文庫 銃・病原菌・鉄 (下) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫 ダ 1-2)

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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794218797

感想・レビュー・書評

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  • 中世以降世界制覇したのが中国でなかった理由が、西欧と違い半島や起伏が少ない地理的な理由と、昔から全土が統一されていた為という考察が面白かった

    無理に香港統一しようする今の中国は大事な多様性を自ら手放そうとしている…?

  • GUNS, GERMS, AND STEEL: The Fates of Human Societies
    http://www.soshisha.com/book_search/detail/1_1006.html

  • 下巻は上巻に比べて、より地域ごとの文明発展の特色にフォーカスしている。とにかく固有名詞が無数に出てくるので、読むのになかなか頭を使います。

    個人的に好きな部分↓↓↓
    ・どんなに偉大な発明も誰かのパクり
    ・発明は必要の母
    ・オーストラリアとニューギニアの文明発展の違い
    ・言葉(文字)の発展を追うことで、各人種の移動の様相が推定できる 
    ・アフリカには黒人以外の人種もいた

  • 【まとめ】現代の世界が、どのようにして今のような姿になったかがよく理解できた。偶然が及ぼした影響ももちろん大きかっただろうが、緯度と地形の影響は絶大であることが納得できた。
    【私なりの解釈】「文化の伝播と定着の可否を左右するメカニズム」として抽象的にとらえることで、人々や組織を変えるための戦略を練る大きな助けとなった。このような学びが得られたのは想定外の悦びだった

  • ジャレド・ダイアモンド(米国・1937年~)は、生物学者、地理学者、進化生物学者、更には歴史学者。現・カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)教授。その専門的かつ学際的な研究から、二つの脳の持ち主とも、三つの才能を重ねる人とも言われる。
    本書は、1997年に原書が出版され、1998年の ピューリッツァー賞(一般ノンフィクション部門)を受賞し、著者の名前を一躍世界的に有名にした。日本でも、2000年に出版され(2012年文庫化)、朝日新聞「ゼロ年代の50冊」1位に選ばれるなどした。
    本書は、著者が33年間に亘りフィールドワークを行ってきたニューギニアで、1970年代のある夏に現地の有力者から「なぜヨーロッパ人がニューギニア人を征服し、ニューギニア人がヨーロッパ人を征服することにならなかったのか?」と尋ねられ(そのときには答えられなかった)、その後30年の研究に基づく1つの答えとして書かれたものである。
    そして、著者による結論は次のようになる。「歴史は、異なる人びとによって異なる経緯をたどったが、それは、人びとのおかれた環境の差異によるものであって、人びとの生物学的な差異によるものではない」
    【以下、下巻について】
    論旨は概ね以下である。
    ◆文字については、それを独自に作り出した社会も、早いうちに取り入れた社会も、納税の記録や国王の布告を表す必要性がある複雑で集権化された社会であり、また、文字の読み書きを専門とする官吏を養う余剰食糧を持ち得る社会であった。
    ◆技術を発達させた社会も、農耕による食糧生産が可能になり、余剰食糧の蓄積が非生産者階級の専門職を養うゆとりを生み出した社会である。基本的には、人口が多く、競合する社会の多い地域において、技術は最も早く発達する。
    ◆農業生産性が高い集団のみが、多数の市民を支えることができ、ひいては国家を形成することができた。
    ◆考察すべき今後の課題としては、同じユーラシア大陸の中で、なぜ、肥沃三日月地帯や中国ではなく、ヨーロッパが主導権を握るようになったのか、がある。最初の一歩を最も早く踏み出した肥沃三日月地帯がその圧倒的なリードを失った理由は、古代において森林に覆われていた同地域が、その後の気候変動により砂漠地帯や灌木地帯に変わってしまったことである。中国については、地理的障壁が少ないという特性から古代から政治的統一性が高く、当時の絶対的支配者が(たまたま)海外への大航海を禁じ、それが徹底されたことが原因である。それに対し、ヨーロッパは地理的障壁が多く、政治的に分裂していたために、小国家が競い合い、その延長で大航海を行ったことが、結果的に覇権を握る要因となった。
    ◆歴史研究は、実験的に操作して再現試験を行うことができず、構成要素が非常に多岐にわたる複雑な分野であり、個々がユニークであるために、普遍的な法則を導くことが困難な分野である。それでも、人間科学としての歴史研究が、今後さらに科学的行われるであろうし、何が現代社会を形作り、何が未来を形作るかを教えてくれるという有益な成果をもたらしてくれるだろう。
    本作品における主たる研究・分析の結果は、上巻を読めば概ね把握することができるが、元来の生物学者である著者がなぜ歴史研究に傾倒し、それによって何を明らかにしようとしているのかはエピローグで語られている。
    出版から20余年を経て、主な主張は既に何らかの形で耳にしているとはいえ、一度は直に触れておきたい大著である。
    (2020年2月了)

