子どもに語るアラビアンナイト

  • こぐま社
4.19
  • (15)
  • (14)
  • (8)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 218
感想 : 19
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784772190534

作品紹介・あらすじ

アリババ、シンドバード、空飛ぶ木馬、巨大な魔人…ペルシアのお妃シェヘラザードが、命がけで王さまに語った、千と一夜の物語。読んであげるなら小学低学年から/自分で読むなら小学中学年以上。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • マンガで読んだ「千夜一夜物語」がきっかけで興味を持ち借りてみた。児童書だけれど大人にも面白いと思う。
    本を開くと「アラビアンナイト地図」がある。この絵地図がかわいい。読みながら何度も地理を確認する楽しさがある。そして物語に出てくるキャラクターも載っており空想できる。
    エジプト、ペルシア、インド、カシミール、ベンガル、ビスナガル…魔法の馬や空飛ぶ絨毯に乗って旅を楽しんだ。
    またあとがきの、アラビアンナイトの成り立ち、ヨーロッパでも魅了されたこと、イスラムの信仰や中東の文化についての解説が勉強になった。
    また子どもに語る時のポイントや子どもの反応も書かれていたのも良かった。

    【気に入った物語】
    ・空飛ぶじゅうたん(三人の兄弟が王女のために珍しいものを探し求める旅物語)
    ・漁師と魔神(壺の魔神が出てくる)
    ・船乗りシンドバードの冒険(ロック鳥が怖っ!)
    ・黒檀の馬(魔法の馬に乗る王子と王女が素敵)
    ・バクダードの妖怪屋敷(夜中に魔神の声がして、富をもたらしてくれる)
    ※アッラーの信仰描写がある。あとがきによると、「イスラムでは日本のような幽霊は存在しないということになっている。ここに住み着いていたのは"ジン"という超自然の存在で、善人もいれば悪人もいる」ということだ。
    ・アリババと召使いのモルジアナに殺された四十人の盗賊(呪文"ひらけゴマ!""とじよゴマ!"が楽しい)

    • なおなおさん
      あゆみりんさん、こんにちは。
      カーリルは楽しいですよね。毎日覗いてしまいます。
      柚子シロップは、あゆみりんレシピが美味しそうなので、私はこち...
      あゆみりんさん、こんにちは。
      カーリルは楽しいですよね。毎日覗いてしまいます。
      柚子シロップは、あゆみりんレシピが美味しそうなので、私はこちらで作ってみます(^_-)-☆
      2022/11/21
    • moboyokohamaさん
      面白そうですね。
      阿刀田高さんの「 アラビアンナイトを楽しむために」を読んで、このお話はなんだか難しいというか意味不明なところが多いなと思っ...
      面白そうですね。
      阿刀田高さんの「 アラビアンナイトを楽しむために」を読んで、このお話はなんだか難しいというか意味不明なところが多いなと思っていました。
      子供の頃からイメージしていたストーリーとかけ離れている。
      子供向けのアラビアンナイトの方が物語としてよく出来ているものが多いのではないかと思います。
      2022/12/03
    • なおなおさん
      moboyokohamaさん、こちらでもこんにちは。
      コメントをありがとうございます。

      子ども向けが読みやすくていいですよね〜。
      私はマン...
      moboyokohamaさん、こちらでもこんにちは。
      コメントをありがとうございます。

      子ども向けが読みやすくていいですよね〜。
      私はマンガから知りました^^;
      別の本によると、「ファンタジー色の濃いアラビアンナイトは、児童文学の格好の題材となった。しかしエロチックな場面が溢れているので、そのままでは子どもたちに読ませるわけにはいかない。教訓的な意図を持ってリライトされた子ども向けの作品が次々と世に出ることになった」とあります。
      他の話もいつか読もうと思っております。
      2022/12/03
  • 「子どもに語る」シリーズは、聞かせるために編集されているので語り口が丁寧で聞いてわかりやすく、大人向けの描写も柔らかくなってます。
    最初にアラビアンナイトの冒頭部分である、残酷なペルシアの王に賢い后シェヘラザードが語り続けた物語集だということが書かれ、それぞれのお話には「ある晩、シェヘラザードはこんな物語を語りました…」として始まります。

