若い読者のための第三のチンパンジー: 人間という動物の進化と未来

制作 : レベッカ・ステフォフ 
  • 草思社
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  • Amazon.co.jp ・本 (350ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794221759

感想・レビュー・書評

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  • 興味深く読めた

  • 『マンモスのつくりかた』『Ank』『私たちはどこから来てどこへいくのか』、加え言葉にまつわる本関連の興味の続きで読んでみた(たぶん、どの本だかに引用されていたような気もする)。

    類人猿と我々ヒトを分かち、人類の「大躍進」の大きなきっかけとなったものが、

    「今日、私たちが知っている話し言葉が発達したことによるのだ ― 私はそう考えている。」

    という、要は昨今の興味の後押し、補完となる一冊だった。

     読みやすくはあったが、広く、深く、より専門的に語られるところも多く理解が進んだというより、ちょっと手こずったかな。 でも、分子時計、ザハヴィの理論など、興味深い話も多く、勉強になった。

     人類の進化(それを進化と呼べるかどうかは別として)、すでに遺伝子の変化に捕らわれたものではなくなっているという事実は、創造主にとっては想定外のことだったのかもしれない。。。。

  • 「人間はどこまでチンパンジーか?」の改訂版。おもしろいが、当然のことながら、2年ほど前に「人間はどこまでチンパンジーか?」を読んだときほどではない。2016年2月7日付け読売新聞書評欄。

  • 人間は過去からはたぶん何も学べない、生き物です。

  •  道具の使用は、動物界に明らかな起源をもつヒトの特徴にほかならない。人間のほかにもキツツキフィンチ、エジプトハゲワシ、ラッコなど、動物にも食べ物を捕らえたり、加工したりするために、同じく石や枝を道具として使うように進化してきた生き物がいる。だが、人類ほど道具に頼っている動物はほかにいない。(p.40)

     人間が言葉を話す能力とは、たくさんの構成要素と筋肉が正しく機能しているおかげなのである。類人猿のように、限られた子音と母音しか出せなければ、人間の語彙はまったく限られたものになってしまう。つまり、人間を最終的に人間たらしめた不明の要素とは、人間の声道に生じたなんらかの変化—さらにきめ細かく音声をコントロールでき、もっと幅広い発声を可能にした変化だと考えられるのだ。筋肉や柔軟な組織に生じたきわめてささいな変化であるだけに、頭蓋骨の化石に現れることはなかった。(p.62)

     人間の性行動の進化をめぐり、もっとも激しく交わされている議論は、なぜ私たちは排卵を隠すようになったのかであり、こうした排卵の時期を逸した性交渉にどんな利点があるのかという疑問だった。セックスは楽しいが、それは進化によってそうなったからである。(中略)
    ・隠された排卵と性交は、男性間の攻撃を抑制して、協力を引き出すために進化した。
    ・隠された排卵と性交によって、特定のカップルの絆が強まり、ヒトの家族の基礎ができていった。(p.81)

     ある意味、進化とはエンジニアのようなものである。進化もまた、動物のほかの部分を切り離して個々の特質に限っていじり回すことはできない。器官、酵素、DNAなど、いずれもほかのものに使えたかもしれないエネルギーとスペースを使って作り上げたものだからである。個別にいじるかわりに、自然淘汰が選んだのは、その動物が繁殖成功度を最大化できる物質の組み合わせだった。エンジニアも進化生物学者も、なにかを増大させるなら、そこにはトレードオフ(差し引き関係)がかかわっている点を踏まえたうえで考えなければならない。(p.115)

     捕らわれの身にあれば絵を描いていたチンパンジーが、どうして野生では絵を描こうとはしないのか。その答えとして私が考えるのは、野生に生きるチンパンジーの日常は、食べ物を探すこと、生き延びること、ライバルの群れを追い払うことで精一杯だからなのだ。野生のチンパンジーにもっと余裕ができ、絵具を作る能力をもちあわせていれば、おそらく彼らも絵を描きはじめるようになるだろう。(p.164)

     言語が少なければ世界中の人びとが意思を交わしやすくなるので、消滅はむしろ良いことではないのかとも考えられる。そうかもしれないが、ほかの面ではまったく望ましくはないのだ。言語はそれぞれ構造や語彙が異なっている。感情や因果関係や個人的な責任をどう表現するかという点でも異なる。人間の思考をどう形づくるのかという点でも言語によって異なる。だから、この言葉こそ最善だというたったひとつの言語は存在しない。そのかわり、目的が異なればもっとそれにふさわしい言語が存在している。言語が死に絶えてしまうとは、かつてその言葉を話していた人たちが抱いていた独自の世界観を知る手段さえ失ってしまうことになるのだ。(p.223)

