どうして普通にできないの! - 「かくれ」発達障害女子の見えない不安と孤独 -
- 協同医書出版社 (2017年4月12日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (156ページ)
- / ISBN・EAN: 9784763940131
感想・レビュー・書評
-
大人になってから、自分は発達障害だったのかとはたと気付いた筆者の子供のころから母になって子育てをしている現在までの回想録。
筆者が書いていることは知能的にはかなり賢い人なのではと思うようによく分析し、自分のことを表現できているから、本当に発達障害なのかな。とも思ってしまう。
実際に大人になって医者に通う筆者はなかなか発達障害である診断結果を出してもらえない。「社会性があり、社会を生き抜いているから」というのが理由であり、もっともらしそうでありながら、あんまりもっともではない理由で。
ただ、やはりそこまであいまいな境界でしか認定できないものなのだなと、モヤモヤした。
筆者が発達障害なのかどうかは、私は専門家ではないので判断はつかないが、少なくとも子供の頃から生き辛さを感じ、周りとうまくやっていくために細かい技を自分なりにあみだし、周りと付き合ってなんとか社会を切り抜けていく、その社会に対する接し方、打算のようなものが、赤裸々に、素直に書いてあるので、私小説のような面白さがある。
人の意見にどうしても従ってしまう、洗脳されているような、断れなさ、こういう部分はある意味共感できる部分も多々あり、ただ限度が違うのだろうなと思う。
筆者を狙う男たちの姿など、私は男なのでわからないことが書いてあるのも面白い。
若い女の子が生きていく中で、誰でもが、どうでもいい男にアプローチされるウザったさ、苦労を感じると思うが、そういう男に対して蛇ににらまれたガマのように、固まって服従してしまう危うさというのは、読んでいてなんだかドキドキして、破滅していく美学のようなものを感じる。
結婚相手もどんどん前に出ていくタイプに見えて、自信家。その代り妻である筆者を自分のコントロール配下においておきたいという嗜好も見えて、なるほど、カルトとか洗脳とかは、多かれ少なかれこういう部分があるのかもなと考えつつ。
もう一つ、子育て、育児という部分で、親は絶対であり、無力な子供はすぐにでも洗脳、支配できてしまうということに気付き、良く子供のことを尊重して接しないとなと思いました。
ある意味受動的で、思い込みが激しく、完璧主義というものが、実は仕事にはまると強く、活き活きと達成ができる部分もあるということ。これも面白かった。
発達障害に対して理解が深まるというよりは、発達省がいかもしれない人たちが、人生辛いと思っていることを客観的に把握して、社会と折り合いをつけていくための一つの共感できる事例として役に立つとき、一番この本の真価が発揮されるんだろうなと思った。詳細をみるコメント0件をすべて表示