- Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
- / ISBN・EAN: 9784758444156
作品紹介・あらすじ
品川宿の宿屋「紅屋」では、おやすが見習いから、台所付きの女中として正式に雇われることとなり、
わずかばかりだがお給金ももらえるようになった。
最近は煮物も教えてもらえるようになり、また「十草屋」に嫁いだ仲良しのお小夜さまが、
みずから料理して旦那さまに食べてもらえる献立など、毎日料理のことを考えている。
そんななか、おしげさんからおちよの腹にやや子がいることを聞いていたおやすは、
日に日に元気がなくなっていくおちよの本音に気づきはじめて──。
大好評「お勝手のあん」シリーズ、待望の第四弾!
感想・レビュー・書評
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品川の宿屋〈紅屋〉の正式な台所付き女中となったおやすの成長を描く〈お勝手のあん〉シリーズ第四作。
前作からの宿題…お小夜さまのご主人への料理を考えること…『油っぽいものが好きな人に食べさせるさっぱりしたもの』と『柔らかいものが好きな人でも食べられる硬いもの』で、尚且お小夜さまが作れる簡単なレシピを考えるおやす。
まるでなぞなぞのような料理だが、おやすの斬新な発想力と板長・政一の手助けにより第一の『油っぽいものが好きな人に食べさせるさっぱりしたもの』の方は次第に形になっていく。
だがもう一つの方はまだおやすの頭の中にあるだけのようで形にはなっていない。こちらは更に続編へ持ち越しのようだ。
出来上がってみれば現代よくある料理だったのだが、この当時には勿論ないし、それを頭の中で考え試行錯誤し、政一がそのアイデアを形にするための道具を手配してくれて、良い師弟関係になっている。政一が単におやすを見守っているのではなくおやすのアイデアから刺激を受けて〈紅屋〉で出す料理にも生かしていくところが良い。
仕事に対する厳しさと料理人としての成長を促すための見守りと両面を持った政一のおかげでおやすは人として料理人として成長していく。
もう一つのテーマとして提起されたのが女の生き方。
やはり前作からの続きになるが、流れ者との子を身籠ったちよが中絶するのか産むのか悩んでいる。
相変わらず甘ったれた性分のちよでイライラするのだが、それを受け入れ何とかしようとするおやすやおしげ、番頭さんたちなど、ちよは何と恵まれた人間だろうと思う。今度こそしっかり地に足着けて生きていって欲しいが、甘ったれ精神はそう簡単に治らないだろう。
ちよと反対におやすは恋愛に対する怖さを感じている。そして彼女は改めて料理人として生きる道を進む決意をするのだが、大女将はおやすに結婚する道を進める。この当時の価値観としては当然だからむしろ大女将は善意で言っている。
だがそれがおやすには苦しい。自分が大女将に気を掛けて貰っていることをありがたく思うと同時に料理人としての道を諦めることも出来ない。それがたとえ厳しい道であると分かっていても。
おしげにもかつて縁談話があったことを知った。しかしおしげは誰かの妻になり母になることよりも〈紅屋〉で働くことを選んだ。それでもちよの子を育てることを考える辺り、やはり彼女も母になることを夢見ていたのだろうか。
最後に安政の台風が出て来る。〈紅屋〉はどうなるのか、働く人々は無事なのかとハラハラしながら読んだが、取り敢えず命だけは助かったようでホッとした。しかし次回は〈紅屋〉含め品川宿の復興という難題がテーマになりそうだ。
シリーズ作品レビュー
①お勝手のあん
https://booklog.jp/users/fuku2828/archives/1/4758443076
②あんの青春 春を待つころ
https://booklog.jp/users/fuku2828/archives/1/4758443432
③あんの青春 若葉の季
https://booklog.jp/users/fuku2828/archives/1/4758443807
④あんのまごころ(本作)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
シリーズ第四弾。妊娠したおちよは出産を選び、紅屋から出て尼寺で暮らすことになった。お小夜の旦那さまに料理したのは、鉄板焼きの元祖みたい。そしてフライパンらしきものも登場。
品川に嵐が襲来、紅屋は高波で浸水し、風雨で二階の壁が壊れてしまう。それでも前向きな紅屋の人達、負けるな! -
品川宿の旅籠「紅屋(くれないや)」の台所で働く、おやすの物語、第4弾。
【ちよ】
前回、同じく紅屋で働く、奥付きの女中・ちよの妊娠が明るみに出て、えええーーーーーっ?!