     旅行やテレビ、写真、インターネットに寄って、何万キロも離れて暮らす人たちも、自分たちと変わらない人間としてみることができるようになった点だ。ジェノサイドを可能にする「我ら」と「彼ら」のあいだの境界線は、技術によって曖昧になってきている。ファーストコンタクト以前の世界では、ジェノサイドは受け入れられ、賞賛さえされていたが、国際的な文化と遠隔地に住む人びとに関する私たちの知識が現代になって急速に広がり、ジェノサイドを正当化するのはますます難しくなってきた。
     だが、ジェノサイドの可能性は私たちすべての人間のなかに宿っている。世界の人口が増えていくにしたがい、社会間や社会内でのせめぎあいはますます激しいものになっていくだろう。(pp.268-269)

  • 人間とはなにか、これからどうなっていくのか。
    過去の歴史からもっと考えていく必要がある。

  • 面白い。著者のこれまでの著作を踏まえた上で、人類の歴史を振り返っている。
    しかし、最後の章の環境破壊、種の絶滅に対する内容はひどくしつこく感じた。

  • 面白かったけど、途中で飽きて斜め読みになった。

  • サル学.分子生物学.社会学.人種等の最新の知見を網羅している。専門書と言うには読みやすく、エッセイよりは深い内容だと思った。
    後半はちょっとだれ気味だが、前半は実に面白い。

  •  私達が「動物」という言葉を使うとき、それはイヌ、ネコ、サル、ライオンなどをイメージする。そこに魚や鳥を含めることもあるが、あくまでも人間は含まず「人間は動物とは異なる」と認識している。確かに文明を発展させ人口を増やしてきた人間は、地球上でもっとも成功した生物種だという点で特別な存在だろう。しかし私達が「動物」の一種と見なしているチンパンジーは、人間と98.4%の遺伝子を共有しており、その違いはわずか1.6%だ。遺伝的な距離の点からすれば、人間はチンパンジー(コモンチンパンジーとボノボ)と同じ属として扱われるべきで、その点で「第三のチンパンジー」にほかならない。なぜ遺伝子のたった1.6%の差異がこれほど大きな違いとなったのだろうか。それが「人とは何か」を論じた本書のテーマだ。
     著者は、ヒトの祖先が言語能力を獲得したことが進化の大躍進の引き金になった事、なぜ多様な人種が存在するのか、なぜヒトの寿命が100年程度であるのかその理由、狩猟採取民族だった人間が農業と牧畜の技術を得たことで階級格差が生じた経緯などの、人類進化と文明の発展についての考察を、進化生物学、生理学、生物地理学などの観点から明快に論じており大変説得力がある。
    しかし急速に文明を発展させてきた人類は、現代も社会問題の根底にある2つの特徴を背負っていた。そのひとつが大量の人間を殺し合う残虐性で、これまでも人種、宗教、政治的立場などを理由に大量虐殺が行われてきたし現在も核兵器が存在する。もうひとつの特徴が環境と生活基盤を破壊しようとする性質だ。人間は多くの大型哺乳類を狩り尽して絶滅させてきたし森林の木を伐採しつくして砂漠に変え、栄えていた文明を滅ぼしてきた。現在も動植物の種の絶滅が進んでおり、人間の手による環境破壊が深刻な事態であることは周知の事実だ。
    それでも、人間の未来には希望が無いわけではない。人間は遠隔地のことでも過去の事でも、他の仲間の経験から学べる唯一の動物だからだ。核による殺戮は広島と長崎の後は行われておらず、環境問題に対する意識も広まろうとしている。「過去を理解し、過去から学び、それを将来に役立てることができれば、人間の将来は他の2種のチンパンジーより明るいものになるのではないか」著者はこう訴えている。これからの世界を担う若い世代の人達に特に耳を傾けてもらいたい。
    本書は『人間はどこまでチンパンジーか?』の内容をアップデートし、特に若い読者のために書き改めたものであるが、文明の発展や崩壊、伝統的な社会と現代社会の比較などについては、著者の『銃・病原菌・鉄』『文明崩壊』『昨日までの世界』にも詳しく述べられている。人間社会の営みと文明の発展、衰退の関わり合い、現代社会の問題点などについても深く考察されていて大変興味深いので、これらも是非読んでもらいたい。

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著者プロフィール

1937年生まれ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校。専門は進化生物学、生理学、生物地理学。1961年にケンブリッジ大学でPh.D.取得。著書に『銃・病原菌・鉄:一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎』でピュリッツァー賞。『文明崩壊:滅亡と存続の命運をわけるもの』(以上、草思社)など著書多数。

「2018年 『歴史は実験できるのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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