「世界最速の男」をとらえろ!: 進化する「スポーツ計時」の驚くべき世界

著者 :
  • 草思社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794219893

作品紹介・あらすじ

オリンピック、世界陸上など世界最高峰のスポーツ競技における計時
の世界は苛烈だ。1000 分の1 秒どころか1 万分の1 秒、数
十万分の1 秒まで計測できる技術は、スポーツの世界をどう
変えてきたか。セイコー社出身の「時の研究家」が、自らの
体験をまじえつつ驚くべき「スポーツ計時」の進化と最先端
の世界を紹介!

感想・レビュー・書評

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  • 史上最速の男といえば、ウサイン・ボルトです。彼は2009年には9.58秒という異次元の記録を打ち立てました。
    何がこの記録を可能にしたのでしょうか?彼の才能と用具の発展は大きな要因でしょう。しかしここで忘れてはならないのが、正確な計測技術なしにこの偉大なタイムは存在しえないということです。
    本書は、スポーツの発展と歴史を計時する側の視点からとらえたユニークな一冊です。目視によって計測を行っていた時代から電子化された現代までの技術の発展と、それにまつわる興味深いエピソードを知ることができます。
    例えば、かつて計測機器として使われていたストップウォッチはもともと医療機器として発明されたそうです。
    本書を読むことで新たな視点でオリンピック種目を楽しむことができるかもしれません。
    (数理計算科学系 M1)

  • 平成28年6月の特集「時間に関する本」

  • 請求記号:780/Od 図書ID:10036324

  •  2020年のオリンピックは東京に決定した。オリンピックでどんなドラマが生まれるのだろうか。まだ先だが、楽しみだ。

     著者も指摘しているが「タイム・イズ・マネー(時は金なり)」が当てはまる時代になっている。その例として、カール・ルイス選手が挙げられている。1984年のロサンゼルスオリンピック及び1988年のソウルオリンピック、そして世界陸上大会で数多くのメダルをお悪徳している。それに比例して、年収もアップしている。

     スポーツの世界に金なんてと批判はある。しかし、当事者である選手の側からすれば、一生できる仕事ではないので稼げるときに稼いでおこうと思うのももっともだ。まさか80歳になって100メートル短距離で9秒台を狙って優勝して、契約している企業から年俸をがっぽりいただきなんて思いもつかないから。

     今でこそセイコーは、多くの大会で使用されているが、1964年の東京オリンピック以前は、スイス製時計が主流だった。セイコーの社長、服部正次(しょうじ)が、「スイスに追いつけ、追い越せ」という旗印を掲げ、品質と技術力アップに励み、アンテナを張って外の情報を手に入れて、よいものを取り入れていったことが今日のセイコーを生む原動力になったとある。
     
     オリンピックなどの競技大会に欠かせないのが、計時員だ。著者は、どんな人が向いているのかセイコーの人に聞いたそうだ。「やはり協議に関心のある人がいいのですか」と聞いたところ、反対に競技や選手に関心のない人の方がいいと言われた。お目当ての選手が近くに現れて「萌えー」になってのぼせたり、3度の飯よりも好きな競技を担当して熱を入れて肝心のタイムを測ることがおろそかになっては話にならない。

     時間をめぐるドラマはこれからも尽きることはない。人類が生存している限り、時を刻み続け、0.01秒単位を争う競技が無くなることはないのだから。

  • ベルリンマラソンで世界記録が更新された。スポーツにおける計時の世界の歴史、進歩、苦労などを語るこの本はタイムリーでおもしろい。陸上ばかりではなく、水泳など他の競技での話や、計時係の苦労や、オフィシャルとしての出費などの話も。

  • 副題”進化する「スポーツ計時」の驚くべき世界”にあるように、記録の計時のお話。SEIKO(服部時計店)社員からライターになった著者の最新作(2013.7.13刊)。2020東京五輪開催が決まって、まさにタイムリー!? 

