「お勝手のあん」シリーズ第三作。
今回も様々なテーマが次々と。
前作でお色気飯屋〈むら咲〉の女料理人おみねから出された宿題(謎の黄色い粉の正体とそれの使い方)について。
アレだろうと思うものはあるが、それを使っておやすが何を作るのか、そこに至る追求や思考を興味深く読んだ。
おみねは〈むら咲〉のライバル店が続々出てきたところでサクッと店を畳むらしい。そしてまた新たな構想があるようだ。おみねの割りきり方、前へ前へと進む力強さが格好良い。
〈紅屋〉を逃げ出した勘平の消息が分かる。金平糖職人に付いて修業していたらしいが、地震を機に〈紅屋〉に戻りたいと言っているらしい。しかし奉公先を逃げ出した人間を戻すことは出来ないため、勘平の能力と性格を考えて新たな場所を見つけてあげたらしい。政一といい、番頭さんといい、大旦那といい、〈紅屋〉は実に優しい職場だ。
〈百足屋〉のお嬢さん・お小夜が〈十草屋〉に嫁いで以来、久しぶりの再会。夫婦仲も良く楽しく過ごしているのを見てほっとするおやすだが、今で言うメタボ体型のお小夜の主人・清兵衛が健康になれる料理を考えることに。こちらは続編への宿題。
薩摩の姫おあつ様がいよいよ輿入れとの報せが。完全に閉じられた世界に入ることになるおあつを思い、おやすはせめておあつ様のお相手が良い方であることを祈る。
などと今回も様々な出来事があるが、メインと言って良いのはおちよの話。
〈紅屋〉の親戚で、やはり旅籠を営む実家でやがて女将になることが決められているおちよだが、おやすから見るとどうにも危なっかしい。
そのおちよに想い人がいることが分かる。それも予想より関係が進んでいて、相手の男がおちよ以上に危なっかしい。そのために〈紅屋〉はピンチに…と思いきや、そっちはアッサリ片付く。しかしその後の方が大変だ。一体どんな顛末になるのか、これまた続編へ。
おちよの事情が明らかになり、少し同情もする。おちよがおやすに対して微妙な反発と好意とを行ったり来たりするのも分かる。おやすの素直さ真面目さ勤勉さが眩しすぎると感じる人もいるのだ。
事情といえばおやすの料理の師匠・政一が〈紅屋〉に来た経緯も分かった。政一にとっておやすは弟子であり娘のような存在なのかも知れない。
新たな出会いは医師の上田幸安。〈紅屋〉のかかりつけ医とは真逆で親しみやすく説明も分かりやすい。それだけ人の心にするりと入り込む人たらしな感じも受けて、誠実な人なのか気を許してはいけない人なのかは分からない。しかしおしげが信頼しているのだから安心していいのだろうか。
最後に勘平との短い再会がある。背丈だけでなくすっかり大人びた勘平に狼狽えるおやすだが、それはお互い様かも知れない。勘平の言う通り、いつか再び会えるだろうか。
だんだん『赤毛のアン』から離れて来たが、おやすの成長ものとして追いかけていきたい。
※シリーズ作品レビュー
「お勝手のあん」
https://booklog.jp/users/fuku2828/archives/1/4758443076#comment
「あんの青春 春を待つころ」
https://booklog.jp/users/fuku2828/archives/1/4758443432#comment
- 感想投稿日 : 2021年2月27日
- 読了日 : 2021年2月27日
- 本棚登録日 : 2021年2月27日
みんなの感想をみる