現代マンガの冒険者たち

著者 :
  • NTT出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (401ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784757141773

作品紹介・あらすじ

マンガはどのように進化してきたのか?あの作家のどこがすごいのか?マンガをもっと楽しむためのガイドブック。

感想・レビュー・書評

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  • 著者は、雑誌・新聞などでよく名前を目にする「マンガ解説者」。編集者の新保信長と同一人物である。

    5年前に出た本だが、いまでも十分読むに値するマンガ論集であった。というのも、1年も経てば古びてしまうような、コマギレの作家・作品紹介ではないから。
    これは、現代マンガ全体を鳥瞰してその主要な流れを取り出し、系譜をたどった作家論集なのである。つまり、現代日本マンガ史としても読める本なのだ。

    「現代マンガ」といっても、手塚治虫の出現から説き起こすわけではない。副題に「大友克洋からオノ・ナツメまで」とあるように、おおむね1970年代後半以降が俎上に載る。
    そこから現在までのマンガ史を、著者は5つの流れ――ビジュアルの変革者たち・「Jコミック」・ギャグマンガ・ストーリーマンガ・少女マンガ――に沿って系統化していく。

    その系統化の手際がじつに鮮やかで、マンガ史の流れがすっきりと把握できる。つまり、誰がどのような革新を担い、誰が誰の影響下にあるのかといったことが、一通りわかるのだ。

    文章の平明さも特筆もの。最近の大学に増えてきた「マンガ学科」に「現代マンガ史」という講義科目があるなら、そのテキストに採用してもよいくらいだ。

    約400ページと薄くはない本だが、それでも、一冊で現代マンガの重要な作家が網羅できるはずもない。かなりの抜け落ちがある。

    たとえば、岩明均についての言及がまったくない(系譜図の中に名前があるのみ)ことに、私は首をかしげた。現代のストーリーマンガについて論じるなら、彼は絶対外せない重要作家だと思うのだが……。

    もっとも、マンガ百科事典ではない以上、そうした偏りもある程度仕方のないことだろう。大雑把に現代マンガ史を鳥瞰する本としては、上出来の内容といえる。

    私がとくに感心したのは、各章に一つずつ入っている系譜図・分布図の素晴らしさ。

    たとえば、第1章の冒頭には「〈ビジュアルの変革者たち〉系譜図」が見開きで載っており、戦前から21世紀までの日本マンガのビジュアル革新史がコンパクトにまとめられている。重要作家の名前を並べるのみならず、作家相互の影響関係までが図示されているのだ。

    こういう図を作るのは、ものすごい労力がいるものだ。
    私は20年ほど前、某大手取次会社が主催した大規模なマンガ展にかかわったことがある。そのパネル展示の中の系譜図も私が作ったのだが、たいへんな作業であった。

    そこから、本書の系譜図に費やされた労力も察せられる。原稿も8割方は書き下ろしだそうだし、すごい労作だと思う。

    5年後の現在までの状況を加筆した安価な文庫版を、ぜひ出してほしいところ。

  • マンガの発祥となる作家から現代の作家まで。
    ジャンル分けが面白い。
    続編があったら読みたい!

  • 少々曖昧で中身と乖離したタイトル。
    内容はジャンル別に現代マンガ作家の進化や影響の流れ、その系譜をえがくものです。
    大雑把なチャート図も用意されていてとてもわかりやすい。
    大友克洋などの巨大な才能が後進にどれほどの影響を与えたかという話の流れで、実際のコマを抽出掲載しての行き過ぎたパクリ糾弾などはよく実現したなあと感心したのですが、逆ギレ的なお咎めや抗議は無かったのでしょうか。
    マンガ評論家として南信長名義でずいぶん有名になられた方ですが、本名は新保信長氏。かつて西原理恵子『できるかな』の担当編集者であり、作中にもキャラ化され登場していたそうです。
    ご本人は1964年生まれですが、40代以上である程度マンガに触れて育ってきたかたならどの部分もそれなりに「そうそう」と頷け、楽しめると思います。

    「あの作品/作家が載ってないという苦情は一切受け付けません。載っている内容に関する苦情は受け付けます」というような記載があったのですが、これは他の著書にも記載しているそうで、ちょっといただけないなあ、と感じてしまいました。
    そこはどんどん受け付けるべき、むしろ資料補完に資する有難いことだと思うのですが。

    私はそれほど網羅しているほうではないと思うのですが、それでもパッとチャートを見ただけで大雑把すぎるということ以外にも疑問や反論が無数に湧いてきます。
    ひとつだけ挙げれば、上條淳士と多田由美がほぼ無関係になっているのはどう考えてもおかしいでしょう。

    本書からは、著者がとりわけ少年マンガにわくわくして育ったのだなあということがよく伝わってきて素敵なのですが、少女マンガの分野はやはり不得手でいらっしゃることもよく伝わります。
    岡崎京子チルドレンの括り方あたりはなんだかな、という感じ。
    分析は甘く「マンガ好きが『俺の好きなマンガ』を好きなように語った」という認識で読むのが吉かと思います。

    20年以上昔、朝日新聞の元旦の特別版にマンガ特集がありその中で一面まるまるだったか見開きだったかでマンガ作家の樹形図が掲載されていました。膨大な情報量と納得の分析に感動した記憶があるのですが…どこかで読めないものでしょうか。

  • <閲覧スタッフより>
    現代マンガの伝説・大友克洋。その前後、フォロワー、一線を画す孤高の作家など現代マンガの行方を60名以上(!)のマンガ家と多彩な作品とともにわかりやすく紹介しています。

