ころころ手鞠ずし: 居酒屋ぜんや (ハルキ文庫 さ 19-5 時代小説文庫)
- 角川春樹事務所 (2017年9月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (249ページ)
- / ISBN・EAN: 9784758441070
感想・レビュー・書評
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あ、あぁ~、美味しい
ころころ手鞠ずし―居酒屋ぜんやシリーズの3作目
2017.09発行。字の大きさは…小。
大嵐、賽の目、紅葉の手、蒸し蕎麦、煤払いの短編5話。
お妙は、ぜんやで心を込めた料理を出し、客は、心温まる時を過ごします。
【大嵐】
「イカワタの味噌漬け」三日前にスルメイカの肝を漬けておいた。いかにも酒に合いそうだ。いい具合に水気が抜けている。摘まみ上げても辛うじて形を保っている。切り口がとろりと艶を帯びていた。
う~ん、これはこれは。舌の上でねっとり蕩けてゆきますよ。一切れ頬張って、目元をくしゃりと皺を寄せた。うわぁ、旨い。この深み!酒でも飯でも行けますね、と大喜びだ。
『感想』私も食べたい(笑)
【賽の目】
「えぼ鯛の一夜干し」えぼ鯛は丸みを帯びた愛らしい形をしているが、生だとひと癖ある魚だ。それでも塩をして干せば余分な生臭さが抜けて、しっとりした身の中に旨みがぎゅっと閉じ込められる。お妙は、その一夜干しを遠火でじっくり炙るので、骨の旨みまでにじみ出て、頭から尻尾まで残さず食えた。
甘さを感じるほどの塩加減が、魚の味を邪魔しない。ううん、ほっくり。焼き目のついた皮と共に身を頬張り、只次郎はにんまりと微笑んだ。
『感想』た、食べたい(笑)
【紅葉の手】
「ころころ手毬寿司」お重の蓋を開けたとたん。わ、わぁ、とお志乃が目を輝かした。綺麗。丸っこうて、彩りようて、毬みたいどすなぁ。団子のように小さく丸められた寿司は、お志乃のおちょぽ口に大きな寿司は不粋ではないかと思われた。
ゆえに茶巾絞りの要領で、たねと飯をひとつずつ、キュキュッと小さくまとめてみた。たねは小鰭、海老、烏賊、鯖、甘鯛、平目、鮪。薄焼き卵で包まれたものは、多産を祈って酢蓮根の薄切りを乗せてある。蒸し南京を潰し、茶巾絞りにしたものも用意した。
『感想』ん、美味しい!
【蒸し蕎麦】
打った蕎麦を蒸すと。うん、噛めば噛むほど、蕎麦の風味が出て来るね。もちもちした歯応えで、食い出があります。だが、喉越しが悪くて飲み込めたもんじゃねぇ!。なんだこりゃ、ぼそぼそしてちっとも旨くない。さんざんな出来でした。
『感想』これは、食べれないな(ガッカリ)
【煤払い】
う、まぁい!ああ、なんて上品な出汁でしょう。あっさりしているのに奥深くて、ほのかな磯の香りがたまりませんね。器に口を付けて出汁を啜り、目を瞑る。その幸せそうな顔を見ていると。こちらもつい頬が弛んでしまう。
七輪の上でくつくつと煮ている土鍋の中に、具はまだ蛤しか入っていない。鍋に残っていた蛤を只次郎の器に取り分けて、次は殻つきの海老を投入する。芝海老にしては大振りで、身がプリッと張っている。頃合いを見計らい、空になった器に出汁と共によそった。ふはぁ、味が変わった!