というところで終わった。
自分の境遇に不満だらけ、実家に帰ってつまらない男を婿にあてがわれて一生を終えるなんてまっぴら。お金持ちのお妾になって、楽して暮らしたいなー
などと言っていたちよは、ふらふら遊びに行って怪しい男に引っかかった。
今でいえば、親にムカついてプチ家出して渋谷に行ったら、ちょっとイケてるチャラ男とラブホ行っちゃった!
で、デキちゃった。
てな感じである。
この時代、花街のそばには堕胎をしてくれるお医者様がいる。
同僚の奉公人や女中たちには内緒だが、ちよの事情を知ったおやすやおしげ、政一、番頭さんたちは今後どうするか、悩み、奔走する。
・・・の割にはおちよ本人は極めて子供っぽい考えで、自分の気持ちだけが優先なのが気にかかる。
【小夜】
地震の時に医療の手伝いをして、医者になりたいと思い立った小夜。
嫁に行けという親に反発していたが、やすのアドバイスもあって、ためしに見合いをしてみたらとんとん拍子に進んだ。
今は日本橋の薬種問屋・十草屋の女将におさまっているが、退屈している。
小夜の父、百足屋の主人の頼みもあり、やすは、「小夜に料理を教える」を口実に、十草屋に行くことになる。
子を産まなくてはならないのにどこか覚悟が足りないちよ。
やりたい事がある、と結婚を勧める両親に反発していたのに、いざ嫁いだら子供っぽいお嬢様に逆戻りした小夜。
料理で彼女たちを助けつつ、ひたすら精進するやすだけれど、彼女も周りから縁談を勧められるお年頃になって・・・
この先は時代が変わる、ということを何人もが言っており、薩摩藩の進之介が今回もチラッと現れたり。
維新の様子も描かれるのだろうか、どれくらい先までのお話になるのか気になる。
今、甘ったれて好きなことだけしている嬢ちゃんたちがその頃には、痛みを知る大人の女になれるのか。
また自然災害に襲われて試練の日々が来る。
安否の分かっていない人たちが無事でありますように。
一 本音
二 鍋がない
三 新しい味
四 幽霊の想い
五 柳の下
六 決心
七 あぶら焼き
八 女の幸せ
九 颶風
「番頭さん」としか名前が出てこないが、番頭さんの、異例の事態への対応、危機管理能力、奉公人の人心掌握術はさすが。
大店では、主人は寄り合いや会食に忙しく(それも根回し?)、店を実際に回すのは、優秀な番頭さんや手代だった、という事が実感できる。 -
同僚女中の妊娠を元に、主人公のおやすや先輩女中おしげさん、板前の政さんなどの過去や結婚のことにまで踏み込んだ内容。紅屋の先代女将さんの想いもあり、本当に良い職場に住み込んだおやすにホッとする。今回は料理に関してはあまり凝ったものは出てこない。前作の大地震に続いて大型台風に襲われる当時の世相。天気の予測が今とは違って全然出来ない時代だった大変さがよく分かる。次回の展開はどうなるのか?
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悲しいのと微笑ましいのと
辛いので泣けた。 -
シリーズ第4弾!本作も良かったです♪
女料理人を目指すあんちゃんをずっとずっと応援したい。
表題のとおり、あんちゃんの真心あふれる新しい料理の数々が登場しました。
料理も美味しそうなんだけど、そこに相手を思いやるあんちゃんの気持ちが込められているのを感じて温かい気持ちになります。
「特別食」のルーツもちょっと感じました。
鎖国の世から開国へと、時代の変化を感じられるのも興味深い。“変化を拒絶するもの”と“受け入れるもの”。あんちゃんは怖れながらも料理への探究心が刺激されて、きっと後者だろうなぁ。
大女将のあんちゃんへの愛情にはグッときた。
進之介様の存在感もますます出てきて「もしや…?」と勘繰ってしまう。
薬問屋「十草屋」に嫁いだお小夜ちゃんも幸せそうで良かった。
あっちもこっちも気になるよ~!!
そして更に衝撃のラスト…
これは早々に次巻を読まねば。 -
楽しみにしていた「お勝手のあん」の第4巻。
16歳になってわずかだが収入も得るようになった、お勝手の下働き、おやす。
料理頭の政に見込まれ、女料理人を目指す。
日本橋の大きな薬問屋の後添えに嫁いだ親友のお小夜。
お小夜の旦那様の健康のために新しい料理を考え月一で通う。
女中で、大旦那の親切すじのおちよは、騙された男の子供を身籠ってしまった。
品川に経験のない大きな嵐が訪れた、被害は大きい。
次々と問題が起こるが、一つ一つ流されずに、向き合うおやすこと、あんであった。
日本江戸時代版の「赤毛のアン」の呼び声高い名作シリーズだ。