若い読者のための第三のチンパンジー: 人間という動物の進化と未来

制作 : レベッカ・ステフォフ 
  • 草思社
3.73
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感想 : 33
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  • Amazon.co.jp ・本 (350ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794221759

感想・レビュー・書評

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  • 20年ほど前の著書を、新たな内容に改めて出版した本らしい。「銃・病原菌・社会」、「文明崩壊」、「昨日までの世界」をまとめ、人間とはなにかについて、生物学や人類学、考古学などの知見を織り交ぜて論を進めていく。
    これまでの著書を読んでいると新たな発見はないのだが、も考える点は満載。
    著者の博識と知性にあらためて感嘆した。

  • 著者の『銃・病原菌・鉄』『人の性はなぜ奇妙に進化したのか』と被る部分があるが、もともと本書が『人間はどこまでチンパンジーか』として始めに書かれたもの。ヒトの進化から環境破壊まで展開される幅広い考察は、著者の作品が初めての人には目からウロコな内容。ヒトはチンパンジーなどと同様「我ら」と「彼ら」を線引きし、古来より「彼ら」に対して排外や大量虐殺を厭わなかったが、移動と通信技術が発達の結果世界が狭くなり、彼我の境界が曖昧になった今日、その傾向も衰微し、事態は良い方向に向かうだろうという趣旨には実感で、特に印象に残った。

  • 『人間はどこまでチンパンジーか?』の続きかと思っていたが、どうも底本は同じで編集しているものみたいだ。
    そもそも『人間は~』を読んでいないので差分は分からないが、タイトルの通り大分平易。
    高校生くらいに丁度いい気がする。

    個人的には『銃・病原菌・鉄』の様な徹底的にガッツリ書いてある方が楽しめる。
    しかし簡単だし分量も多くないので、数日で読み切るジャレド・ダイアモンド入門書として良さ気。
    いや、入門書として、と言っても私もまだ他は『銃・病原菌・鉄』しか読んでないんだけどさ。

  • とても面白かった。息子に是非読ませたい。

  • 『銃・病原菌・鉄』のジャレットダイアモンド氏の初期の
    作品のバージョンアップ版だそうです。
    大変面白い内容です。人間とはなにか?
    人間特有の特性はいつ、なぜ、獲得したのか?
    その後現在の人類として、大躍進をはたしたのか?
    言語・芸術・農業・薬物・ジェノサイド・・・
    将来的に人類はどういう末路をたどる可能性があるのか?
    これから学問を目指す人たちに読んでほしい本だと思います。

  • 「どうやら私たちは、幼いころから刷り込まれた美しさの基準、愛着を覚える美の基準にしたがって、自分の配偶者を選んでいるようである。」という考えに納得がいかなかったのは、配偶者と知り合ったのが30年前であるので、その時は作者の考えのように配偶者を選んだのか今となっては知り様もないのです。だからこの本のタイトルの頭には”若い読者のための”が加えられているのかな。全体を通して目新しい情報はなかったように思いました。『銃・病原菌・鉄』の論旨と似たような印象を持ちました。

  • 請求記号 469/D 71

  • 「人間とは何か?」との問いに対し、科学的な考察をめぐらせる。
    「若い読者のための」 とのタイトルに偽りなく、各章がコンパクトにまとまっている上、文章も平易で、非常に読みやすい。

    例えば、
    ・人間とチンパンジーはDNA的には98%以上共通する
    ・なぜ人は「隠れて」性行動するのか、なぜ人種の差異が生まれるのか、なぜ人は老いるのか…
    ・言語、芸術、農業、酒タバコ薬物の乱用等からわかる人間の特質(ex.農業は「よいもの」で、「進化の道しるべ」なのか?)
    ・地理学が「進化の基本ルール」を決める
    ・ジェノサイドはなぜ起こるのか
    ・繰り返される環境破壊
    …と、興味深いトピックを豊富に扱っており、飽きずに読み切れる。

  • 人間とは何か?ジャレドダイアモンドの名著「銃・病原菌・社会」や「昨日までの世界」に加え「文明崩壊」を、わかりやすく、簡単にダイジェスト版で編集した本。

  • 『銃・病原菌・鉄』で1998年のピュリツァー賞を受賞して一躍有名になったジャレド・ダイアモンドの第一作『人間はどこまでチンパンジーか?』(原語1992年、日本語訳1993年)を、最新の情報を取り入れて、コンパクトかつより読み易くしたもの。
    前半では、私たち人間とはどのような生き物なのかを進化生物学的に解説し、後半において、人間がこの地上で行ってきた(いる)ことは何なのか、この先人間はどうなっていくのか(どうするべきなのか)を哲学的に考察する流れとなっているが、大まかな内容は以下である。
    ◆ヒトは、チンパンジー、ゴリラ、オランウータン、テナガザルと並ぶ、霊長目5種のひとつであるが、最も近いチンパンジーとは98.4%のDNAを共有する。チンパンジー(コモンチンパンジーとボノボ)にとって遺伝的距離が最も近い種はヒトであり、ヒトはまさに第三のチンパンジーにほかならない。
    ◆ヒトは、700万年前にチンパンジーの系統から分れてから、常時二足歩行をする(=両手が使える)ようになったこと、恒常的に石器を使うようになったこと、また、少なくとも一度は他の猿人と分岐したこと(分岐したもう一方の猿人はその後絶滅)により、より人間らしくなったものの、“見た目がいささか立派なチンパンジー”に過ぎなかった。我々が“人間”になったのは、僅か6万年前で、当時少なくとも3種類いた人類(1.アフリカにいた解剖学的に現代人と同じ人びと、2.ネアンデルタール人、3.謎のアジア人)の中から、1のみが複雑な言葉を獲得することにより大躍進を遂げて現生人類(クロマニヨン人)となった瞬間である。
    ◆人間には、他の哺乳類と比較して奇妙な性行動(発情期がない等)、肌や目の色に象徴される人種の違い(これは自然淘汰ではなく、性淘汰によるものと考えられる)、一見不合理な加齢の仕方(思春期が遅い、生殖可能期間を過ぎても生きている等)などの人間性獲得のために不可欠であったライフサイクルの特徴があるが、それらはいずれも遺伝子により決定づけられたもので、人間の特異性を説明するものにはならない。
    ◆人間の特異性は、遺伝的基礎の上に築かれた、話し言葉、芸術、道具を操る技術、農業などの文化的特質のうちにある。但し、その特質はプラスのものばかりではなく、農業の発明は、階級の分化、栄養の偏り、伝染病などのマイナス面を生み出すことにもなった。
    ◆更に、人類は自らの生存を脅かす2つの文化的な性向を持っている。一つは、同じ種の異なる集団に属している相手をことごとく殺し尽くすというジェノサイド(大量虐殺)である。もう一つは、地球の温暖化や環境汚染、人口増加による食糧危機、生存に不可欠な生物の絶滅などの環境と資源基盤の破壊である。
    そして、ダイアモンドは、最後半のネガティブな分析にもかかわらず、「本書がたどってきた過去から私たちが学ぼうとするのであれば、その将来はほかの二種のチンパンジーの将来より明るいものになるのではないだろうか」と結んでいる。
    ダイアモンドの思考のベースが凝縮された一冊といえる。
    (2015年12月了)

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著者プロフィール

1937年生まれ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校。専門は進化生物学、生理学、生物地理学。1961年にケンブリッジ大学でPh.D.取得。著書に『銃・病原菌・鉄:一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎』でピュリッツァー賞。『文明崩壊:滅亡と存続の命運をわけるもの』(以上、草思社)など著書多数。

「2018年 『歴史は実験できるのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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