音楽のおしえ

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  • 晶文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (265ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794951335

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  • 音をはこぶ    -2006.11.09記

    竹の管に息をふきつける。内側の空気の柱がはげしくゆれる。
    これが音だ。ゆれが安定し、音は消える。瞬間の音は偶然だ。

    音が消えぬうちに、できかかるバランスをつきくずす。
    それはなれた手ではなく、注意ぶかい耳、そばだてた耳のしごと。これをくりかえし、音をまもる。

    意志をもってしなやかに音をはこび、意志をもって音をたちきれ。自然は安定にむかい、耳はそれにさからう。

    きくというのは受動的な状態ではない。
    外に耳を向けて、すべての音をききとろうとすると、自分の位置に極端に敏感になる。
    外へひろがるほど、内へ集中する。それは積極的な反省行為だ。音のイメ-ジは、きく行為をさまたげる。
    きくのをやめると、音はそれぞれの位置におさまって、まとまったかたちをつくる。
    イメ-ジの認識でくぎられ、つくったイメ-ジをこわすきく行為でさきへすすむ、往復運動。
    一定の安定がくずれて、両極のあいだを往復するのが振動だとすれば、ちがう周期の干渉による瞬間的な局部変化は、音をつづける力だ。
    くだけた波から、あたらしい波がたちあがる。

    おなじもののいくつもの演奏が同時に、すこしずらされてきこえると、おもいがけない細部がうかびあがり、全体は空間的なひろがりをもつ。これらのずれのあいだにきこえるあたらしい音の関係をとりだし、なぞりながら協調することによって、展望がすこしかわる。
    もとの音のながれと同時に「注釈」をつけたすことができる-runningcommentary-。注釈を注釈することもできる。

  • 高橋悠治は、音楽というものに、ときには思弁的に、ときにはラディカルに、しかし真摯に向き合っている。
    読んでいるうちに、自然と音楽というものをその起源から考えるようになっていく。不思議な魅力を持つ本。

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著者プロフィール

1960年代に草月アートセンターで前衛音楽運動に参加し、1963年〜72年まで、西ドイツ、アメリカを中心に現代音楽のピアニストと作曲家として活動。1970年代は日本で音楽雑誌『トランソニック』を編集。1976年に富山妙子と出会い、1978年にアジア民衆の抵抗歌を歌う「水牛楽団」をつくり、月刊「水牛通信」を発行する。著作に『高橋悠治コレクション1970年代』や『音の静寂、静寂の音』、『きっかけの音楽』などがある。

「2009年 『蛭子と傀儡子 旅芸人の物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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