『感想』鍋に、薄味のものから、ひとつずつ具を入れて、出汁と一緒に食べて。次に具を入れて、出汁と一緒に食べていくと。味が変わっていきます。こんな丁寧な、料理は食べたことがありません。喜びです(ニコニコ…)
【読後】
読んでいると、一緒に食べているようになります。美味しく、心温まる、ほっこりした料理が楽しみでなりません。
2021.05.05読了
※シリーズの感想と読了日
ふんわり穴子天 ― 居酒屋ぜんやシリーズ2作目 2021.02.23読了
https://booklog.jp/users/kw19/archives/1/4758440603#
ほかほか蕗ご飯 ― 居酒屋ぜんやシリーズ1作目 2020.11.06読了
https://booklog.jp/users/kw19/archives/1/475844000X#詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「居酒屋ぜんや」シリーズ、3作目。
こまやかな気遣いのできる女将のお妙が出す美味しい料理に、ほっこり。
ただし、背景にあった事情が表に出てくる巻で、サスペンスは強まってます。
大嵐で雨漏りが起き、てんやわんやになる長屋。
そんな時期、行方知れずになっていた又三が発見される。それも、思いがけない形で…
又三が、人にお妙の素性を探るよう頼まれたと話していたことを思い出して、悩むお妙。
常連でお妙に憧れている旗本の次男・林只次郎は、お妙の不安を解消しようとするが、ほとんど弟ぐらいにしか思われていないので、危ないことはするなと止められる。
しかし、武士ではあり、鶯の鳴きつけという仕事であちこちに出かけるのも慣れている只次郎。
探りを入れるために賭場へ出向く役を引き受けることに。
普段はへらへらしている只次郎だが、か弱いお妙を守ってやりたいと燃えて、不安にさせまいとわかってきたことを隠し、お妙を怒らせてしまう。
かなり自由に育ったお妙は実は勝ち気で、大人だからそんなに面には出さないだけなんです。
ぎこちないやり取りにも、少~しずつ距離が縮まる感じが(笑)
お妙の義姉のお勝や、只次郎の兄嫁の父である柳井殿らは茶々を入れつつも見守るのでした。
升川屋喜兵衛の嫁・お志乃が妊娠中で外へ出られないため会いに行くお妙とお勝。
嫁姑の仲がおかしくなり、お志乃は孤立しているらしい様子。
夫の升川屋はお志乃を大事にしているつもりなのだが、ピントがずれている(笑)
手毬寿司という可愛くて美味しそうな料理と、嫁姑の仲をうまく取り持つお妙の優しい手さばきに嬉しくなりました。
長屋の煤払いなど、当時の季節の行事も話に組み込まれてありありと描かれ、面白いです。 -
居酒屋ぜんやシリーズ3巻
ぜんやの女主人お妙を巡る謎は取り合えず解決だが真相はまだまだ奥深そう。
お妙さんの作る料理は本当にどれも美味しそう。
周りの人達もお妙さんの料理に癒され、笑顔に。
只次郎さんとのこの先も楽しみ。 -
居酒屋ぜんやシリーズ第3弾。
このシリーズ、第1弾を読んだ時点ではまったりしたお話なのかと思いきや、行方知れずの又三辺りから話はドンドンきな臭くなり…。え、こんなお話なの?と正直びっくりしている。お妙は一体何に巻き込まれていて、そしてこれからどうなっていくのか、読んでいてハラハラする。只次郎、頑張れ!
そんな展開でも居酒屋に馴染みが集うとやっぱりほっこりするし、お志乃の話は読んでいて暖かい気持ちになれた。こういった人情味のあるお話がこれからもたくさん読めるといいな。 -
お料理と人情噺を楽しむ話
楽しく読めて好きなシリーズ -
ひとまず事件は解決?
お妙の亡夫の死因にはまだ何か隠されていそうだし、それに只次郎の父の上役が一枚噛んでいそうではある。
手鞠ずしや寄せ鍋が食べたいなぁ。
相変わらず、お菜の描写が美味しそうで! -
2023.10.22 読了。
居酒屋「ぜんや」シリーズ第3巻。美人未亡人女将のお妙は義姉のお勝と「ぜんや」を切り盛りする。鶯の世話をする只次郎や大棚の店主などお妙の作る美味しい料理に人々が集まり楽しんでいる一方で姿を消した又三や駄染め屋の男など不吉な問題も抱えながら物語は進んでいく。
今作はお妙周辺で起きた不穏な問題は一応解決といったところ。しかしまだ事件がどうして起きたかという問題の核は解決していない。
お妙の周囲で不穏な動きをしたり問題が起きたりする「緊張」とぜんやに集まってほくほくと美味しいものを食べる「緩和」のバランスがテンポ良く描かれていると思った。
そういえばお妙の父親って医師だったよな…その辺りから実は話が繋がっていたりして…などと考える。
猫ちゃんが出てきたりする細かなところも見落とさずストーリーができているので「あれ?ここは置いてけぼり?」という感覚がなくて読みやすいのに繊細に描かれていて好ましかった。
飽きがこず続きが読みたくなる作品。
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一連の謎が解明され、男女の機微も深まるシリーズ最初の盛り上がりとなる第三巻だが、とりわけ蕎麦打ちの場面では過不足なく手順を説いて、さすがは野球を全然知らずに野球小説をものにした(二巻のあとがき)という作者らしい手練れぶり。寄せ鍋もいいけれど……と言いつつお妙が只次郎に給仕する金目鯛の鍋のなんとも美味しそうなこと。