- Amazon.co.jp ・本 (350ページ)
- / ISBN・EAN: 9784794221759
感想・レビュー・書評
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興味深く読めた
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「人間はどこまでチンパンジーか?」の改訂版。おもしろいが、当然のことながら、2年ほど前に「人間はどこまでチンパンジーか?」を読んだときほどではない。2016年2月7日付け読売新聞書評欄。
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人間は過去からはたぶん何も学べない、生き物です。
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人間とはなにか、これからどうなっていくのか。
過去の歴史からもっと考えていく必要がある。 -
面白い。著者のこれまでの著作を踏まえた上で、人類の歴史を振り返っている。
しかし、最後の章の環境破壊、種の絶滅に対する内容はひどくしつこく感じた。 -
面白かったけど、途中で飽きて斜め読みになった。
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サル学.分子生物学.社会学.人種等の最新の知見を網羅している。専門書と言うには読みやすく、エッセイよりは深い内容だと思った。
後半はちょっとだれ気味だが、前半は実に面白い。 -
私達が「動物」という言葉を使うとき、それはイヌ、ネコ、サル、ライオンなどをイメージする。そこに魚や鳥を含めることもあるが、あくまでも人間は含まず「人間は動物とは異なる」と認識している。確かに文明を発展させ人口を増やしてきた人間は、地球上でもっとも成功した生物種だという点で特別な存在だろう。しかし私達が「動物」の一種と見なしているチンパンジーは、人間と98.4%の遺伝子を共有しており、その違いはわずか1.6%だ。遺伝的な距離の点からすれば、人間はチンパンジー(コモンチンパンジーとボノボ)と同じ属として扱われるべきで、その点で「第三のチンパンジー」にほかならない。なぜ遺伝子のたった1.6%の差異がこれほど大きな違いとなったのだろうか。それが「人とは何か」を論じた本書のテーマだ。
著者は、ヒトの祖先が言語能力を獲得したことが進化の大躍進の引き金になった事、なぜ多様な人種が存在するのか、なぜヒトの寿命が100年程度であるのかその理由、狩猟採取民族だった人間が農業と牧畜の技術を得たことで階級格差が生じた経緯などの、人類進化と文明の発展についての考察を、進化生物学、生理学、生物地理学などの観点から明快に論じており大変説得力がある。
しかし急速に文明を発展させてきた人類は、現代も社会問題の根底にある2つの特徴を背負っていた。そのひとつが大量の人間を殺し合う残虐性で、これまでも人種、宗教、政治的立場などを理由に大量虐殺が行われてきたし現在も核兵器が存在する。もうひとつの特徴が環境と生活基盤を破壊しようとする性質だ。人間は多くの大型哺乳類を狩り尽して絶滅させてきたし森林の木を伐採しつくして砂漠に変え、栄えていた文明を滅ぼしてきた。現在も動植物の種の絶滅が進んでおり、人間の手による環境破壊が深刻な事態であることは周知の事実だ。
それでも、人間の未来には希望が無いわけではない。人間は遠隔地のことでも過去の事でも、他の仲間の経験から学べる唯一の動物だからだ。核による殺戮は広島と長崎の後は行われておらず、環境問題に対する意識も広まろうとしている。「過去を理解し、過去から学び、それを将来に役立てることができれば、人間の将来は他の2種のチンパンジーより明るいものになるのではないか」著者はこう訴えている。これからの世界を担う若い世代の人達に特に耳を傾けてもらいたい。
本書は『人間はどこまでチンパンジーか?』の内容をアップデートし、特に若い読者のために書き改めたものであるが、文明の発展や崩壊、伝統的な社会と現代社会の比較などについては、著者の『銃・病原菌・鉄』『文明崩壊』『昨日までの世界』にも詳しく述べられている。人間社会の営みと文明の発展、衰退の関わり合い、現代社会の問題点などについても深く考察されていて大変興味深いので、これらも是非読んでもらいたい。