彼の愛した翠色 (ショコラ文庫)

著者 :
  • 心交社
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本棚登録 : 84
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (299ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784778116620

作品紹介・あらすじ

翠を守るために、僕は生まれた-幼い頃、森岡翠の中に生まれた別人格・スイ。そのスイを残し、身体の持ち主である翠が消えた…。二人の幼馴染である笠野真優が翠に告白した数日後のことだった。それから一年。大学生になった今でも翠が帰ってくると信じて疑わない真優に、スイは苛立ちにも似たもどかしさを感じている。翠への失望と諦めから自分を選べばいいと迫るスイだけど、真優は決して頷いてはくれなくて…。

感想・レビュー・書評

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  • 翠は、幼い頃、同居男性(父親かな)の暴力で地獄のような日々を送り、別人格スイと入れ替わりを繰り返すようになります。
    母親が施設へ逃し、以降は周囲の人に大事にされています。
    翠は実の母親に捨てられたと思っていますが、母親は守り切れなくて手放すしかなかったのだろうなと想像すると切ないです。
    真優がカメラ好きになったエピソードが気に入りました。

  • 二重人格の、主人格を守るための人格が残り、元の人格が消える。
    そんなことってあるの⁉️っていう初めてのパターン。
    でも、二重人格ってやっぱり本人はめっちゃ辛いんだよね。恋愛に至る前に、自尊とか自信とかが持てなくてもがいて。

  • 翠の中に父親からのDVから生まれた別人格・スイ。
    本来の人格のはずの翠が消えてしまい、
    残されたのはスイと、翠のことが好きな幼馴染・真優。

    消えてしまった翠の帰りを待つ真優に
    「僕にしときなよ」といってもすげなくされるスイ。
    最初は同じ人間の別人格に恋した幼馴染に
    片思いする切ない話かと思ったけど、
    どうもそこまでスイが感じる辛さが伝わってきません。

    …と思ったらそういうことでしたか!
    「僕にしときなよ」で断られるまでが愛情確認だったわけだ。
    そりゃそんなに辛くはないですね。

    最初スイに向かって「翠に帰ってきてほしい」という
    真優が無神経だな~と腹立たしく感じていたんですけど
    (人格統合される方が健全だと思うので、
    内心悲しく思っていたとしても
    私なら本人にはそんなこと言わないと思う)
    翠に呼びかけていたんだなぁと思うと納得。

    そこそこ面白く読めたんですけど、
    翠のうじうじした性格は好きになれず、
    真優にもそこまで感情移入できずサラッと読了。

    なんというか、二人とも現実感のない男なんですよね。
    ちょっと昼食取るにしても、ちまちまミニオムライスと
    5種のおかずのプレートランチ。女子か!
    男らしさが皆無。

    両想いになったら速攻挿入してたのは残念。
    ローションないならその日は挿入は我慢しなよ。

    一番ときめいたのはスイと嘉人くんのほのかな初恋。
    その話だけは自分だけで持って行ったスイの気持ちが切ない!
    その話を詳しく読みたかった!

    タイトルはスイ視点からのものだったんですね。
    スイは実のお母さんの思い出も一緒に持っていってしまった。
    本物のスイのお話を読みたかったです。

  • 随分と前に読んだものの、胸が詰まって上手く感想が書けそうになかったので、
    そのまま放置してたんですが、再読してやっぱり胸が詰まった(笑)
    結局、どうしたって上手く書けないので、消化するためにメモメモ。
    【あなたに恋はしたくない】と共通部分があるにはありますが、
    こっちの出来の方が遥かに良かったという印象。

    主人公の翠は幼少期の辛い経験から、自分の中にスイという人格を
    作り出したんですが、とある事件を境に翠の方が消えてしまい、
    スイの方が残されてしまいます。
    そんな翠のことが好きな幼馴染みの真優や、翠を優しく見守る義両親、
    精神科の橋本先生や同じ養護施設で暮らした嘉人など、
    翠を取り巻く環境は信じられないくらい優しいです。

    この手の話に、嫌な人間がひとりも存在しないというのが、なんとも
    違和感があるのですが、逆に胸糞悪くなる人間がいないので、真綿に
    くるまれたような優しい世界観を味わえます。
    内容について触れると、どこをとっても最悪なネタバレになって
    しまいそうなので……。
    文庫としては結構な分厚さに尻込みするかもしれませんが、ぜひとも
    最後まで読んで頂きたいです。

