運動しても痩せないのはなぜか: 代謝の最新科学が示す「それでも運動すべき理由」

  • 草思社
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  • Amazon.co.jp ・本 (385ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794226020

感想・レビュー・書評

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  •  興味を持って図書館から借り出したが、タイトルからして、そもそも読む気が失せるというか、これまで何のために運動してきたのだろうと暗澹たる気持ちになる。ということで、なかなかページを繰る速度があがらなかった一冊(著者の筆致によるところも大きいとは思う)。

     主旨としては、タイトルの如し、「運動しても1日の総消費カロリーに変化はない」ということ。それが、近年の人類学的研究で明らかなになったという、その研究発表だ。ハッザ族という、アフリカでいまだに狩猟採集を行う少数民族を通じ、エネルギー摂取と代謝のメカニズムを解明した。

     解明できたのは、動物の1日の消費カロリーを正確に測定することが出来るようになったこと(「二重標識水法」という新手法らしい)、それによって、われわれ先進国に暮らす人間と、ハッザ族のような狩猟採集民、さらにはオランウータンやチンパンジーなどの類人猿の消費カロリーを測定した。その結果が、“運動しても痩せない”だ!!!(涙)

     いや、それだけが研究の成果ではないのだけど、もう、右に行ったり左に行ったり、ハッザ族とのたわいもない日常の描写に明け暮れて、ほんと、ページが進まない。 いやいや、読み手の興味がそれ以降続かない(苦笑)

     ともかく、その結論だけではなく、その研究によって導き出されるさまざまな発見も開陳されているのだが ― 例えばハッザ族には、糖尿病、肥満、高血圧と言った成人病が発症しないとか、分配と代謝率の向上で集団が生まれ抗争が勃発したとか、単なるダイエット論争に終止符を打つだけではなく、スポーツ科学や人類学についても、衝撃的な事実が述べられている。

     では、運動することは無駄なのか!?

     でもないらしいところが、さらに本書のもどかしいところ。運動してもしなくても1日の消費カロリーは変わらないとなれば、もう運動やめちゃおうかと思うが、摂取した上に、運動にも使われなかったカロリーは、不必要な「炎症」を起こし、現代病の原因になるという。余ったカロリーの使い道の際たるものが「炎症」だとか。アレルギーや関節炎、動脈疾患のほか、さまざまな「現代病」の原因となっているのだそうな。
     故に、運動すれば、余ったカロリーが消費され、ムダな炎症が抑えられる。つまり、健康が維持される。

     要するに、喰ったら走れ!ということだ。
     ・・・ いや、その前に、もう少し食べる量減らせよ、ってことなのかもしれない。

     つか、読まなくても分かってる話か、それって!? 
    (いやいや、こうした研究がなされ、科学的に証明されたというありがたい書なのだ)

  • ヒトは動物界のはみ出し者。一生がゆっくり。
    類人猿で単独で暮らすのはウランウータンだけ。オランウータンは代謝がゆっくり=エネルギー消費が少ない。代謝率を下げるにはライフサイクルをゆっくりするしかない。
    霊長類の代謝は哺乳類に比べて半分。しかし、基礎代謝は同じくらい。脳が大量のエネルギーを使うから。
    人間は、他の類人猿に比べて脳にエネルギーを回すため、消化管へのエネルギーを減らした。
    カロリーの燃焼とはATPをつくること。

    速度が上がると歩くより走るほうが楽。そのほうがエネルギーコストが最小になる。走るほうが距離当たりの消費カロリーは高い。一流のランナーでも同じ程度に消費する。

    一日の活動レベルは、一日の消費カロリーとはほとんど関係がない。減量プログラムの前提が間違っている。
    哺乳類は、小惑星の衝突で恐竜を含む大量絶滅の隙間に反映した。
    霊長類はそのころから、代謝が遅く、成長が遅く長生きした。長期に生殖が可能。成長が遅いと学習できる。

