恋愛の社会学: 「遊び」とロマンティック・ラブの変容 (青弓社ライブラリー 52)

著者 :
  • 青弓社
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  • Amazon.co.jp ・本 (243ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784787232847

作品紹介・あらすじ

アプローチの仕方や別れの理由などの視点から、結婚や別れの決断を先送りし曖昧な関係性を享受して遊戯的な恋愛に自閉する若者たちを浮き彫りにする。恋愛=結婚という規範を支えたロマンティック・ラブの変容を見定め、恋愛を追求する欲望の臨界点を探る。

感想・レビュー・書評

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    https://kinoden.kinokuniya.co.jp/momoyama1040/bookdetail/p/KP00036090

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  •  社会学の見地から恋愛を様々なフェーズで分析した良書である。
     この本で触れられているのだが、社会学では従来、恋愛そのものを扱った研究が少なかったようで、家族や結婚、引いてはそれらで構成される社会を分析するための一つの材料として扱われているに過ぎなかったようだ。
     しかし、この本は恋愛そのものを対象として分析している。非常にユニークであり、内実も伴ったものであった。
     先行研究を分析する論の運びも慎重であり、実に冷静に話を進めている。学術書に必要かはわかりかねるが、文章も上手い。

     指摘すべきところは二点。
     一つは、この研究そのものが著者の修士論文をベースにしていて、一部の統計資料が古い点である。
     90年代初頭の統計はすでに二十年が過ぎていて、ここにギャップは存在するはずだ。
     この本自体も2008年の発刊であるし、そこはアップデートしてもらいたかった。元となる統計そのものが取られてないのかも知れないが。

     もう一点は別れの章での分析について。これは私見であるが、一つ述べておきたい。
     別れの理由について女性は「結婚」を理由にする傾向が見られ、そこに著者は社会的な解釈を行っている。しかし、個人的にはより生物的な理由が強いのではないかと思うのだ。
     社会が変化し、医療技術が進展したと言っても、変わらず女性には「妊娠の適齢期」が存在する。
     結婚=出産というのは短絡的な発想であるが、しかし、結婚と出産の関係性は無視しがたいほどに強固だ。
     言葉は悪いが、この明らかな「消費期限」に対し、自覚的な女性も少なからず存在するはずだ。
     結婚そのものは晩婚でも良いだろう。しかし、高齢出産は大きなリスクを背負わざるを得ない。
     そのことへの言及はあって然るべきと思ったのだが、全く触れられなかったので少し驚かされた。

     とはいえ、良書である。最後の社会学的見地から論を整理する章は、それまでとは毛色が違ったが本当に読み応えがあった。
     男女のどちらに対しても与することなく論を人間論でまとめたのも非常によかった。普遍性のある論議である。
     図書館で借りた本だが、これは手元に置きたいし、各種引いていた文献にも当たってみたい。

  • 大学生へのアンケート、雑誌等の言説から70年代と現代の若者の「恋愛意識」を抽出。さまざまな社会理論によりそれら意識を分析する。
    結構おもしろいかった。
    でも現代における「恋愛」と「結婚」のあいまいで矛盾しそうで矛盾させないあいまいなつながりをもっと考察してほしかった~。

    「恋愛てなに?」の根本的な問には答えてくれません。

  • ふーん、という感じ。恋愛と結婚の関係は確かにと思うことも。本書出版は2008年。その後、草食系男子etc.の登場でまた新たな分析が必要。

  • 若者の恋愛をさまざまな観点から広く分析。恋愛の起源とされる中世ヨーロッパの騎士道的恋愛から現代日本の女性誌ananの記事まで、「恋愛」をキーワードにあらゆる分野を横断してその輪郭を描き出す。

    そして物語記号論に則ってマスメディアの断片的情報をまとめ、現代的恋愛言説を提示し、その特徴をギデンズやベックの再帰的近代の議論、バウマンのポストモダンの議論、バタイユの普遍経済論等からの考察を加え学問っぽくまとめられている。

    いやぁ面白かった。
    物心ついた時から少女マンガにふれて育ち、中学では恋愛もののドラマや映画に夢中になり、雑誌のラブ特集を真剣に読み込んだようなしょっぱい青春時代をおくった私たちの世代にはもう思い当たる節ばかりやと思う。
    マスメディアの力って本当に大きいな、と痛感した。


    耳の痛い記述を引用しておく。

    「現実的には、選択肢の数には格差があり、多くの選択肢を選べる人と選べない人がいる。にもかかわらず、多くの恋愛物語が流布し、希望する選択肢はますます登場し、選びたい衝動だけは強くなっていくのである。
    /すべての人が「恋愛という市場」に参加できるのかどうかと言えば、実際上できないこともある。「モテない男」の議論はそれを教えてくれる。だが、シノプティコンの社会を考えれば、恋愛弱者にとって「目をそらす場所さえない」。選びたい衝動をあおられるという意味では、市場に参加できなくても、参加するように要請されているとは言えるだろう。
    (略)
    /ウインドーショッピングの世界では、マジョリティ(もしくは恋愛強者)の論理がまかり通っており、マイノリティ(もしくは恋愛弱者)はそこに参入しづらいにもかかわらず、欲望はあおられ続ける。同時に、マイノリティであっても、その期待を完全に消せない限りは、現代的恋愛言説にとらわれてしまうとも言える。」

    恋愛は一大エンターテイメントとして消費対象になっている。
    勉強になりました。

  • ロマンチックラブイデオロギーは崩壊してると思う。だって恋人=結婚相手って考えてり人が少ないから婚活がブームになってるんだと思う。

  • 口説き文句の歴史社会学、やられちゃったなぁ。言説分析のテキストとしても使えそう。学生興味持つだろうし。

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著者プロフィール

関西大学総合情報学部教授。専門は現代文化論。

「2019年 『美容整形と化粧の社会学 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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