アートは地域を変えたか:越後妻有大地の芸術祭の13年:2000-2012

  • 慶應義塾大学出版会
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784766421491

作品紹介・あらすじ

▼「大地の芸術祭」は地域に何をもたらしたのか。

2000年から現在までに5回開催され、内外で高い評価を得ている「大地の芸術祭越後妻有アートトリエンナーレ」。
この芸術祭が越後妻有という“地域社会”にもたらした、経済面・社会面での効果を検証する論文集。

感想・レビュー・書評

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  • 第一章
    地域の生活インフラ、行政手続き等の合理化便利化を目的とした、国の「広域行政圏制度」が70~80年代に始まる(主要道路新設や新幹線事業にも使われる)。制度は時代とともに地域振興にも標準を合わせるようになり、そのなかで新潟県では独自の広域圏制度として「ニューにいがた里創プラン」を作る。県内の12の広域圏のうち、6広域圏がこの制度を利用。その一つが十日町広域圏の「越後妻有アートネックレス整備事業」。県内ワーストクラスの人口減少を抱える十日町広域圏は早い時代から地域振興を重要視していた。
    6広域圏での事業の効果は大きな差があり、結果的には十日町広域圏のみが飛び抜けて(唯一)成功した。他広域圏では里創プランを実際に実施できなかった地域もある。原因の一つに時期が遅れた実施時期が、平成の大合併と重なり、事業目的が意味を成さなかったこともある。

    第二章
    第三回後の住民アンケートでは、芸術祭を評価しているもののアートフロントギャラリーへの反感が散見された53
    第一回終了後の十日町市長選では、芸術祭反対をアジェンダにする候補が勝利。しかし第四回終了後の市長選では、芸術祭反対の候補に現職の芸術祭推進市長がトリプルスコアで圧勝した。

    第三章
    結局、芸術祭及びアートを経済効果で計るのは難しい



  • 大地の芸術祭は、日本の地域とアートを結ぶ芸術祭イベントのなかでも、瀬戸内芸術祭とならび古くからある先進事例である。

    その13年によって、どのような変化が見られたか、本書はそれを複数の執筆者によって複眼的に考察する。

    ざっと、読んだ感想として、こういったアートイベントの効用は想像以上に計測が困難である、ということだ。


    「ソーシャルキャピタル」という概念を用いて、地域と人の結びつき、関係性の強化に注目した章がとりわけ重要かと思われる。

    観光としての経済効果は、大地の芸術祭の知名度の増加とともに上がるが、一方で国内アートファンという市場規模の限界がある。

    結局、地域に呼び込んだ人とまたこうしたイベントを支えてきた遠方からの支援者がどう関わり、地域と交流し、あるいは移住することで、地域に「豊かさ」が与えられるか、といったところが、こうした芸術祭イベントの一番のポイントではないだろうか。

    現代芸術は、正直僕も分からない。その芸術性の良し悪しは、地元の人も、また同じ芸術家のなかでも意見が分かれるものではないだろうか?自然のなかに芸術を置く、ということ自体、既存のアートからの脱却を試みるものであるかと思うが、そうしたアート自体に地域を変える力があるわけではない、と感じている。

    アートが生み出す関係性、また新しい人が加わることによる地域のコーホートの変化、そうしたものに注目し継続して研究・観察していくことは今後も求められていくものだと思う。

  •  新潟県の越後妻有地域は、少子高齢化が進んだ典型的な過疎地域であり、日本有数の豪雪地帯でもあります。そこで、地域活性化を目的として、現代アートのイベントである「大地の芸術祭 越後妻有トリエンナーレ」が開催されることになりました。2000年に第1回が開催され、現在も継続して行なわれています。
     越後妻有トリエンナーレは当初は公共事業として開催されました。公共事業として税金を投入する以上は、地域に与える効果が立証されなければなりません。しかし、芸術祭がどのくらい地域活性化に貢献したかを評価するということは困難だといわれます。なぜなら、このような非経済的な効果は定量的な評価が難しいということに加え、現代アートという評価の定まっていないものを地域活性化に使うということは前例がほとんどなかったからです。
     それでは、なぜ芸術祭は10年以上も継続することができたのでしょうか。この本を読めばその過程を知ることができます。
    (ラーニング・アドバイザー/芸術 AKAGI)

    ▼筑波大学附属図書館の所蔵情報はこちら
    http://www.tulips.tsukuba.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=1608816

  • 貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
    http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784766421491

  • 芸術祭三回目からリピーターです。
    中には「これはあり得ない」と感じる詐欺のようなものも存在しましたが
    芸術祭自体はとても評価出来るものだと思っています。
    けど運営サイドには第4回から不信感をずっと感じています。
    その不信を感じる事になった出来事については、こちらには登場していませんが
    思う所あって、こちらの本は興味深く読めました。
    因みに水と大地の芸術祭は二回とも見に行きましたが、私にはイマイチでした。
    いいものもあるけど「新潟市にも凄いもの沢山あるんですよ」の押しつけが煩わしい。
    アートが置かれる土地の魅力としては妻有には遥かに及ばず
    作品を巡るドライブ自体が楽しめないせいもあると思います。

  • 一度も行ってないのが残念、、、

    慶應義塾大学出版会のPR
    http://www.keio-up.co.jp/np/isbn/9784766421491/

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著者プロフィール

新潟大学経済学部准教授
1984年九州大学工学部卒業、2001年慶應義塾大学大学院経済学研究科後期博士課程単位取得退学。博士(学術)。東京都庁職員、まちづくりコンサルタントなどを経て、2001年より現職。専門はNPO論、文化経済学。
主な業績:『まちづくりNPOの理論と課題 増補改訂版-その生成とマネジメント』松香堂、2009年:『文化遺産と地域経済』同成社、2010年:『遺跡と観光』同成社、2011年:『東日本大震災の復旧・復興への提言』技報堂、2012年(共著):『都市・地域・不動産の経済分析』慶應義塾大学出版会、2013年(共著)ほか。

「2014年 『アートは地域を変えたか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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