    インドの三人の王子は、従姉妹の王女を愛して結婚したいと思いました。王様は、三人の王子たちに「一番珍しい宝を持ち帰った者を王女の婿にしよう」と言います。旅に出た三人お王子たちは、空飛ぶ絨毯、望んだ場所が見える望遠鏡、どんな病人でも治すリンゴを手に入れます。その頃王女は重病に罹っていましたが、急いで帰った三人の王子たちの宝で命を助けることができました。そしてお婿さん選びの勝負は弓矢を遠くまで射ることのできた者にすることになりました。
    ==大人向けの話では三人の王子の争う心もあッタはずですが、こちらでは爽やかに勝負してました。
     /『空飛ぶじゅうたん』

    漁師の網に掛かった壺の中から出てきた魔神は漁師に「お前を殺してやる!!」と凄む。なんでも「わしはソロモン王に閉じ込められた。最初は助けてくれた相手に宝をやろうと思っていたが、あまりにも長年閉じ込められてムカついてきたから今更助けたやつを殺してやることにしたんだ!」だそうな。漁師は、今日死ぬのも神様の思し召しだから仕方ないけど、やっぱりちょっとあんまりなので知恵を使って魔神の怒りを躱すことに…
    ==アラビアンナイトにおいては、生きるための漁でも一日の分量を決めていて取れなかったら飢えてもしょうがないとか、突然理不尽に死ぬことになっちゃったけどしょうがないとか、神様の思し召しをあるがままに受け入れる行き方が感じられます。そして理不尽なこともあるこの世を知恵で乗り切る者に神様は思し召しをくださるということもあります。
     /『漁師と魔神』

    いまでは大金持ちになったシンドバードが若い頃の冒険を語る。こちらに収録されているのは「クジラの島」と「ダイヤモンドの谷」の話。たしか「配偶者が死んだら一緒に埋葬される」話もあったと思うがそれは子供向けではないので入っていませんでした(苦笑)
    シンドバードの冒険譚は、荒唐無稽なほどのスケールの大きい怪物や宝に対して勇気と機転で乗り切ったぜ!という難しいことを考えずに純粋に楽しめます。
     /『船乗りシンドバードの冒険』

    これは面白かった。落語にもなっているらしい。
    背中にコブのある男を殺してしまったと勘違いした仕立て屋は、男の死体を医者の足元に置いてみる。すると男につまずいた医者は自分が殺したと勘違いして…。
     /『背中にコブのある男』

    ペルシアの王に空飛ぶ黒檀の馬が献上された。王子が乗ってみるとそのまま空に消えてゆく。王は怒って献上した男を牢に入れる。だが王子はすぐに馬を乗りこなしてベンガルの王宮に降り立った。そこにいたのは美しいお姫様。恋に落ちた二人は、結婚するためにペルシアに戻る。だが牢に入れられていた男が姫を横取りしようと…
     /『黒檀の馬』

    バクダードのカリフは、町で左目の潰れた青年に出会う。カリフは、貧しい身なりだが上品差が出ている青年に身の上を聞く。
     わたしは小さな島の王カシーブの息子のアジーブといいます。冒険好きで、王になってからも航海に出ていましたが、ある時小さな島に漂流したのです。そこには厳重に守られた地下の部屋に美し少年がいたのです。その少年は「わたしは星の定めによりカシーブの息子のアジーブに殺されるというのです。そこでここで守られることになりました」わたしは自分がそのアジーブであることを秘してこの少年と親しくなりました。しかし星のさだめは思わぬ形で…。
    ==王が旅で行方不明になっても、親しい相手と殺す殺される仲になっても、望んだ冒険で財産や五体に瑕疵を受けても、全ては星のさだめ。嘆きはするが受け入れる。
     /『星のさだめ』