    1964の東京五輪でのSEIKOの挑戦のクダリはもちろん熱く語られており、「科学のオリンピック」を標榜した前回五輪に対し、Discover Tomorrowの2020でSEIKOはどんなチャレンジをするのかと思いきや、2020年までの五輪オフィシャルタイマーはスイスタイミング社(スウォッチグループ)が権利を獲得してるのだとか。そもそも五輪規模のオフィシャルタイマーを担えるのは、今やそことSEIKOの二社だけ。なんて業界情報も面白い。

    なにより人類の記録の更新と計時技術の発達が絡み合って、競技ルール改正がなされたり、走法にも影響しあうなど、相い織りなすドラマがなんとも興味深い。後半、現場の苦労話など話が横に逸れる感があるが、100m走の歴史あり、水泳、冬季雪上競技の計時にも話は及び、各競技のエンターテイメント性を高めるための、これからのスポーツ計時のあり方までを語る、専門家ならではの見識に富んだ記述は、読み応えありだった。

  • 冒頭、100m走の記録の歴史は面白い。時計が無かった時代、時計があってもストップウォッチがいい加減だった時代、手動計測の時代、電子機器で100万分の1秒まで測れる現代。
    手動計測の時代、選手一人につき3名の計測員が付きゴール付近に群がり集まる図は興味深い。東京オリンピックから電子計測が始まったというから、私が見てきたオリンピックは電子機器がどんどん発展していった時期に重なるんだね。
    SEIKOが公認時計となった東京オリンピックの話がこの本の白眉。
    苦労話とともに、いかに革新的であったかが描かれる。
    後半は色んな蘊蓄話になってしまい、本題からは横道に逸れた感がある。
    SEIKOの人が書いているからSEIKOの自慢話になってしまうのは、しょうがない。でも鼻につくほどでは無かったかな。「あとがき」の運動会屋さんの話が自虐ネタっぽくて楽しい。蘊蓄話が好きな人には面白いよ!

  • 時の研究家を名乗る織田一朗氏による、「スポーツ計時」の世界についての裏話的な内容が書かれています。
    スポーツ計時の歴史から、五輪をはじめとするスポーツイベントを支える裏方の話まで、話題が豊富なので、蘊蓄好きにはたまらない本かも知れません。

    しかし、いくつか興味深い話もあるのですが、SEIKOをアピールし過ぎている点が気になります。東京オリンピックを始めとするセイコーの貢献は誰もが認めるところでもあるので、ここまでSEIKOの素晴らしさを言わなくても良いと思います。私自身30年前以上に高校の研修旅行で諏訪精工舎を見学して、その技術力の高さに目を見張った事を今でも鮮明に覚えています。

    最終章で陸上競技のフライング基準が変わるかもしれないという件が一番面白かったと思います。計測技術と人間の順応性とのせめぎ合いが数十ミリ秒の世界で繰り広げられているというところに興味を引かれました。

    今回紹介されている内容は、計測地点が決まっているものが多かったのですが、今後の発展としてはもっとアウトフィールドの競技をどう測定していくかになるのではないでしょうか。例えばトレイルランニングや、海洋レースなどの世界ではGPSを使った追跡がレースのエンターテインメント性を向上させています。最近ブームの市民マラソンでも、全員が電子チップを付けて走っているわけですから、そのビッグデーターをもっとリアルタイムに、もっとビジュアルに表現できたら面白いと思いました。

    この本は、FMヨコハマのTHE BREEZEの中で紹介されていて面白いなと思って手に取ってみました。織田氏は他にも面白うそうな本を書いているので、読んでみようかと思います。

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著者プロフィール

時の研究家。日本時間学会理事。1947 年生まれ。1971 年慶應義塾大学卒後、(株)服部時計店(現セイコー)に入社し時計の営業・販売企画・宣伝・広報などを担当。著書に『時計の針はなぜ右回りなのか?』(草思社文庫)、『あなたの人生の残り時間は?』(草思社)、『日本人はいつから<せっかち>になったか』(PHP新書)、『「時」の国際バトル』(文春新書)、『歴史の陰に 時計あり』(グリーンアロー出版社)、『時と時計の雑学事典』(ワールドフォトプレス)など。

「2013年 『「世界最速の男」をとらえろ!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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