文庫 女子高生コンクリート詰め殺人事件 (草思社文庫 さ 2-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794218186

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  • 昭和63年11月25日夜、アルバイト先から帰宅途中に突然連れ去られた女子高生は、その後長期間にわたる監禁生活を強いられ、凄まじい暴行の末に命を絶たれた。
    遺体はコンクリート詰めにされ捨てられた。
    犯人は4人の少年。
    監禁生活の最中に10名を超える人間が暴行に加わっていたとされる。
    こんな悲惨な結末になる前にどうにか出来なかったのか。
    純粋な疑問がわいてくる。
    監禁されていた場所は人里離れた廃墟などではない。
    住宅地に建つ一般住宅である。
    しかも、犯人である少年の両親も同居していた。
    にも係わらず、誰にも救いだされることなく女子高生は命を奪われた。
    少年犯罪が起きたとき、必ず言われるのは育ってきた家庭の環境である。
    両親の育て方が悪かったのでは?とメディアは騒ぎたてる。
    すべての少年犯罪が親のせいにされたら堪ったものではないだろう。
    けれどこの事件の場合はどうなのか?
    裁判ではいろいろと理由をつけていたようだけれど、結局のところ、この両親は息子の暴力が怖くて踏み込めなかったということだと思う。
    子どもの生活のすべてを親が把握しているはずがない。
    それはあたり前のことだし、格別珍しいことでもないだろう。
    しかし、同じ家の中に長期にわたって監禁されていたことに気づかないはずがない。
    何らかの不自然さ、違和感を感じていたはずだ。
    それでも彼らは見て見ないふりをした。
    殺害までは予想出来なかっただろうが、不穏な空気に反応して行動していれば・・・と思う。
    この事件でサブリーダー格だった少年は、出所後ふたたび事件を起こし監禁致傷罪で逮捕されている。
    冒頭に書いた裁判官の言葉は、彼には少しも届いていなかったようだ。
    何しろ、「女子高生コンクリート詰め事件」を一種のハクのようにひけらかしていたと言うのだから。
    少年法が厳罰化するひとつのきっかけになった事件である。
    家に帰るために自転車をこいでいたひとりの女子高生。
    退屈していた少年たちの目に留まったことが彼女の運命を変えてしまった。
    長く辛い時間の果てに待っていたのは無惨な死。
    やりきれない。こんなことが許されていいのか・・・と思う。
    現実には4人ともすでに出所して社会復帰をしている。
    もしかしたら家庭を持って親となっているかもしれない。
    死んだ者の時間は永久に動くことはない。
    けれど、犯人たちの時間はいまこのときも時を刻んでいる。
    「罪を憎んで人を憎まず」ということわざがある。
    刑に服したことで罪は償ったのだから、という人もいるだろう。
    どうか4人には彼女の死を無駄にせずに懸命に毎日を過ごしてほしい、と思う。
    そうでなければ、無念の死を遂げた彼女があまりにも浮かばれない。

  • 978-4-7942-1818-6 351p 2011・4・25 1刷

  • すごく加害者寄りに書かれてる印象。被害者の視点がまったくないからなんだろうけど(それはこの本の主題ではないからなんだろうけれど)。加害者たちが愛情に満たされない幼少期を送りその結果がこの事件につながる、親や学校や問題はそこにあったんじゃないか、実際に事件を起こした当事者たちは実はかわいそうな子たちなんだよ、いろいろと不幸な偶然が重なった結果がこの事件なんだよ、みたいな印象で、「え?」と思ってしまう。これじゃあ被害者やその遺族はどう気持ちの折り合いをつければいいんだろう。

  • あくまで、この事件の加害者の親子関係、教育問題に絞られた本。加害者の本質に迫るには、視点が限られていると感じられる。ましてや事件の全貌など扱うものでもないので、被害者側遺族・関係者へのインタビューは一切でてこない。

    作者があとがきで言うように「(判決についての意見を求められても)一年間にわたって裁判を傍聴しながら、その間、量刑に関してはなんの関心もなかったからです。もっぱら考えていたのは、今、われわれ人間が住む世界にどんな風景が広がっているのか、ということでした」と、今後の社会の行く末を嘆くような視点で全編書かれており、ちょっと落胆(量刑をどうでもいいと思っている人の本だと知っていたら読まなかったよ)。やっぱりあとがきは先にチェックすべきかな。

    ただ、親が負うべき覚悟、(その時には)通じない親子間の思い、検察・弁護人の偏った質問、希望を見出そうとする筆者の加害者にやや甘めの筆致。。。など、「自分の見たいようにしか見ていない」ということについて、我が身を振り返って考えさせられる本ではあった。親子関係も重要だし。

  • 女子高生コンクリート詰め殺人事件の裁判傍聴から、少年4人の生い立ちや家庭環境などを書いた本。
    さらっと読めるけど内容はとても重い。
    環境に焦点を当てていて、事実関係を必要以上に強調していなくてよいと思う。

  • 事件当時はまだ小学生で、リアルタイムには認識がない。当時は埼玉で起きていた幼女連続誘拐殺人事件のほうがインパクトがあった。社会人になり、ネットでこの事件の事を初めて見た時は、あまりの衝撃的な内容に目を奪われ言葉を失った事を覚えている。その後、主犯格の一人が逮捕監禁暴行事件を起こしたり、某芸能人が関係者なのでは?といった風評が流れる度にクローズアップされる事件である。・・・ということもあり、タイトルを見た瞬間に手にとってしまっていた作品。

    このノンフィクションは、公判時の発言をベースとして主犯である4名の少年の、事件に至るまでの人間形成・環境や、道を踏み外してしまった要因について触れている。

  • 借りて読んだ。

    東京都足立区綾瀬で、1988年11月から1989年1月の間に起きた、
    「女子高生コンクリート詰め殺人事件」
    について綴ったノンフィクション。


    事件を起こした元少年たちを擁護する気はさらさらないが、

    ・この事件はごく普通の一般家庭でも起こりうる。
    ・何気ないきっかけから、とんでもない事態に発展する。

    ということを学ばされるし、釘をさしている。


    見聞を広めるためならばいいが、あまりおすすめできない。
    何だかどんより、暗い気持ちにさせられた。


    子への愛に、けっして手を抜くな。

    もっともだ。

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