど、社会的養護について
    もっと世間に広く知られて理解されたら
    施設で暮らす子どもたちの気持ちや生き方が
    楽になるのではと思った。

  • Amazon内容紹介
    かつて児童養護施設や里親のもとで生活をした子どもが語る21の物語。虐待など壮絶な体験を経ながらも、生きる支えとなった人との確かな出会いから、自らの思いを整理し社会に発信していこうと成長するまでの魂の軌跡。

    親の離婚、生活困窮、虐待、ネグレクト、心身の病等、様々な事情で親と過ごすことの出来ない子ども達が今でもたくさんいます。親と過ごした記憶すらない子ども達もいます。
    そんな子ども達が自分たちの過去を見つめ、前向きに生きようとしている姿、特に多くの子ども達が社会福祉の現場で働いている、働こうとしている姿に心に熱いものがこみ上げてきました。

    「人生にはどんなことでも意味がある」と言いますが、このような境遇にある子ども達は、この言葉に何を思うのだろうか。

    「世界は愛で満ちていてほしい」と書いている女性がいました。そのような世界になってほしいと心から思います。人は愛を求めていると思うのに、どうして愛に満ちた世界にならないのか。そして、その結果はいつも、子ども達が追うことになるのだ。

    このような境遇に生きる子ども達はこれからも増えてくるかもしれない。そのような状況を本当は無くさないといけないと思うが、難しいことだとも思う。だから、せめて、そのような境遇にある子ども達を、暖かい目で見守る人々がふえることを願います。

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