大格差:機械の知能は仕事と所得をどう変えるか

制作 : 若田部 昌澄 
  • NTT出版
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感想 : 30
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784757123267

感想・レビュー・書評

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  • 読む前は想像もしていなかったけれど、チェスの話がとても多かった。

    では期待はずれかというとそんなことはなく、ケン・リーガンのチェスプログラムを用いた、指し手の質の評価に関する研究が紹介されていて非常に興味深かった。

    チェスプログラム(既に人間よりずっと強い)を信頼性のある基準として、チェスの対局における人間の指し手の質(=人間の意思決定の質)を評価したところ、
    ・プレーヤーの犯すミスの数はレーティング(技術レベル)どおり
    ・チャンピオンクラスはチェスプログラムが好ましいと判断した手と同じ手を選択する確率が高い(といっても絶好調時でも55%程度だそうです…)
    といった知見が得られたとのこと。
    チェスプログラムから見たら(どんなに強いプレーヤーでも)人間なんてミスばかり犯すということですね…。

    記録上の過去の指し手も同様に評価したところ1850年代の世界最高のプレーヤー ポール・モーフィーの実力はレーティングにして2300相当(現代では全米100位にも入れない程度)と推定されたそうです。人類のチェスのスキルは向上していっているんですね。
    また、チェスプログラムが登場し人間がこれを利用して学ぶことによりチェスプレーヤーの実力はさらに向上しているそうだ。コンピュータ様々。

    コンピュータとはうまく付き合って、機械にできることは機械にまかせ、人間は人間にしかできない分野についてのスキルを高めてうまくやっていこう。

  • なんだかずっとチェスの話だ。社会問題としての格差の話じゃなくて『機会との競争』(あの日経BPのやたら装丁が凝った黒と銀色の本)の内容に近いだろう、最後の章の都市の生活についてというのが一番おもしろかったが、いかんせんチェスの話が多すぎる。(やらないのでよく分かっていない、チェスができるひとならもっと大きな理解が得られるのか?)

  • 産業革命レベルの構造変化が現在進行中であるということ

  • Original Title: Average IS OVER

  • AIが進化すると人間の仕事がなくなる可能性があることを書いた本ですが、流石に日本で2014年に発刊では情報の古さは否めません。

    最後の「3 新しい世界」は現代においても示唆に富む部分があるので、時間が無い人はそこだけ目を通せば良いです。

  • 機械の知能は仕事と所得をどう変えるか

    チェスの世界を例に、コンピュータと人間が共同作業していく
    (&立場が逆転していく)だろう、という近未来予測

  • “テクノロジー失業に陥らないために何をなすべきか?
     近年の世界的な富裕層と貧困層の格差拡大の根底には「経済のグローバル化」「テクノロジーの進化による生産性の向上」「停滞した産業と活力のある産業の二極化」という抗うことのできない変化がある。
    本書では、飛躍的な進化を遂げるテクノロジー=機械の知能に注目し、技術革新が未来の雇用・所得・ワークスタイルに与える恐るべき影響を徹底検証する。”
    http://www.nttpub.co.jp/search/books/detail/100002317


    【目次】
    日本語版への序文(二〇一四年七月 タイラー・コーエン) [i-iii]
    目次 [v-ix]

    第1部──超実力社会の到来
    第01章 iワールドの雇用と賃金 004
    平均の終焉/機械の知能は何をもたらしたか/イノベーションはなぜiワールドで起きやすいのか

    第02章 大いなる勝者と大いなる敗者 024
    STEM――注目される四つの分野/マーケティングの重要性/マネジャーの報酬はなぜ高いのか/労働者に求められる素質/グーグル化する雇用世界/知的エリートはなぜ金融・法律・コンサルティングをめざすのか

    第03章 なぜ多くの人が職に就けないのか?  055
    賢い機械と労働参加率/アメリカの失業率が下がらない理由/大不況/宙ぶらりん世代のフリーランスたち

    第2部──機械の知能
    第04章 コンピュータチェスが教えてくれること 080
    ゲーム化する仕事の世界/機械対機械の戦い/機械と人間の協働へ

    第05章 人間と機械がチームを組む未来 092
    フリースタイル・チェス──人間と機械の知の協働/機械の利用はもう当たり前/医療界では何が起きているか/フリースタイル・モデルの広がり

