「世界最速の男」をとらえろ!: 進化する「スポーツ計時」の驚くべき世界

著者 :
  • 草思社
3.58
  • (2)
  • (5)
  • (4)
  • (0)
  • (1)
本棚登録 : 40
感想 : 10
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794219893

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  2020年のオリンピックは東京に決定した。オリンピックでどんなドラマが生まれるのだろうか。まだ先だが、楽しみだ。

     著者も指摘しているが「タイム・イズ・マネー(時は金なり)」が当てはまる時代になっている。その例として、カール・ルイス選手が挙げられている。1984年のロサンゼルスオリンピック及び1988年のソウルオリンピック、そして世界陸上大会で数多くのメダルをお悪徳している。それに比例して、年収もアップしている。

     スポーツの世界に金なんてと批判はある。しかし、当事者である選手の側からすれば、一生できる仕事ではないので稼げるときに稼いでおこうと思うのももっともだ。まさか80歳になって100メートル短距離で9秒台を狙って優勝して、契約している企業から年俸をがっぽりいただきなんて思いもつかないから。

     今でこそセイコーは、多くの大会で使用されているが、1964年の東京オリンピック以前は、スイス製時計が主流だった。セイコーの社長、服部正次(しょうじ)が、「スイスに追いつけ、追い越せ」という旗印を掲げ、品質と技術力アップに励み、アンテナを張って外の情報を手に入れて、よいものを取り入れていったことが今日のセイコーを生む原動力になったとある。
     
     オリンピックなどの競技大会に欠かせないのが、計時員だ。著者は、どんな人が向いているのかセイコーの人に聞いたそうだ。「やはり協議に関心のある人がいいのですか」と聞いたところ、反対に競技や選手に関心のない人の方がいいと言われた。お目当ての選手が近くに現れて「萌えー」になってのぼせたり、3度の飯よりも好きな競技を担当して熱を入れて肝心のタイムを測ることがおろそかになっては話にならない。

     時間をめぐるドラマはこれからも尽きることはない。人類が生存している限り、時を刻み続け、0.01秒単位を争う競技が無くなることはないのだから。

  • ベルリンマラソンで世界記録が更新された。スポーツにおける計時の世界の歴史、進歩、苦労などを語るこの本はタイムリーでおもしろい。陸上ばかりではなく、水泳など他の競技での話や、計時係の苦労や、オフィシャルとしての出費などの話も。

  • 副題”進化する「スポーツ計時」の驚くべき世界”にあるように、記録の計時のお話。SEIKO(服部時計店)社員からライターになった著者の最新作(2013.7.13刊)。2020東京五輪開催が決まって、まさにタイムリー!? 

    1964の東京五輪でのSEIKOの挑戦のクダリはもちろん熱く語られており、「科学のオリンピック」を標榜した前回五輪に対し、Discover Tomorrowの2020でSEIKOはどんなチャレンジをするのかと思いきや、2020年までの五輪オフィシャルタイマーはスイスタイミング社(スウォッチグループ)が権利を獲得してるのだとか。そもそも五輪規模のオフィシャルタイマーを担えるのは、今やそことSEIKOの二社だけ。なんて業界情報も面白い。

    なにより人類の記録の更新と計時技術の発達が絡み合って、競技ルール改正がなされたり、走法にも影響しあうなど、相い織りなすドラマがなんとも興味深い。後半、現場の苦労話など話が横に逸れる感があるが、100m走の歴史あり、水泳、冬季雪上競技の計時にも話は及び、各競技のエンターテイメント性を高めるための、これからのスポーツ計時のあり方までを語る、専門家ならではの見識に富んだ記述は、読み応えありだった。

著者プロフィール

時の研究家。日本時間学会理事。1947 年生まれ。1971 年慶應義塾大学卒後、(株)服部時計店(現セイコー)に入社し時計の営業・販売企画・宣伝・広報などを担当。著書に『時計の針はなぜ右回りなのか?』(草思社文庫)、『あなたの人生の残り時間は?』(草思社)、『日本人はいつから<せっかち>になったか』(PHP新書)、『「時」の国際バトル』(文春新書)、『歴史の陰に 時計あり』(グリーンアロー出版社)、『時と時計の雑学事典』(ワールドフォトプレス)など。

「2013年 『「世界最速の男」をとらえろ!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

織田一朗の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×