- Amazon.co.jp ・本 (541ページ)
- / ISBN・EAN: 9784794224200
作品紹介・あらすじ
二〇一五年から一六年にかけてフランスとベルギーというフランス語圏で相次いだ四つの事件は、大きな衝撃を残した。
……彼らは、ディープなイスラム社会から生まれ出たわけでもなければ、テロの遺伝子を引き継いだわけでもない。
テロリストに変貌するまで、彼らはごく普通の欧州市民だった。人はテロリストに生まれない。
どこかの時点で、何かをきっかけに、何らかの過程を経て、テロリストになるのである。(本書より)
▽メディアがその言論ゆえに標的となった〈シャルリー・エブド襲撃事件〉
▽街角のカフェや劇場が突如、戦場の様相を呈した〈パリ同時多発テロ〉
▽EUの拠点で空港・地下鉄がターゲットになった〈ブリュッセル連続爆破テロ〉
▽海岸沿いの遊歩道に憩う86人の命を一気に奪った〈ニース・トラック暴走テロ〉
「普通の欧州市民」として暮らしていた若者たちは、いかにして世界を震撼させる事件を起こすに至ったのか。
丹念な現地取材に加え、イスラム研究、政治学、社会学、心理学の最新論文や研究者インタビューによって
新たなテロリスト像を浮き彫りにする迫真のノンフィクション!
感想・レビュー・書評
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本書はノンフィクション・ドキュメンタリー。
2015年1月フランス、パリで発生したシャルリー・エブド襲撃事件、2015年11月パリ同時多発テロ事件、2016年7月に発生したフランス、ニース・トラック暴走テロ事件などのテロ事件を著者である朝日新聞社記者・国末憲人氏が詳細にルポしたものである。
著者は現在、朝日新聞ヨーロッパ総局長である。
普通のEU市民が、どうして凶悪なテロリストに変貌したのだろうか。
著者はシャルリー・エブド襲撃事件、パリ同時多発テロ、ブリュッセル連続爆破テロ、ニース・トラック暴走テロ等を通じて、現地取材をもとにテロリストが誕生した過程と背景を探り、テロリストたちの思考回路を明らかにしていく。
〇 メディアがその言論ゆえに標的となった〈シャルリー・エブド襲撃事件〉
〇 街角のカフェや劇場が突如、戦場の様相を呈した〈パリ同時多発テロ〉
〇 EUの拠点で空港・地下鉄がターゲットになった〈ブリュッセル連続爆破テロ〉
〇 海岸沿いの遊歩道に憩う86人の命を一気に奪った〈ニース・トラック暴走テロ〉
新聞記者として海外特派員を長く勤めた著者であるからこそ、著すことが出来た本書である。
この本を読むと、テロリストたちがいわゆる本当のイスラム原理主義者ではなく、どちらかといえば、社会からドロップアウトしてしまった犯罪者であったということがうかがえる。犯罪歴があり、まともな職につけず、昼間から街をぶらぶらとしていたところ、過激思想をもった人物に声をかけられて洗脳されてしまう。
筆者がいう
テロリストになった彼らは、暇でやることがなかったからテロリストになってしまったのだ
という言葉がいかに重要なことを示唆しているかを思い知らされた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2019.11.9立正大学心理学部公開講座「愛と正義と暴力と 過激主義の社会心理学」にて、福岡大学の縄田健悟先生が紹介。
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岐阜聖徳学園大学図書館OPACへ→
http://carin.shotoku.ac.jp/scripts/mgwms32.dll?MGWLPN=CARIN&wlapp=CARIN&WEBOPAC=LINK&ID=BB00601965
人はどのような過程を経てテロリストになっていくのか?現地取材をもとに新たなテロリスト像を提示する力作ノンフィクション!
(出版社HPより) -
●テロを支える思想、ジハードは、グローバル化への反作用と位置づけられる。
●テロ1つ1つを大騒ぎするのは、それをことさら大きく見せようとするあるアルカイダやイスラム国の思うツボである。テロは国家と社会の連携によって防ぐことが可能である。歯止め外れたら人類破滅につながる核兵器の使用禁止の取り組みなどとは次元が違う話である。
●政治活動に真剣に取り組む時間を要する。スケジュールを簡単に空けることができるのは学生であり、仕事についていない人であり、短期就労の人なのだ。過激派に身を投じようと考える人も多くは、基本的に暇なのである。
●移民二世と改宗者
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本書はこの数年で欧州を震撼させた4件のイスラム過激派テロの犯人の出生や周囲との交友関係を丁寧に辿り、何が彼らにテロを引き起こさせたのかを考察するノンフィクションである。
もう数年が経過しているが、フランスのシャルリー・エブド編集部襲撃事件、パリ同時多発テロ、ブリュッセル連続爆破テロ、そしてニースのトラック暴走テロのいずれも、まだ記憶に新しい。これらのテロの犯人について、我々は漠然と”イスラム教徒”であったから”テロを引き起こした”というストーリーを想起しがちである。しかし、実際の調査によると、このストーリーは間違っている。彼らは蓄積した”自らの生活・経済への不満”を、”イスラム過激派のリクルーターたちに教唆”され、テロを引き起こした、というのが実態である。
実際、この4件のテロのうち、複数件ではイスラム過激派、そしてISに属して、欧州の若者たちをリクルートする黒幕の姿がある。その手口は宗教カルトや左翼過激派のやり口に近いものでもある。
こうした実態のストーリーを踏まえ、テロリストをこれ以上生み出さないための政策とは何なのだろうか。それは決してISのように散り散りになっていくイスラム過激派の末端までをも追及する、という軍事作戦ではあり得ない。恐らく地道な取組ではあるものの、社会から切り離されて孤立した人間をなるべく作り出さないことに尽きるのかもしれない。
そうした省察も踏まえ、テロリズムの実態を知れる良書。