    第06章 人間の直感はなぜ当てにならないのか? 113
    恋人探しのアルゴリズム/意思決定の落とし穴/機械が人間を成長させる/直感的判断の限界

    第07章 規格化・単純化される仕事の世界 134
    規格化され、単純で、いらだたしい世界/機械の行動原理につき合わされる?/人間が機械に「採点」される時代/機械の判断責任をどう問うか

    第08章 機械は人間に近づくのか?  161
    極端な未来用僧都の現実味/チューリングテスト/人間を模倣できる機械/人間は非コンピュータ化する?/人間が機械を受け入れたくない領域

    第3部──新しい世界
    第09章 雇用の新しい地図 196
    経済停滞はなぜ起きるのか/生産拠点の国外流出と移民の受け入れ/世界の経済地図はどう変わるか/新しい「北米の世紀」

    第10章 「オンライン」が教育を変える 215
    「生き延びる」ための教育/オンライン教育と大学の未来/ゲームの教育効果/平等な「超実力主義」の時代へ/対面教育が担う役割とは?/教師の役割が変わる

    第11章 「みんなの科学」の終わり 246
    科学の未来はどうなるか/専門分化が進む/問題が複雑化する/機械が「科学者」になる/経済学は理論退潮の時代へ

    第12章 新しい社会的契約 274
    一五%の超富裕層とその他大勢/財政難は社会をどう変えるか/実質賃金が減る/居住地が変わる/趣味や嗜好が変わる/未来の政治の姿──奇妙に平穏な時代


    謝辞 [310]
    注 [311-330]
    解説──『大停滞』から『大格差』、そして先の未来へ(若田部昌澄) [331-342]
     1 著者タイラー・コーエンについて
     2 大不況後の経済論戦と『大格差』
     3 『大格差』から未来へ
     注
    索引 [344-350]

  • アメリカの話だけど日本にも通じるセオリー。オンライン教育と最終章の富裕層と低所得者層の話しが参考になった。

    1割りの富裕層に入るためには、富裕層に対するサービス提供者(ロボットではできない)になるか、itと協力できるビジネスを生み出す者になるか。

  •  先日、タイラー・コーエン 氏 による「大格差:機械の知能は仕事と所得をどう変えるか」を読み終えました。
     コーエン氏の著作は、以前「大停滞」を読んでいるので、これで2冊目になります。前作に続いて、ちょっと話題になっている本ですね。
     内容としては、テクノロジーの高度化・進化が近未来の雇用環境・労働現場へ及ぼす影響を論じているのですが、結果として、将来に向かっては社会の富の分布に変化をもたらし、社会は、「中流層の縮小・富裕層と貧困層の差の拡大」という方向に進んでいくと著者は指摘しています。

  • 流行の格差本だが、富裕層批判で溜飲を下げるタイプではないのに好印象。

    機械を制する者が所得を制すがコンセプト。
    かといってネットの情報強者万歳、ではない。生き残れる労働者とは、人当たりのいい、真面目で、顧客の要望に正確適度に応じられるもの。いや、これは別に今にはじまったことではない。

    ネットの発達によって、安価なオンライン教育が進み、教育格差がなくなるという未来図は嬉しいが。
    不要な引用や脱線が多かったので飛ばし読み。

    巻末に日本の経済学者の解説があるが、日本はほんとうに経済学者が後追い。実際の経済をつくる実業家の方が優秀という気がしてならない。

著者プロフィール

米国ジョージ・メイソン大学経済学教授。1962年生まれ。「世界に最も影響を与える経済学者の一人」(英エコノミスト誌)。経済学ブログ「Marginal Revolution」運営者。著書に全米ベストセラー『大停滞』 (NTT出版)など。

「2020年 『BIG BUSINESS(ビッグビジネス)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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