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    所在記号:726.101||ミナ
    資料番号:20097864
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  • おもしろくないわけではないんだけど、なんかなあ。
    興味がない漫画家のところを読んでも、やっぱり興味は湧かないし、興味がある漫画家のところは、言わずもがなのところが多い。まあ、しかたがないんだけど。

  • 〈現代マンガの歴史の中でキーパーソンとなる作家たちを選び出し、「どこがすごいのか」「マンガ界にどんな影響を与えたのか」を検証しながら、チャート図なども用いて漫画家の系統進化の流れを俯瞰できるようにした、いわば<現代マンガ進化論>のようなもの〉と、序文にはある。目次を見てみると……。

    第1章 ビジュアルの変革者たち
    1.井上雄彦という〈現代のカリスマ〉
    2.大友克洋「以前/以後」
    3.〈ファッションリーダー〉としての江口寿史
    4.鳥山明――〈マニア〉から〈国民的作家〉へ
    5.高野文子が立つ〈孤高の頂〉
    第2章 「Jコミック」の正体
    1.岡崎京子〈刹那と永遠の狭間で〉
    2.よしもとよしともの〈誠実と怠惰〉
    3.望月峯太郎の〈破壊衝動〉
    4.〈本当は泥臭い〉松本大洋
    5.古谷実の〈傲慢と諦観〉
    6.古泉智浩の〈童貞魂〉
    第3章 〈ギャグ〉に生き〈ギャグ〉に死す!
    1.吾妻ひでおの〈深い穴〉
    2.江口寿史と鴨川つばめ〈ポップギャグ〉と〈逃走論〉
    3.とり・みきと唐沢なをきの〈理数系ギャグ〉
    4.いしいひさいち〈4コマの改革者〉
    5.吉田戦車と〈不条理ギャグ〉の時代
    6.西原理恵子と桜玉吉〈虚実の境界線〉
    第4章 〈物語のカ〉を信じて
    1.浦沢直樹の〈密かな企み〉
    2.諸星大二郎と星野之宣の〈奇想〉
    3.〈勝負師〉としての福本伸行
    4.弘兼憲史と本宮ひろ志の〈立身出世伝〉
    5.さそうあきらが奏でる〈五感の協奏曲〉
    第5章 少女は成長して女になる、か!?
    1.くらもちふさこと槇村さとるの〈約束の地〉
    2.吉田まゆみと吉田秋生が描く〈リアル〉
    3.成田美名子と松苗あけみの〈アイデンティティ〉
    4.吉野朔実と耕野裕子がめざす〈美しき荒野〉

     巻末には5pにわたって漫画家名の索引がついている。うん。こんくらい並べられると、「読もうかなぁ」という気になるし。もともと著者が朝日新聞に書いているレビュー原稿が好きだったというのもある。
     序文の通り、章の最初にチャート図を用意して、漫画家をいくつかの系統の中にあてこんだり、2次元マトリクスの分布図をつくって漫画家をその中に配置していたりするところがいちばんの特徴。だと思うんだけど……はっきり言えば、あまりその試みは成功していないんじゃないか。個別の漫画家評、作品論についてはうなずけるところがすごく多いのだけれど、流れやマトリクスのなかに当てはめようとしているところは強引さを感じる。まぁ、でもそう言われるだろうなぁという危うさは、著者もたぶんわかってるんだろうな。それでもあえてやる蛮勇というのも、ありでしょう。むしろ、個別の反論は置いておいて「よくやったよなぁ」と思う。

  • かなりの漫画好きなら、かならず面白いと思える著書。

    マイナー漫画家にもスポットが当てられていたり、また違った視点での作品考察など、この一冊で漫画がより好きになるような本。

    また読みたい。

  • 本書出版後のマンガ、作家にも注目すべきものがたくさん出てきているので、続編あるいは、増補版の出版を期待します。

  • 漫画に対する愛に溢れた1冊。大勢の漫画家を、初心者にも分かりやすく紹介した貴重な解説本です。名前も知らない漫画家が多かったので、とても参考になりました!その中でも、細野不二彦さん、多田由美さん、中野シズカさん、よしもとよしもとさん、望月峯太郎さん、田中圭一さん、松田奈緒子さん…達が気になるので読んでみたい。本文だけでなく脚注のコメントにも注目して、じっくり読むのをおすすめします。
    副タイトルに「大友克洋からオノ・ナツメまで」とありますが、オノ・ナツメさんの記事は2頁だけでした。でも巻末あとがきで事情を知り、2頁も書いてくださったことに感謝。真島ヒロさんの『RAVE』は『ONE PIECE』のパクリとしか思えないですよね…。そして担当編集者のコメントが酷い…。何故アニメ化まで出来たのか全く理解できない。『スラムダンク』『ドラゴンボール』『サラリーマン金太郎』等の例を見ると、漫画家は出版社とのトラブルは日常茶飯事なのかもと考えゾッとした。

  • 非常に面白かった。「漫画の年表」といったところ。創世記の手塚治虫から現代の多くの作家に至るまでの系譜を、漫画という媒体の進化とともに解説していく

    ある一人の希代の漫画かがいたとして、その漫画家の何が新しかったのか、他の漫画家たちにどんな影響を及ぼしたのか、さらにはその作家がどういう道を辿って行ったのかまで書いてあり、非常に興味深かった

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著者プロフィール

1964年生まれ。マンガ解説者。朝日新聞ほかで執筆。著書『現代マンガの冒険者たち』『マンガの食卓』『やりすぎマンガ列伝』。2015年より手塚治虫文化賞選考委員も務める。

「2017年 『もにゅキャラ巡礼 銅像になったマンガ&アニメキャラたち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

南信長の作品

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