- Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
- / ISBN・EAN: 9784794968517
感想・レビュー・書評
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大切な身近な人を亡くしたことがきっかけで、出版社を起業した著者が綴る日々。
謙虚な著者の言葉の中に、本への愛と希望が込められている。
願わくば、夏葉社や全国の町の本屋さんがずっと続いていってほしい。そして、現役の読者や未来の読者に、価値ある本を送り続けてほしい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ありのままの気持ちが並んでいるようなまっすぐな本だった。
本、本屋さん、好きだな〜。 -
島田さんが出版する本は「絶版になっていて、手に入りにくくて、たくさんの人に読んでほしい作品」。そうと知ると、夏葉社から出版された本が気になってしかたがなく、片っぱしから読みたい本リストに追加した。誰かが本気でつくった本、それも無名の出版社がつくった本に価値を見出し、読者に届けてくれた全国の書店員さん、店主さん、本当にありがとう。
p60
かなしんでいる人に、言葉を届けたいというのとはまた違った。むしろ、言葉では全然足りなかった。読まなくても、テーブルのうえに、ベッドの脇に、置いておくだけでいい。そんな本を、ぼくは、丁寧につくっていきたかった。
p86
絶版になっていて、手に入りにくくて、たくさんの人に読んでほしい作品が、いくつかあった。
p125
人はだれでもみな、親しい人と死別しなくてはならなくて、それは人生でいちばん大きなかなしみで、わたしたちは、それでも生きていかなければいけない。親しい人がいたときと、いないときとでは、世界がガラリと変わる。けれど、変わるのはわたしのこころであって、世界ではない。しばらくは、その変わらないことが、どうしようもなくつらいが、変わらないその世界は、親しい人が暮らし、愛した世界でもある。「さよなら」をしたあとで、わたしは、その人が暮らした町で、家で、もしくは、そことは違う遠い場所で、その人がくれた愛情とともに、ゆっくりと生きていく。
p191
ぼくには、三年後のデザインがわかるわけではないし、一〇年後のデザインなんて、わかりっこない。ぼくは、自分がつくった本が、一〇年後も、三〇年後も、時代の波が届かない場所で、質素に、輝いていてほしい。だから、デザインは、できるだけシンプルな方がいいと思う。 -
ポエムのような本は苦手だと、ずっと思ってきた。青臭い思いが芸術に昇華していなくて、深夜に突発的に書いた日記みたいな、そういう他者の垂れ流しが、ほんとうに恥ずかしいのだ。ああ、またこの手の本か、と少し思ったのだが、読んでいるうちに気持ちが変わってきた。一冊の本を作り上げた時の喜びの確かさを、感じたからだ。
わたしはそのうち、ベルトコンベア式に本を作っていくだろう。なんとなく所属し、なんとなく作業をし、おそろしく高度にシステム化された分業体制の中で、的確な業務を行うことで、一冊の本を生み出すかもしれない。その未来の一冊の本に対する思いと、この本の中に出てくる一冊の本に対する思い、そのあまりの落差に眩暈がしたのだ。全てをゼロから構築し、一番いいと思うものを追求し、人に助けを求めながらも一人ぼっちで作り上げたその本の気高さは、確かに、それを必要とする人の心を打つだろう。そもそもわたしは、そういうのが好きだったのだ。本のそういうところが好きだったのだ。今のわたし、これからのわたしを見て、前のわたしは何と言うだろう。システムにのっとって行う型通りの仕事にプライドを持ち始めたら、それは多分感性が死ぬ時であるとおもう。周囲に合わせながら、資本主義原理を呑み込みつつも、わたしはこの感覚を忘れてはいけないのだと強く思う。バランスを保ちながらも、絶対に忘れてはいけないものがあるのだ。 -
初めての本のようですが、読みやすかった
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なぜか、最近話題になった本。文庫化された、とかかな? で、私が読んだのは元本。
へー。と思って終わり。
ビジネス書とか、私は嫌いなんですが、それは著者の成功体験は私の抱えているケースには当てはまらないということ、ゆえに共感できないし参考にもならない、という部分が大きいからだと思う。
で、この本なんですが。割と期待していたのですが(表題は秀逸ですよね)、ちょっと子供の作文みたいなノリで、残念。まぁ島田さんの価値はこの本ではなく、彼の本業で決まるのだと思うので、これからも良い本を作ってください。 -
夏葉社つながり。
ひとり出版社を立ち上げたと何かで読んで、
ベンチャー系のはっちゃけた人、あるいは箕輪さん系のイケイケの人を想像して、
読むときっとヒリヒリすると思っていたけれどまったくそんなことはなく、
読み進めるにつれて心がじんわりと温かくなった。
ただ、後半の「2 よろこびとかなしみの日々」は、ちょっと蛇足かも。
消化不良感があった。ページ数が足りないのかな。
p87
必要なのは、おそらく、勇気だった。
とりあえずやってみよう、という勇気ではなく、売れなくてもいいんだ、という自棄(やけ)っぱちな勇気でもない。最初は売れないだろうけれど、ずっとガマンし続ける。それを理解する勇気が必要なのだと思った。
p125
人はだれでもみな、親しい人と死別しなくてはならなくて、それは人生でいちばん大きなかなしみで、わたしたちは、それでも生きていかなければいけない。親しい人がいたときと、いないときとでは、世界はガラリと変わる。けれど、変わるのはわたしのこころであって、世界ではない。しばらくは、その変わらないことが、どうしようもなくつらいが、変わらないその世界は、親しい人が暮らし、愛した世界でもある。「さよなら」をしたあとで、わたしは、その人が暮らした街で、家で、もしくは、そことは違う遠い場所で、その人がくれた愛情とともに、ゆっくりと生きていく。
p130
便利で早くて、邪魔にならないのはいいけれど、本の、文学のいちばんの魅力は、その対極にあるのであって、本をいそいで手に入れて、いそいで読まなければいけなくて、ましたや生活のなかに置いておきたくないのであれば、そもそも、本なんて必要ないのだ。
p156
ぼくには、自分のかなしみのことはわかるけれど、ほかの人のかなしみのことはわからなかった。そう理解できたことが、いってみれば、被災地を見てまわり、いろんな人の話を聞いて、ぼくが学んだことでもあった。
沢木耕太郎
『バーボン・ストリート』 -
出版社を立ち上げた文学好きの若者の自伝。
本、本屋に対する愛情が伝わってきます。
ずっと続けていけるよう応援しています。 -
今ちょっと話題の個人出版社、夏葉社さんの社長にして社員1名、島田潤一郎さんが自らの体験を語った本です。
訥々とした語り口で、親しいいとこを亡くしたことをきっかけに、出版社を立ち上げた経緯が述べられます。
もし、著者が就職して忙しく働いていたら、いとこの死をきっかけに本を出そうと思わなかったのかもしれません。作家志望で就職出来ず(本人もあまり就職する気がなかったのもありますが、就職が大変厳しい時期だったのもあるのでしょう)それがきっかけで起業し、本人が納得のいく本を作っていく姿はまぶしくもありうらやましくもあり。
起業家としての文もいいですが、一人の本好きとして、青年としての文もよかったです。
とてもいい本でしたが、まだ夏葉社はこれから成長していくだろうし、著者もまだこれから語ることが増えていくのだろうと思うので今は星3つで。 -
手探りで進んでいく中に、人とのつながりができていく。
一人で本を出版しようと思い立ってからの経緯。
自分から動くこと、人が助けてくれること、応えてくれること、
何かをやることで失敗も苦労もあるけれど喜びも多い。