    これはちょっと怖いんだがかわいい魔神だった。
    不運な強風に陥った男が、妖怪屋敷といわれるところに住んだら現れた魔神により…。
    妖怪というとその屋敷に憑いている印象だが、魔神には役割があり災いも祝福も神の御心ですね。
     /『バクダードの妖怪屋敷』

    ペルシアの王は、町の三姉妹の末娘を妃に迎える。しかし嫉妬した姉たちにより、末娘の産んだ美しい王子たちと姫は連れ去られてしまう。
    ==これは世界中に似たような話がありますね。アラビアンナイト原典にはなくヨーロッパ翻訳にあたり増えたものということで、ヨーロッパにもあるような話になったのかな。
     /『ものいう馬』

    盗賊に行きあったアリババが後をつけると盗賊たちは洞窟の前で呪文を唱えた。「開け、ゴマ!」すると岩がぽっかり開いて中には山のようなお宝が!盗賊が去った後アリババは宝をネコババする。それを知ったアリババの兄カシムは弟の真似をしようとして失敗し、盗賊に殺されてしまう。連続して宝を荒らされた盗賊は怒って洞窟荒らしに復讐を誓う。「男として命をかけて宝を奪ったやつを命をかけて探し出す。しくじったとしても仲間のために勇気と誠を捧げたことは忘れてくれるな」
    自分が狙われていることを知ったアリババは、賢い召使いモルジアナに周囲を警戒させる。
    ある日ついに盗賊たちがアリババの家を突き止めて…
    ==盗賊も「その仕事引き受けるぜ。失敗したら命で償うがても誠意は受け取ってくれ」と任侠だった(笑)
    死体を縫ったり油殺ししたりと、やはりハードな日常だなあ。
     /『アリババと、召使いのモルジアナに殺された四十人の盗賊』

    巻末の解説には読む大人に向けてアラビアン・ナイトの成り立ちや、子供への語り方が書かれます。
    アラビアンナイトをヨーロッパに紹介したのは、フランス人のガランと、イギリス人のバートンです。
    最初に紹介したガランが元にしたのは15世紀頃の写本です。ここに入っていたのは40くらいのお話で、昔話や民話を組み合わせて文学的に磨かれています。有名なアラジン、アリババ、シンドバードは3つとも他のアラブのお話を元にしたもので原典には入っていません。
    バートンがもとにしたのは、18世紀頃にはエジプト編纂されたお話集が編纂です。このころのエジプトに年の中流層が力をつけて口述の物語が文字として残されるようになったのです。こちらは千一夜まで物語が続き、大人向けの官能的なお話も入っています。
    こうなるとアラビアンナイトは自体はアラブだけでなくお話ではなく、アラブとヨーロッパの人々の合作のようになっていますね。
    ガラン版の写本には、読んできた人たちにより「この写本を移した人に神の祝福がありますように」のような書き込みがあるんだそうです。物語は知らない人でもつながりますね。
    ガランの友人のヴォルテールは「意味がないからこそ味わいがあり、ためにならないからこそ楽しめる」と称賛したんだそうです。そうそう、物語は楽しい、意味なんかふっとばすくらいの勢いに読者として乗ることのなんと楽しいことか。
    (最近の物語に求められるのって「伏線が〜」「設定が〜」「考察を〜」「意外性・斬新さ〜」「作者が読者に伝えたいこと〜」みたいなものが多い気がするのですが、あまりにもひどい設定はともかく、読者が意味を探すために見ていたら楽しめないんじゃないかな…)

    アラビアンナイトは、シェヘラザードがお話で王を夢中にさせていくのですが、実際にアラブ世界では人々が集まってお話を聞くという風習が有りました。語り手は丁度いいところで話をやめ、聞き手たちが「このあとどうなるんだ ワイワイ」とやるんだそうです。まさに連載小説・漫画とか連続ドラマですね。