    ハッザ族=分け合う民、の意味。ハッザ族には、糖尿病、心臓病、肥満、高血圧はない。
    ヒトは分け合うことで成功した。分け合いが代謝革命を起こした。分け合うことで摂取カロリーが増加し、代謝が向上した。チンパンジーも脳を使うが、分け合わない。ホモ属は持久走で獲物が疲れたところを捕まえた。

    分配と代謝率の向上で、集団と抗争が生まれた。
    数百世代前までは狩猟採集民族だった。活動量が多いがエネルギー消費は、現代人と同じだった。
    制限的日次カロリー消費=活動量が多いと基礎代謝を減らす。カロリー消費量を増やして痩せることは難しいが、運動は体にいい。運動をするとカロリー消費が増えた分だけ摂取量も増えることもある。
    運動による減量の研究は、長期になると予想通り減量しない。
    基礎代謝と運動によるカロリー消費は、体重の変化に反応して変わる。
    代謝を上げることはできない。活動レベルに応じて変わる

    ハッザ族の主要な食べ物ははちみつと地下茎。狩猟採集民族が肉食だったとは限らない。手に入りやすいものを食べている。北極圏の人が肉を食べるのは野菜がないから。
    脂肪の割合は少ない。心臓病になりにくい。
    牧畜民は、7000年ほど前に変異してラクターゼを消化できるようになった。
    穀物を食べていると、アミラーゼが増える。
    イヌイットはケトン体を作らないように変化している。
    スーパーフードは根拠がない。代謝を上げる食物はない。
    低炭水化物食と低脂肪食はダイエットに関しては同じ。
    ただ糖類は取りすぎる傾向にある。
    一つの食品だけを食べるのは飽きて摂取量が減るから。
    食事のカロリー制限と、絶食は同じ効果。
    食べ物が多いと肥満になりやすい、というだけ。
    たんぱく質と食物繊維が多いものは満足感が持続する。糖類は報酬系が働き満足するまでの量が多い。
    ナッツ、果物、新鮮な野菜を食べれば、少ないカロリーで満腹感を感じられる。

    類人猿は怠惰なのに病気にならない。運動を必要とするヒトが特殊。狩猟採集民族になった以降、活動量が増えた。運動によってカロリー消費は増えなくても、カロリーをどう使うかは変えられる。運動が多くなると、余計な仕事が減らされる。炎症、ストレス反応、生殖、生殖系のがん、など。

    一日5時間体を動かす、そのうち1時間は心拍数を上げる。運動は多いほどいい。
    運動で減量は達成できないが、体重管理には有効。

    基礎代謝の2.5倍以上の運動は、体脂肪を使う=原料になる。これ以上早く消化吸収できない。
    出産も、母親の代謝の限界に近づくと引き金になる。

  • Twitterで見かけて面白そうだったので読んでみた。
    タイトルはダイエット本みたいだけど、代謝について科学的にしっかり説明されていて読み応えがある。
    それでいて読みやすいのでスイスイ読み進められた。

    タンザニアに住む現代の狩猟採集民族であるハッザ族やオランウータンなどの類人猿の研究を通して発見した代謝に関する新しい知識を知ることができる。

    ・運動しても痩せない理由
    たくさん運動しているハッザ族も先進国の人も1日の消費カロリーは同じくらい
    運動によりカロリー消費が増える→他のカロリー消費が減る
    他のカロリー消費=生殖、成長、炎症
    現代人は摂りすぎたカロリーを炎症で消費している
    運動は減量効果はないけど健康にはいい、増量を防げる

    ・減量方法
    痩せるためには摂取カロリーを減らす
    人間は本来、必要なカロリーを摂取すると満腹感を感じて食べるのをやめる
    現代の食品は糖質、脂質、塩分が多く美味しすぎて食べすぎてしまう
    加工されてない食品や、満腹感を得やすい食物繊維やタンパク質を多く含むものを摂る
    野菜、果物、ナッツなどがいい

