- Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
- / ISBN・EAN: 9784778318338
感想・レビュー・書評
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元首相の政治家が銃撃された事件。その背景が明るみになるにつれて俄かに注目を集めるようになった宗教2世問題について、荻上氏の調査と各分野の専門家による議論、そして当事者の声を織り交ぜながら論じる1冊。
「これを読めば宗教2世問題が全部わかる!」という1冊ではない。しかし、どのような問題があるのか、そしてそれぞれの問題に取り組む上で何が課題となってくるのかを知るには、多面的な視点でこの問題に言及する本書は最適であると考える。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「あの事件を起こしていたのが私でもおかしくはなかったな、と考えてしまって、自分を重ねてしまっていました。」p136
「2世の数だけ物語があります。(中略)それでも、いろんな人の声を聞いてみたい、と私は思っています。」p303
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宗教2世問題について、TBSラジオ「荻上チキ・ Session」の放送内容の書き起こしや当事者への独自調査、コラムをまとめた一冊。
宗教2世の実態やマインドコントロールだけでなく、ジェンダー政策介入や反LGBTQ+運動、メディアの報道の変遷など、内容は多岐に渡り読み応えあり。「何がどう問題なの?」と、とりあえず知りたい人や当事者などが手に取るにはちょうど良い内容だと思う(※「当事者の声」はフラッシュバック等への注意書きあり)。
自分は政治にも宗教にも疎いが、「過激な性教育を正します」「LGBTQは釜茹で」だのに関しては正直めまいがした……釜茹では蟹とうどんだけでいいよ。
また、カルト宗教の中には「時間=献金、正社員で働くくらいなら奉仕しなさい」という教えがあるようだ。「非正規でも無職でも奉仕したぶん衣食住きちんと与えます!生涯安心です!」ならいいけど(よくないけど)、経済的DV的なことされて、脱会したらor信仰自体がなくなったらいきなり路頭に迷うって怖いな。
第3章では宗教2世の孤立や脱会後の問題について取り上げているが、同じ宗教○世でも、信仰している宗教(伝統/新興/カルト)・家庭環境・世代・本人の宗教への捉え方などの様々な違いがあり、「宗教○世だから経験や考え方が皆同じ」という訳ではないので、“宗教2世”という名称の定義は実は難しいようだ(p266-267)。
また、宗教1世や宗教2世“未満”にも全く問題がない訳ではない、ことなどにも注意をしておく必要があると思う。
“信仰の自由”は本人が決めることだが、霊感商法や多額の献金要求、宗教虐待など“行き過ぎた”部分への調査や規制は国によってきちんとなされるべきだし、規制したから終わりではなく、宗教2世などが脱会あるいは信仰を失った場合などに受けられる救済を同時に行うこと(p152-153)、一過性の問題やタブーとして終わらせないことが今後の課題だと思う。
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コラムに関連漫画・小説・映像作品の紹介、巻末に国または民間の救済ダイアルの紹介あり。
●江川紹子「「カルト」はすぐ隣に: オウムに引き寄せられた若者たち 」(岩波ジュニア新書)
https://booklog.jp/item/1/4005008968
2019年刊、主にオウム真理教について。
● 菊池真理子「「神様」のいる家で育ちました~宗教2世な私たち~」
https://booklog.jp/item/1/4160901344
2022年刊、宗教2世当事者のエピソードを漫画化。本書コラムでも紹介。
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どこに生まれてもどのような状況下になってもなんとかなる社会。
困りごとを抱えた人が何かに騙される必要なく、支援につながる社会。
親や家族に問題があっても、子供を直接支えることも可能な社会。
社会制度の改善が必要。
とのこと。
宗教問題だけじゃなくて、困った時に助けてくれる社会を作ることが大事だと思った。
身近に宗教2世の友達がいるけど、その子は親と程よい距離をとりつつ、自分の子供には入信させないよう。はっきり聞いたわけではないし、あまりこのことについては話したくない様子。
ただ宗教の自由がある。
私は盆暮もクリスマスも灌仏会も関係なく色々なお祝いやらしちゃうけど、宗教の人だからってレッテル貼ってはいけないな!と再確認した。
決めつけない、話をきく。 -
さまざまな当事者の声に共感しました。
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これはかなり手強い問題。子供の頃は進行は保留、大人になってから自らの意思で信仰するかどうか選ぶのがベストだと思うけど、親からしたら子供を幸せにしたい一心で入信させたりするんだろうしな…。でもやはり、信仰というような心の中の動きの問題は、自由でないといけない。
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「荻上チキ・Session」ラジオを聴いていて、特集「シリーズ・宗教2世」に興味を持ち読んだ本。
親が信者でその両親のもとに産まれた=宗教2世。
カルト2世、ではなく宗教2世なのは、もともと存在している古くからの宗教でも親の信仰と子の信仰は違うこともあるため。
この本は、チキラボでアンケートをとり、宗教2世の生の声を載せてあるところが他の本とは違うところだと思う。外から見ただけでは理解できない、壮絶な事実がアンケートから見え隠れする。
自分の家はよそと違う、おかしい、と気づき、飛び出せた人はまだましなのだ。
飛び出してもその後、フラッシュバックに悩まされたり。何度も家まで来られ勧誘されたり。
子どもに親の宗教を強制されない権利があることを、義務教育で教えてほしいと、感じた。
ラジオで聴くチキさんの優しくはっきりした意見が見えるような本だった。
本書は、信仰を持つ親や、宗教関係者にも届けたい。あなたの「教え」が、誰かを踏みつけ、苦しめることになっていやしないか、どうか見つめ直してほしい
(p.337、荻上)
世界は、どの「教え」よりも広い。 あなたは、「その場所」を離れてでも、幸福に生きていく権利がある。
荻上チキ(本書「あとがき」より)
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まさに今、押さえておくべきトピックの筆頭だし、それを編んでいるのが荻上さんとなると、これはもう読むしかないってことで。ラジオの放送内容を急遽まとめたものみたいだけど、とってつけた感とかは無くて、それぞれのセッション毎に気付きがある。だけど目下、話題の中心が防衛費とかそっち方向にいきがちな気もする。不祥事を不祥事で塗りつぶす常套手段、いい加減にしないと。