- Amazon.co.jp ・本 (299ページ)
- / ISBN・EAN: 9784778116620
作品紹介・あらすじ
翠を守るために、僕は生まれた-幼い頃、森岡翠の中に生まれた別人格・スイ。そのスイを残し、身体の持ち主である翠が消えた…。二人の幼馴染である笠野真優が翠に告白した数日後のことだった。それから一年。大学生になった今でも翠が帰ってくると信じて疑わない真優に、スイは苛立ちにも似たもどかしさを感じている。翠への失望と諦めから自分を選べばいいと迫るスイだけど、真優は決して頷いてはくれなくて…。
感想・レビュー・書評
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翠は、幼い頃、同居男性(父親かな)の暴力で地獄のような日々を送り、別人格スイと入れ替わりを繰り返すようになります。
母親が施設へ逃し、以降は周囲の人に大事にされています。
翠は実の母親に捨てられたと思っていますが、母親は守り切れなくて手放すしかなかったのだろうなと想像すると切ないです。
真優がカメラ好きになったエピソードが気に入りました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
二重人格の、主人格を守るための人格が残り、元の人格が消える。
そんなことってあるの⁉️っていう初めてのパターン。
でも、二重人格ってやっぱり本人はめっちゃ辛いんだよね。恋愛に至る前に、自尊とか自信とかが持てなくてもがいて。 -
実父からのDV をきっかけに、スイという別人格を作り出した翠。やさしい養父母、いつでも隣にいて自分を見守ってくれる幼なじみの真優。周りの愛情を受けながら、それでも過去の心の傷のせいで自分を肯定することができない。真優から好きだと告げられても、自分に自信が持てない翠は第二の人格のスイだけを残して忽然と姿を消してしまった。いつだって辛い出来事から翠を守ってくれた強くて賢いスイなら、養父母のことも真優のことも幸せにしてあげられるはずだ。
ただひとり残されたスイを周りは優しく受け止めてくれる。でも真優は翠が好きだという。翠が帰ってくるまでいつまででも待ち続けるという。
翠は弱いから真優から逃げ出したのに。スイの方がずっと真優を幸せにできるのに。何もかもうまくいくはずなのに。でもスイは自分は翠の偽物なのだという罪悪感から抜けだせない。
翠を想う真優に思いを寄せるスイ。不条理な一方通行。
翠とスイが自分をみつめ直して自分が自分であることを受け入れるまでの物語。
スイから翠に宛てた最後の手紙にちょっと泣いた。 -
受の中に人格が2人いる設定。そのうち一人が消えた後からの話。
主人公が後ろ向き過ぎなので容姿しか良いところが見えない。もう少し愛される理由の描写が欲しい。 -
ラストまで読んで、初めて「彼」が「誰」を愛したのかがわかる、ちょっと捻ってあるお話。
「彼」と主人公の、寂しさと暖かさが同時に漂う感慨深いラストは必見。と、物語的にはとても良かったとは思いますが、その代わりに受と攻の恋愛に的が絞り切れてない感があって、個人的にはそこがちょっと残念でした。
もしかしたら成就したかもしれない、隠された「彼」の片想いなど、萌える設定なのにあまり使われずもったいなかった点もあり。
全体的に秀作と呼べるよい作品だと思いますが、わがままを言うと変化球より直球なものを読みたかった。ちょっと物足りなかったかもしれません。