  • かなり長くて、メモを取りながらの読書は相当の時間を要したけど、とても勉強になった。

  • 上巻は人類文明発展の地域的な偏りが起こった理由を説明。下巻ではその偏りの具体的な事実を大陸ごとに解説する。ユーラシア大陸に比べて、南北アメリカやアフリカ、オーストラリアはなぜ文明が発展しなかったのか。

    農業や産業、文字など文明は人の移動とともに伝達し、試行錯誤されながら発展する。が、海や大河、山脈、砂漠などがあると、人の移動が止まり、文明は発達しなくなるどころか、そこの住民が滅亡してしまうことがある。著者は、マダガスカル島やタスマニア島など大陸から取り残された島民の歴史を研究して、その結論にたどり着く。

    結果、人類の移動に都合がよく、しかも東西に長いために気候の違いが少ないユーラシア大陸で人類の進化はリードする。では、なぜ中国ではなく、ヨーロッパなのか。この説明が急に俗っぽくなって、納得できないのだが。

    何はともあれ、本書は実験のできない歴史学において様々な事実を「実験」として比較、検証した壮大な人類進化論。

  • 下巻は文字と人類の関わりや、各地域論など話題が現代に近くなってくる。

    私は、こういう世界全体を相手にしている本は、その中での日本の位置づけがどうしても気になるのだが、戦国時代に渡来してきた銃を、江戸時代に作らなくなってしまったことが「せっかくの技術を捨ててしまった例」として挙がっているのがとても印象的だった。この本の中で「これはよく知られていること」として書かれているのがまた自分には新鮮で、果たして自分は何を勉強してきたのだろう?と思ってしまった。鉄砲伝来は1543年(以後予算なく…)と覚えていたのを思い出し、そういえばその後の歴史でしばらく鉄砲は出てこないんだ!、といろいろ思いを巡らす。

    論点を網羅するためか、オーストラリア近辺、アフリカ、中国にまで考察が及ぶ。論点が広すぎて個別に見るとひょっとすると突っ込みどころがあるのかも?と思っていたが、そういう読み方は野暮というもんなんだろう、と思う。

    「知」の在り方のようなものも自身よく考えることだ。各カテゴリへ分割された諸学問を精緻に掘り下げていく手法も大事なのだと思うけれど、広い視点というのも必要なのだろうと思う。ある精緻な分析が世界全体のことを結局語ってしまっているような書物(なんとなく『資本論』とか?)もあるけれど、そもそもの視点の広さ、というのも必要に思われる。そしてお互いを補完しあうような関係になればいいのだという気がする。

    これはもっと現実世界とか実務レべルでも思うことである。ゼネラリストとスペシャリスト。どっちがいいとか言うわけではなくて、お互いに補完しあえればいいのではないか。

    「あいつがこっちをやっているから、私はこっちをやろう」
    「こっちは私がやっておくから」
    「あれはあいつがやっているから任せよう」

  • ヨーロッパ大陸がひと足先に他の大陸よりも有利な発展を遂げたことは議論された。「ではなぜ同じユーラシア大陸にある中国ではなかったのか」という疑問について、エピローグでごく簡単にまとめている。こちらの方が新たな知見が得られた気がしたので、個人的にはエピローグが1番良かった。

    また、本書のタイトルは『銃・病原菌・鉄』とあるが、ほとんどが病原菌と食傷生産について書かれており、銃と鉄についてはそれほど触れられていない。しかし口当たりの良さや覚えやすさを考えると、良いタイトルをつけたなと感心する。

  • なぜ、同じアフリカに起源をもちながら、ヨーロッパ人は多くのものを持ち、それ以外のものたちは持っていないのか。

    そこに人種的な優劣はなく、ただ食物生産性に優れた地域に住んでいて、それゆえに集権国家が誕生した。文字や文化が発展し、疫病に対する抗体をもつことができ、銃火器を発達させることができた。

    つねに人は、その時々の利益を考えて行動するため、日本の戦国時代に伝来してきた銃は、島国ゆえの文化により衰退して失われ、黒船来航によってその選択は不利益となった。

    中国の強すぎる中央集権国家にも同じことがいえる。
    ヨーロッパ諸国は周りに小国が乱立し、それゆえに互いを牽制し合って技術を発達させていった。
    そういった、地理的要因、環境的要因に恵まれていた。

    未来は不確実性に満ちている。江戸幕府を開いた徳川家康が、250年後に黒船来るから銃火器の技術残しておこうよ、とは言わなかったように。
    それを考えれば、ある特定の人種だけ先見性に優れているというのも不思議な話なので、本書を読んで大いに納得した。

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著者プロフィール

1937年生まれ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校。専門は進化生物学、生理学、生物地理学。1961年にケンブリッジ大学でPh.D.取得。著書に『銃・病原菌・鉄:一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎』でピュリッツァー賞。『文明崩壊:滅亡と存続の命運をわけるもの』(以上、草思社)など著書多数。

「2018年 『歴史は実験できるのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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