協力がつくる社会―ペンギンとリヴァイアサン

  • NTT出版
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784757142916

作品紹介・あらすじ

自発的な「協力」に基づく社会は、いかにして実現できるのか?ネットワーク・コモンズの第一人者ベンクラーが一般読者のために書き下ろした、これからの社会を考えるための必読書。

感想・レビュー・書評

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  • wikipedia、トヨタのカイゼン方式、リナックス、シカゴのコミュニティ警察、重慶のバイク工場などの代表される豊富な事例を用いて、有名無名の人々の「協力」によりよりよい社会が構築できるとして語られる。行動経済学と重なる部分が多かったので、復習という意味でもよかった。
    協力にあたってのポイントは、①参加者同士のコミュニケーション(コミュニケーションにより、参加者相互の信頼感が醸成される)、②集団と仲間意識の醸成(大統領選の党代表決定まで、自分と同じ種類の人間とは協力を維持しやすい)、③規範や道徳への訴えかけー横並び意識の利用(radiohead、NINの投げ銭システム、ロブスター漁師、自分で選んだものは納得しやすい)、④公平性の重視(背景となる文化によって意識が異なる)、⑤評判の活用(カウチサーファー)、⑥処罰と報酬の効果的な活用(幼稚園の遅刻罰金システム、献血、処罰は効果がない場合があるし、報酬は報酬以外での参加者を排除する可能性がある)、⑦協力を可能とする仕組み(トヨタNUMMI工場のカイゼン)。ただし、いずれも悪意を持った参加者に対しては脆弱である。協力がもたらす未来について、筆者はオバマ大統領の草の根で献金を集めた選挙活動を挙げることで、明るい社会を想定している。
    訳者解説により、訳者の山形先生から内容の問題点が容赦なく指摘されている。本編を読む前にこっちを読んだほうがいいかもしれない。
    そういう本だから仕方ないのだが、なーんか楽観的すぎないかなーという印象。これは書評を書いている時点(2016年8月時点)においては、協力と寛容よりも非協力と不寛容を目にする機会が多くなっているからだと思う。刊行当時(2011年)から現在までの急激な社会情勢の変化は、もちろん予測できるわけもないし、本書で取り上げられている事例の価値を落とすものではないのだけれど、どうにも楽観的過ぎるきらいを感じてしまった。協力を考える端緒にはなりえると思う。

  • (参考)
    ヨハイ・ベンクラーの新しいオープンソース経済について
    http://www.ted.com/talks/lang/ja/yochai_benkler_on_the_new_open_source_economics.html

  • JoiIto他『9プリンシプルズ』の結論で、ロナルド・コースに触れつつ、本書著者による「コモンズに基づくピア生産」を引いていたことから、本書に興味を持った。上記の本と同じ訳者だが、本書の「訳者解説」がとても有用。読みながらの違和感を、うまくカバーされていた。

  • # 書評☆3 協力がつくる社会 | 協力関係のための7の指針がまとめられた第10章と訳者解説が重要

    ## 概要
    協力的な社会について,歴史的な経緯やWikipediaやLinuxのような近年特に顕著な協力の事例を取り上げ,人間の考え方や,方法について考察されている。

    まず,この本においては「第10章 ペンギンの育て方」と「監訳者解説」を最初に読むことを強く薦める。

    なぜかというと,書籍の大半が小難しく細かい議論が展開されているからだ。
    人間の考え方などを振り返るのにあたり,リチャード・ドーキンスの利己的な遺伝子の話や他の経済学の原理や心理学の実験などがたくさん引用されており,読んでいてもつまらなかった。この内容がひたすら続くなら,評価は2にしていた。

    しかし,最後の第10章でここまでさんざん議論されてきた協力関係のパターンを整理し,協力関係のための指針がまとめられていた。これがよかった。なにせ,このような協力関係のための指針が書かれた本はあまりないからだ。

    そして,監訳者の解説が良かった。何回の書籍の大半をうまく噛み砕いて整理しており,最初のこの監訳者の解説を読んだほうがよかったなと感じた。そして,監訳者による本書の問題点の指摘が書かれており,ちゃんと考えて監訳したのだとわかった。監訳者の解説は今まであまり参考にならなかったので,ちゃんと読んでいたのだが,いい解説だった。

    なお,副題のペンギンはLinuxのことで,リヴァイサンはトマス・ホッブスの著書 (普遍的利己性を想定するアプローチ) を指している。

    ## 参考
    > ### p. 229: 第10章 ペンギンの育て方
    > 以下に挙げるのは本書を通じて示してきた証拠に基づき、成功する現実的な協力システムの要素だと私が信じるものだ。
    >
    > 1. コミュニケーション。
    > 2. フレーミング、適合性、正真性。
    > 3. 自分を超えた視点 -- 共感と連帯感。
    > 4. 道徳的システムの構築 -- 公平性、道徳性、社会規範。
    > 5. 報酬と処罰。
    > 6. 評判、透明性、互恵性。
    > 7. 多様性を考慮して構築。

    ながながと本文の大部分で議論されてきた内容のエッセンスがこの10章に詰められている。これらの要素を振り返り,本文中で取り上げられた過去の現実世界のさまざまな事例を見返すと,目の前の問題に役立てられるところが見えてきそうに感じた。

    ## 結論
    書籍の大半は小難しくて細かい内容の議論が連続しており,はっきりいって読むのがしんどかった。しかし,これらの大量の事例と議論からまとめられた結論は,根拠があり,有益な結論だった。もう少しわかりやすくまとめてくれていれれば文句なかった。

    自分で組織を率いるときやサービスを作るときなど,こうした要素を考慮して検討できれば,協力関係の得られるよい成果が得られるだろう。なかなかこうした情報が得られないので,貴重な本だった。

    パーマリンク: https://senooken.jp/blog/2019/06/19/

  • 社会
    経済

  • 協力を作る視点が書かれた本著

    本著に示された例示はウィキペディア、トヨタ自動車など多様であったが、表層的な部分しか語られていなかった。
    トヨタの生産方式にも下請け企業の切り詰めから莫大な利益を生んでいる点を考慮に入れるべきだと思う。

    最終章で、キーワードの解説をまとめ上げていた。見方によっては理想主義に映る。
    「コミュニケーション、フレーミング、共感、連帯感、公平性、信頼感、報酬と罰」など

    これらを上手く組み合わせていくことが運営や組織をまとめ上げる際に、士気を上げることに繋がると感じた。リヴァイアサン→ペンギンへ育て上げることは困難だと思うが、偏見や差別が蔓延する世界で、それらを和らげる考え方の一つとして捉えていきたい。

  • 貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
    http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784757142916

  • 様々な題材から協力ということを示しているので、卒論のテーマを探すには最適であるが、参考文献がないのでwikipediaで探すしかない。

  • これからの社会は強力・共栄にこそ、成長・存続の為の答えがあるように思います。その答えへのヒントがこの本の中には幾つも隠されています。意識してよんでみて下さい。

  • 西洋における、利己的な人間をベースとしたしくみから、人間の協力を効果的に組み込んだしくみへと、設計思想を変換すべきある。

    性悪でもあり性善でもあるという研究成果。成果を設計に活かすべき。

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