市場を創る―バザールからネット取引まで (叢書“制度を考える") (叢書〈制度を考える〉)
- NTT出版 (2007年3月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (378ページ)
- / ISBN・EAN: 9784757121270
感想・レビュー・書評
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「ひたすら読むエコノミクス」の巻末にて
紹介されていた参考文献。
その本もすごくいい本だったが、本書もまた
共通したすごさがある。
それは、一枚のグラフ、一本の数式も使わずに
経済学のなんたるかについて、
幅広く、しかして理解のなしうる読み応えと読みやすさを
並立させた文章を展開していることである。
国際的な、特許や企業活動、国家経済についての
実例に即した文章はきわめてわかりやすく、
純粋に読み物としても大変おもしろい。
著者の立ち位置は「市場原理主義」でも「市場否定主義」でも
ない。
市場システムそのものを目的として考えるのではなく、市場とは
「生活水準を引き上げるための不完全な手段の1つである」
と述べている(p.324)。
この定義は、極めてしっくりくるものだ。
その市場特性を見極めて、
いかに適切な設計と運営をするかに、市場の達成、
すなわち「人々の生活をよりよくするか」の成否はかかってくる。
こう考えておけば、なかば宗教的とすらいえる市場に纏わる崇拝や
嫌悪を捨て去り、「ベターなあり方」を探し続けることができる
のではないか。
その積み重ねが、人類社会の向上に資する根本のように思われる。
折りに触れて読み返すことで、またいろいろ気づきの
得られる本だと思う。すばらしい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
市場及び市場設計に係る本。古今東西の成功・失敗してきた市場を例にとり、現代経済における市場においては、市場を如何に上手く機能させるかが一番実用的に重要な問題であり、市場抑圧や市場原理主義といった極論は意味が無いこと、また現在の市場主義は、他の方法よりもベターではあるがベストではないことを示している。
上で述べたことは基本的なことではあるが、「市場」に関する一番重要な「土台認識」を作るため、この本を読むのは非常に良いと思う。 -
経済学、特にミクロ経済学は抽象的であるが故に机上の空論だと誤解されがちである。この本はそういった誤解を解いてくれる。
現実世界に経済学が息づいていることを、数式を一切用いずに示している良書。 -
第3章は必読。
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"市場"を考える本。市場経済についての新たな知見を与えてくれると同時に、潜在していた考えを言語化できた。市場に対する認識が改まった。
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メカニズムデザインの専門家による経済学で行われてる研究がどのように社会に貢献しているのかわかる良書。経済学者としての姿勢も示されており、経済学を学ぶものとしても考えさせられる。
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マーケット・デザイン、メカニズム・デザインの分野の研究をするにあたって、固い理論の本読むよりは読み物の方が面白いだろう、と思って購入。
「市場システムはそれ自体が目的なのではなく、生活水準を引き上げるための不完全な手段の一つである。市場は魔法ではないし、非道徳的なものでもない。市場は目覚ましい成果を生み出してきた一方で、うまく機能しないこともありうる。特定の市場がうまく機能するかどうかは、その設計にかかっているのである。」(第17章より)
うまく機能する市場を設計するにおいて、持つべき5つの重要だが基本的な特徴は、
・情報が円滑に流れること
・人々が約束を守ると信頼することができること
・財産権が保護されているが、過度に保護されていないこと
・第三者に対する副作用が抑制されていること
・競争が促進されていること
「ヤバい経済学」以後「インセンティブ」という言葉にはかなり気を遣うようになったし、進化経済学とか制度設計にもかなり最近興味がある中で、この本は自分の興味関心分野にかなり合った本だった。
制度設計の成功事例・失敗事例が豊富に含まれているし、学術的な参考文献もしっかり記載されているので、もう一回読む価値のある本。
例えば第14章の、カリフォルニア州における電力市場の規制緩和の失敗事例は、まさに今から日本の送発分離の話にドンピシャだし、第15章の経済改革に関するニュージーランドの成功事例、ロシアの失敗事例、中国の成功事例は、日本の今後の長期的な構造改革にあたって大事なケーススタディになっていると思う。
他にも、海洋市場の設計の事例とか、面白い事例はたくさんあった。 -
名著。市場主義でも反市場主義でもない。
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「市場原理主義」に反対する人々は、市場の反対物は直接規制だと思い込んでいるが、経済学は市場をコントロールする技術を開発してきたのである。本書は、そういう制度設計の考え方をやさしく説いている。
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[ 内容 ]
「市場」はどのように「設計」されてきたか、あなたの側にある、その成功と失敗。
教科書が教えない「市場」の原理。
新しい時代の経済学入門。
[ 目次 ]
唯一の自然な経済
知性の勝利
地獄の沙汰も金次第
情報は自由を求めている
正直は最善の策
最高札の値付け人へ
サァ、いくらで買う!
自分のために働くときには
特許という困惑
なんびとも孤島にあらず
公衆に対する陰謀
草の根の努力
他人のお金を管理する人々
競争の新時代
空気を求めて
貧困撲滅の戦士たち
市場の命令
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]