    人間の活動で最もカロリーを消費するのは妊娠
    9ヶ月間3000キロカロリー消費し続ける
    ツールドフランスなどの過酷なスポーツよりも多い



  • 当たり前に思っていたカロリー摂取と消費の最新情報を理解するのに、ケーススタディや図解でわかりやすく理解できる本。
    人体の構造上、摂取する栄養素やカロリーが体を動かすガソリンの役割を果たし、カロリーが枯渇すると蓄えられた脂肪やグリコーゲンを分解して、身体が動くガソリンに変わるのは周知の事実であるが、カロリーを代謝するのに、「制限的日次カロリー消費量」は人体の限界値を超えないために工夫された生存能力を効率的に運用するための考え方。スポーツで限界値を超えることを求め続けたときに、何も考えられないようになるのは、脳を最低限のカロリー消費にしていたんだなと思うと、この考え方は腑に落ちた。
    カロリーと向き合う上で、そもそも論でこうした考え方は理解しておくと面白い。

  • 生命とは、究極には、太陽のエネルギーから生み出され、太陽のエネルギーによって維持される。
    その過程が代謝であって、代謝量は、一定である。ので、さまざまな生命活動は、その範囲内でのオフトレードとなる。
    脳の発達を促す時期には体の発育が制限されるし、免疫にエネルギーを大量に使う地域でも同じ。
    運動してカロリーを消費しても、他の代謝を必要とする活動が制限され、全体ではかわらない。ゆえに、運動しても痩せない。

    うーん。面白い。
    机上の空論ではなく、「未開」の生活でのフィールドワークも広範囲に検証した結果だそうだ。

    類人猿は代謝スピードを下げる戦略をとって来たが、ヒトはその中でも代謝を上げることとなった。
    ヒトがヒトとなるための大きなポイントが食事の「分配」であり、狩猟採取が生活であったため、運動することが前提の身体となっている。
    ので、全く運動しないと、肥える。ある一定以上は、同じようなんだが。
    運動に使うべきエネルギーが、過剰な免疫にに回されたりする弊害もある。

    また燃焼と代謝は本質的に同じ物であり、人は、「代謝」を身体の外に拡大した唯一の生物だと。

    読みやすいし、いいな。

  • 点検読書II この本は、あなたが期待するようなことについては、あっさりとだけ書かれている。どちらかというと人間が体内および体外のカロリー消費について、しくみや進化の仕組みを考察している方がメインだ。とはいえ、読んだ価値はあり、人間の進化や社会の分業について知見を得た。知的な満足を得た。そして、自分の現実に向き合っていくしかないことにも気がついた。

  • 目新しいことが書かれているのかと期待しましたが、痩せるには消費カロリー>摂取カロリー、ということを本一冊を使って説明しているだけでした。この図式が成り立てば運動していようがしていまいが関係ない、ただし運動による健康的な効果(もちろん減量以外)はあるのでやった方が良い。
    研究結果を多く提示しているため、
    この図式を知らない、どういう理由なのか知りたい、という人は読んでもいいかもしれません。

  • 内容は興味深いが、むずかしめ。

    運動したら、その分お腹が減って、その分食べてないか。
    また運動して疲れたから、家でゆっくり過ごして、カロリーが減る。
    運動している時と普段の時で、消費されるカロリーはあまりかわらない?ということ。

  • 霊長類学。痩せませんが運動は必要です。しかしチンパンジーなら運動必要ありません。

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著者プロフィール

ハーマン・ポンツァー
デューク大学人類進化学准教授、デューク・グローバルヘルス研究所グローバルヘルス准教授。人間のエネルギー代謝学と進化に関する研究者として国際的に知られている。タンザニアの狩猟採集民ハッザ族を対象としたフィールドワークや、ウガンダの熱帯雨林でのチンパンジーの生態に関するフィールドワークのほか、世界中の動物園や保護区での類人猿の代謝測定など、さまざまな環境において画期的な研究を行っている。その研究は、ニューヨークタイムズ紙、BBC、ワシントンポスト紙などで取り上げられている。

「2022年 『運動しても痩せないのはなぜか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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