    最後のページ、最後の1行を読んだ時、ぶわっと涙が溢れました。
    この1行のために、あの長い話があったのかな、と思ったほど。
    でもそう考えると、肝心の恋愛部分の印象が薄くなってしまうので、
    凄く評価に困りました。

    個人的には真優より嘉人の方と結ばれたらよかったのに……と
    思ったりもしたり。
    BLの当て馬って魅力的な男が多いです。
    そして一番惜しいのが挿絵。
    表紙は美しいのですが、最近ありがちなカラーは綺麗だけどモノクロ残念の
    典型パターンです。挿絵なしのがスムーズに読めます。

  • 実父からのDV をきっかけに、スイという別人格を作り出した翠。やさしい養父母、いつでも隣にいて自分を見守ってくれる幼なじみの真優。周りの愛情を受けながら、それでも過去の心の傷のせいで自分を肯定することができない。真優から好きだと告げられても、自分に自信が持てない翠は第二の人格のスイだけを残して忽然と姿を消してしまった。いつだって辛い出来事から翠を守ってくれた強くて賢いスイなら、養父母のことも真優のことも幸せにしてあげられるはずだ。
    ただひとり残されたスイを周りは優しく受け止めてくれる。でも真優は翠が好きだという。翠が帰ってくるまでいつまででも待ち続けるという。
    翠は弱いから真優から逃げ出したのに。スイの方がずっと真優を幸せにできるのに。何もかもうまくいくはずなのに。でもスイは自分は翠の偽物なのだという罪悪感から抜けだせない。
    翠を想う真優に思いを寄せるスイ。不条理な一方通行。
    翠とスイが自分をみつめ直して自分が自分であることを受け入れるまでの物語。
    スイから翠に宛てた最後の手紙にちょっと泣いた。

  • 受の中に人格が2人いる設定。そのうち一人が消えた後からの話。
    主人公が後ろ向き過ぎなので容姿しか良いところが見えない。もう少し愛される理由の描写が欲しい。

  • ラストまで読んで、初めて「彼」が「誰」を愛したのかがわかる、ちょっと捻ってあるお話。
    「彼」と主人公の、寂しさと暖かさが同時に漂う感慨深いラストは必見。と、物語的にはとても良かったとは思いますが、その代わりに受と攻の恋愛に的が絞り切れてない感があって、個人的にはそこがちょっと残念でした。
    もしかしたら成就したかもしれない、隠された「彼」の片想いなど、萌える設定なのにあまり使われずもったいなかった点もあり。
    全体的に秀作と呼べるよい作品だと思いますが、わがままを言うと変化球より直球なものを読みたかった。ちょっと物足りなかったかもしれません。

  • 初読みの作家さんで、あらすじを読んで購入しました。
    多重人格の子と幼馴染みの話。
    実の父親のDV被害にあって、別の人格「スイ」を作り出してしまった翠だったけれど、ある日スイを残して翠が消えてしまった。翠“が”好きな幼馴染みの真優は、翠が戻ってくるまで待つという。
    スイはそれを聞いて「僕にすればいいのに」と云い続けていたけれど。

    詳しい感想を書くと、ネタバレになるのでそこらへんはふれないように。
    多重人格は、有名どころの「ビリーミリガン」を読んで、これは「ああ、すごいなあ。不可解な事が世界にはあるんだなあ」と理解出来ましたが、色々TVのドキュメンタリーを観ていて、これ人格じゃないんじゃ?というものもあったり。まあ、実際、人格が変わるといえども自分が作り出した物だから、過度の妄想とレべルが変わらなくても仕方ないのですよね。
    そういう認識で読んでいるので、スイが翠を大好きというのも、当たり前ですが極度の自己愛だと思うと、うーうーん。まだまだ理解が足りないようです。
    傷ついた子が皆に優しくされて立ち直るのはとてもいい話なのですが、少しだけ引っかかるのは翠の年齢が行き過ぎてること。
    これが中学生、高校生だったら、もっとすんなり入ってきた話な気がします。あ、でもそれだとエロ展開はきついですなあ。
    社会人だと更に微妙なので、矢張り大学生くらいが一番いいのですかね。

    オチはハッピーエンドなので、良いと思います。
    一番可哀想なのは、嘉人くんかも。

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