    ボルヘス編「バベルの図書館」のガラン版
    https://booklog.jp/users/junsuido/archives/1/4336030448

    同じくバートン版
    https://booklog.jp/users/junsuido/archives/1/4336025703

  • 子どもの頃に見聞きした覚えのあるお話も出てきて、懐かしい気持ちになりました。
    子どもの頃に絵本で知った話もあるので、本当の長さで読むとこういう話だったのか、と発見や驚きもあって楽しかったです。
    他の本を読んだことがないから、比較は出来ませんが、古さも感じずとても読みやすかったです。
    あと、ついでな気持ちで読んだ巻末の「あとがき」と「お話について 語る人のために」がとても良かったです!
    アラビアンナイトの成り立ちが思ってたより詳しく書かれていたし、中東文化について触れています。やっぱりその国の文化を少しでも知っていると、より物語を楽しめるんだなと感じました。
    「お話について 語る人のために」では、実際に読み聞かせをした時の子どもたちの反応なども書かれていて面白かったです。

  • どうにもエグい話が多い印象があるアラビアンナイトですが、これは子供向けなので、安心して読めました。侍女のモルジアナ、賢いですね。こんな配偶者が欲しいものです。

  • 美しく知恵と勇気のある女性が多い。

  • 胎教用。読了。

  • 子どもに読み聞かせる用のアラビアンナイト。なぜ「千夜一夜物語」ともよばれているのかも理解できます。小学生低学年~高学年まで。
    大人がサラッと読むにも丁度いい。
    「シェヘラザード」
    「空飛ぶじゅうたん」
    「猟師と魔人」
    「船乗りシンドバードの冒険(クジラの島)」
    「船乗りシンドバードの冒険(ダイヤモンドの谷)」
    「背中にコブのある男」
    「黒檀の馬」
    「星のさだめ」
    「バグダードの妖怪屋敷」
    「ものいう鳥」
    読み聞かせると、1話につき15~18分くらいかかる。

  • 2015.9.19
    アラビアンナイト、千夜一夜物語の本はちゃんとしたのがなかったので、これはうれしい一冊。

  • アラビアンナイトというものが何なのか今までよくわかってなかった私。ディズニー映画の影響でアラジンの話=アラビアンナイトかと思っていました。
    どの物語も魅力的で、大人でもわくわくしてしまいます。「ものいう鳥」が好きだったかな。
    世界中にある民話や昔話って結構パターンが似ていると思う。お互いが影響を与えあっているのはもちろん、人間が面白いと感じる話ってある程度普遍的なんでしょうね。

  • 小6の読み聞かせに「背中にコブのある男」だけ朗読。9分。
    人に死体を押しつけあう、なんだか落語にあったような話。そのせいか語り口も、気の強いおかみさんが出てきたりしてなんだか落語っぽい。いっそのこと落語のつもりで読んでみてはどうか。声色を変えたり、上手下手を向き変えたり、扇子で身振り手振りを加えたり。扇子こそは使わなかったけれど身振りを加えると子どもたち、面白がってくれてました。
    にしても君島和子にしろ上橋菜穂子にしろグインにしろ、人類学者は児童文学に手を染めやすいのだろうか。西尾先生はいかに。

全19件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

国立民族学博物館副館長 人間文化研究機構国立民族学博物館教授/総合研究大学院大学文化科学研究科教授 言語人類学
最終学歴:京都大学大学院文学研究科博士課程修了
学位:博士(文学)
主要業績:「枠物語異聞—もうひとつのアラビアンナイト、ヴェツシュタイン写本試論」堀内正樹・西尾哲夫(編)『〈断〉と〈続〉の中東—非境界的世界をぐ』悠書館 2015。『ヴェニスの商人の異人論—人肉一ポンドと他者認識の民族学』みすず書房 2013。『世界史の中のアラビアンナイト』(NHKブックス)NHK出版 2011。

「2016年 『中東世界の音楽文化 うまれかわる伝統』 で使われていた紹介文から引用しています。」

西尾哲夫の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×