モギ ちいさな焼きもの師

  • あすなろ書房
4.21
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感想 : 30
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784751521946

感想・レビュー・書評

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  • 人を思いやるということ。
    自分で考えるということ。
    あきらめないということ。

    すべてが詰まっている本

  • 身内ではないおじいさんに育てられ、焼き物師のもとで働く「モギ」という少年の物語。彼をめぐる人々の思いやりと、モギのまっすぐな心が、まっすぐに伝わってくる。極貧であるが、彼が、トゥルミじいさんに育てられたことは幸運だった。おじいさんの生きる上での哲学がモギに浸透し、人間としての基礎が築かれたのだと思う。

    最初焼き物師ミンのモギに対する扱いが虐待を思わせるが、後から歴史的な事情として認識した。焼きものに対する優れた審美眼や、技術習得に対する貪欲さがモギの全身にあふれ、読みながら彼を応援していた。

    終盤ではちょっと泣いてしまった。朝鮮半島の歴史の一端も学べる物語。とても読みやすく美しい翻訳だった。

  • 2002年にニューベリー賞を受賞した、リンダ.スー.パークが書いた昔の韓国が舞台の物語。
    モギは両親を亡くし、おじさんがいるであろう、焼き物(高麗青磁)の村のチョルポに連れて来られたが、おじさんは見つからずお寺に預けられる事になった。しかし、お寺も熱病が流行っていて預かれず、橋の下に住む片足のトゥルミじいさんに預けられる。それから10年、モギは稲穂を拾ったり、ゴミば箱を漁ったりしながら、トゥルミじいさんと仲良く暮らしてきた。
    モギは、名焼き物師のミンの作業をかげから観ることを喜びとしている。ある日、誰もいなかったので、棚に置いてある乾燥中の作品を勝手に手にしてみていると、ミンに見つかってしまい、作品をダメにしてしまう。それの弁償としてモギはミンのところで働き始める。

    トゥルミじいさんからは愛情と生き方を教えてもらい、ミンからは作成する厳しさを見せられ、ミンの奥さんからは優しさをもらう。
    悪人が出てきてハラハラする場面もある。でも、それは良いほんの少し。全体としてモギの周りのおとなが素晴らしく、読者はモギの成長を暖かく見守りながら読み進めることが出来る。生きることは素晴らしいと感じられる、高学年マスト作品。

  • 6年教科書掲載本

    川の下で暮らすみなしごモギ。
    冒頭から、生きていく上で忘れてはならないと思える言葉の連続。そして、韓国の貧しい子どもの話つながりで、子どものとき読んだ「ユンボギの日記」を思い出した。

    後半はドキドキハラハラ、そして最後は…

    なんの苦労も知らない、それでも今の生活や自分の状況に不満を持つ子どもたちに読ませたい。

  • 友人から薦められてからずっと気になっていた本です。偶然見つけて、ようやく読めました。

    高麗青磁の魅力に惹きつけられ、あることを境に職人のミンに弟子入りしたモギ。厳しい修行の中でも希望をもち、育ての親のトゥルミじいさんやおかみさんの優しさに支えられながら、尊敬する親方の下で過ごしていきます。

    モギの正直で懸命な姿に胸を打たれます。そして、そんなモギを育てたトゥルミじいやんの言葉も素敵。二人の関係性がお互いを思いやっていて、じんわりします。

    「死ぬばっかりが真の勇気ではないぞ」

    今のこの情勢だからこそ、多くの人に届いてほしい言葉だなと思いました。

  • 朝のNHKのテレビ小説を、私は毎朝楽しみに見ています。現在スカーレットという日本の女性陶芸家の物語です。
    モギも陶芸家のお話です。孤児のモギが赤ちゃんの時トゥルミ老人に育てられ、近所の実力ある陶芸家の下に弟子入りをするまでのストーリーが描かれています。残飯をあさるような生活をしていても、人間としての誇りを失わなわず、礼節を守る、そんなモギと、モギをそのように育てたトゥルミ爺さんの人柄に、大変感銘を受けました。

  • 韓国の焼き物師に弟子入りするモギ。ラストはじんわりくる。

  • 地味ながら、とても味わい深い作品だった。
    出勤途中のバスの中で眼をかっと見開いて読んでいたのは、そうしないと涙が出てきてしまうから。

    モギは多分12歳くらい。
    両親はいず、橋の下に住むトゥルミじいさんに育ててもらって10年。
    毎日の食事をどうやって手に入れるかだけを考えて生きているモギの唯一の楽しみは、村の焼きもの師ミンがろくろを回すところを見ることだった。

    トゥルミじいさんの語る言葉がモギを人として育んでいく。

    ”森や、ごみ捨て場で食べ物を探したり、稲刈りのすんだ田んぼで落ち穂を拾ったりするのは、てまひまかけて働くわけだから恥ずかしいことではない。けれども、盗みと物乞いはしちゃならぬ。「働くものは胸をはって生きられる。盗むものはこそこそ生きるしかないのじゃよ」”

    ”「考えることにはな、効能がふたつ、あるわい。まず頭の体操になる。次に腹ぺこを忘れておられる。」”

    ”「学者さんがたはりっぱな書を読みなさる。おまえやわしは世の中を、じかに、しっかり読むんじゃわい」”

    ひょんなことから村一番の焼きもの師、ミンのところで働くことになるモギ。
    無口で妥協を知らない職人気質のミンのもとで働くのは大変だったけれど、モギはミンのすることをよく見て、その意味を考え、助手としてどんどん成長していく。

    ある時宮中御用達の焼きもの師を探しに、村にえらい役人が来る。
    モギはミンの焼いた瓜型瓶を届けに遠い道のりを歩いて宮殿に向かう。
    そんなモギを襲う試練とは。

    モギを襲った試練は、12歳の少年を絶望のどん底に落とすけれど、そんなとき彼の心にトゥルミじいさんの言葉がよみがえる。
    「死ぬばっかりが真の勇気ではないぞ」

    そこからの怒涛の展開はもちろん感動的なのだけど、この作品は、その前段の何気ない日常が実にいい。
    モギとトゥルミじいさんの、貧しいけれども思いやりにあふれ笑いの絶えない生活。
    職人の厳しさを体現するミン親方と、優しい奥様。
    あえて言葉にしない思いやりや、言葉とは裏腹の優しさ。

    モギの素直で誠実な人柄が、どうやって育まれたのか。
    それを想像するだけで、心が温かいもので包まれる気がする。

  • これがアメリカでニューベリー賞を受賞したということが(2002年かな?)喜ばしいなー。奥付を見たら8刷りで、それもまた喜ばしい。
    モギは、貧しいなかでも勤勉で前向き。「職人気質」が歩いているような親方について、無視され、怒られながらも必死に手伝いを続けていく。
    それでも実の子ではないから弟子にはしてもらえない……。悲しみにうちひしがれそうになったところを支えるのが親方の奥さんであり、またトゥルミじいさんであり。まわりの人たちもよく描かれている。

    あと、なんといっても皇帝の使者ですね。この人の目が確かであるということがとても大切だったわけで。それでなければお話としては成立しなかったかもしれない。
    そこはちょっと都合がいいのかもしれないけど、やはりあらまほしき展開なのだと思いました。

  • 「訳」であることを感じさせない好著。ただ、原作を読んだ時の方がもっと胸に「ぐぐっ」と迫るものがあった。何が違うのか、考え中。

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著者プロフィール

1960年米国イリノイ州生まれ。韓国系米国人二世。子どものころから詩や物語を書くのが好きで、雑誌に投稿していた。スタンフォード大学英語科卒。石油会社勤務、結婚、出産を経て、子ども向けの物語の執筆をはじめ、『モギ ちいさな焼きもの師』(あすなろ書房)で2002年ニューベリー賞を受賞。作品に『魔法の泉への道』(あすなろ書房)、『木槿の咲く庭』(新潮社)などがある。

「2018年 『ジュリアが糸をつむいだ日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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