トランプがはじめた21世紀の南北戦争: アメリカ大統領選2016

著者 :
  • 晶文社
3.77
  • (4)
  • (11)
  • (5)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 92
感想 : 11
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794969484

作品紹介・あらすじ

2016年11月、アメリカの大統領にトランプが選出された。メディアや専門家の予想を大きく覆すものだった。これから世界はどのようになっていくのだろう。日本にはどのような影響があるのだろうか。本書は、予備選からはじまる、この長い選挙のレポートであり、アメリカで何が起こり、何が分断を生んでいるか分析していく。
著者の渡辺さんはボストンに長く暮らし、民主党、共和党の両陣営のイベントに参加し、さまざまな人にインタビューを試みた。SNSの動向などにも目を配りながら、ナマの声をひろっていく。また大統領選の仕組み、南北戦争時からオバマまでのアメリカの大統領選の歴史、人々の投票行動、どんな利害関係や、思想的心情などがあるのを分析。専門的には見えない、極めてリアルはアメリカの一側面がわかる。
トランプの支持者は、プアホワイトのほか、高額所得者の白人も多いという。1950年までのアメリカの栄光を忘れられない人々がトランプを支持している。反トランプ派にしてみれば、暗黒の時代が始まろうとしている。そのような状況下、リベラル派はどのように希望を抱いたらいいのか、対話の可能性はどこにあるのか。一市民であり、移民である著者は全編にわたって問いかけている。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • アメリカ大統領選がどのような仕組みなのか、また2016年のトランプ大統領誕生の裏には何があったのか、選挙の現場を取材した著書による詳細かつリアルな解説でとても興味深かった。アメリカ大統領選に向けて民主党候補選びが佳境を迎えているこのタイミングで読めて良かった。そして、選挙人を介するがゆえ有権者の投票数が必ずしも選挙結果に反映されないという難しさはあれども、国の代表を選ぶ過程に国民が直接関われるアメリカという国がとても羨ましく感じた。

  • アメリカ在住の著者による、大統領選挙の様子を記したエッセイ。一つの国の中にも様々な考え方の人が存在し、大統領選挙の中で反目し合う様が肌感覚で書かれており、多様性を内包するということの難しさを感じた。

  • エッセイスト、洋書レビュアーである在米の著者が2016年の大統領選を追った内容。政治学者やジャーナリスト・アナリストの書いたものとはまた違うルポルタージュ的な視点を興味深く読みました。著者の根っこはリベラル系で民主党支持と思いますが、トランプへの批判だけではなく、その対極に位置するサンダース支持者の極端な行動についても触れているところはバランスが取れておりフェア。
    読後に著者のTwitterアカウントをフォローしたところ、バイデン本を構想中とのこと。出たら読んでみたい。とかくバイデンに関する日本語の情報は薄いですからね…現在のところ。

  • 政治

  • トランプ現象が一体なんなのかを幅広く俯瞰しておりなにが起きていたかがよくわかる良書。さらに理解を深めたい人のために他の書籍の紹介もあり、今のアメリカを理解したい人にはまずはここから入るといいんじゃないかと思う。

  • 米大統領戦について現地での肌感覚も含めた詳細なレポート。トランプ現象が何だったのかよく分かる良書

  • 振り返れば昨年のアメリカ大統領選挙では、みな楽観的に過ぎると思いつつも、最終的にはヒラリー勝利を予想していた。私もまた、甘ちゃんの楽観主義者だったのだろう。
    実績・人格・政策・経歴どれを取ってもヒラリー以外ありえないが、ただヒラリーは「女」である。この一点だけをもって、「何がなんでもヒラリーはNo!」という層が、最大で人口の半数存在しうるのである。実績・人格・政策・経歴だけを取って「トランプはありえないよwww」と言ってのける楽観主義者たちが、個人的にはそれこそ「ありえない」と思えてならなかった。苛烈な女性差別が今なお残る、というか解消される——いや、解消「しようとする」意志すら微塵も見せない世界に生きていて、なぜそんなに楽観的でいられるのか。
    しかしさすがに、実績・人格・政策・経歴においては大差がつきすぎている。自身が白人の男でなければ、そして相手が女性でなければ、候補にすらなりえなかったレベルである。
    あげくダメ押しの、投票日直前の絵に描いたようなセクハラ発言。決まった、と私は思った。
    さすがに、トランプの目はなくなった。馬鹿な男だ、それさえなければ「もしかしたら」があったものを、と。女をバカにする者が、女で足をすくわれた、と。

    …結果はご存知のとおりである。

    その後のフランス大統領選挙など、お話にもならなかった。極右ガー、ルペンガーという煽動に、お前たちは何を言っているのか、とあきれかえった。実績・人格・政策・経歴で勝るヒラリーですら破れなかった壁を、女である「うえに」極右「でも」あるルペンごときが、破れるはずがないではないか。

    そんなわけでトンデモ男が超大国の大統領に収まったわけだが、その陰にはもう一人のトンデモ男がいたんだよ、というのが本書である。
    その名はバーニー・サンダース。長く孤高の偏屈政治家をやってきて、古稀も過ぎて突如大舞台に躍り出し、現実感皆無な「ぼくのかんがえたさいきょうのせいさく」を振りかざして若い男たちのありあまる暴力衝動を革命熱に変えて浮かれさせ、リベラル層を真っ二つに引き裂いてヒラリーを背中から機銃掃射した「戦犯」だ。
    「差別を許さず、人権を守る良識派」を任じつつ、遠くの国の男性の苦境には唾飛ばして激論を交わしても、隣にたたずむ女性の苦境には無関心どころか、積極的に踏みにじりまくっている男は多い。サンダースはまさしくそういうリベラルであり、そういうリベラル男性の支持を集めた。
    ヒラリーの実績・人格・政策・経歴がどうであろうと、「とにかく女が大統領になるなんて許せない!」という層は、トランプ支持者以外にもいたのである。

    振り返れば昨年のアメリカ大統領選挙で、私は決定的に、この世界に絶望した。
    人口の半分を足蹴にしている社会で、どんな「マイノリティ差別反対!」を叫んでも、空疎でしかない。
    男どもよ、己の足元をまず、顧みよ。

    2017/5/19読了

  • 170421図

  • 米国の政治の大統領選の仕組みをおさらいし19世紀の南北戦争(ここに現在の共和党と民主党の立場が逆だったという衝撃の事実あり!)を振り返り、トランプ、サンダース、ヒラリーとその支持者により米国の分断を説明し、予備選、本選とその著者が足を運んだ演説会やマスコミ報道をその背景から詳細に説明していて、トランプ大統領誕生の軌跡がとても良く分かります。ただ、堤未果氏のように、オバマ大統領は『薬価交渉権を取り戻す』ことを公約に掲げたにもかかわらず取り下げ、オバマケアでもうけたのは保険会社や製薬会社ばかりとの批判もあるなか、オバマ大統領を継承するヒラリー支持が濃厚にでている著者の姿勢にはやや疑問が残ります。 いやー、米国のことはよう知らんけど。。。

  • アメリカ大統領選の仕組み、歴史から直近の選挙までを分かりやすく説明。集会に実際に参加した著者ならではの生の米国民の様子や分断のされ方がうまく伝わってきた。

全11件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

エッセイスト、翻訳者、洋書レビュアー。1995年よりアメリカ在住。
自身でブログ「洋書ファンクラブ」を主幹。年間200冊以上読破する洋書の中からこれはというものを読者に向けて発信している。
2001年に小説『ノーティアーズ』(新潮社)で小説新潮長篇新人賞受賞。翻訳書には、『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(糸井重里監修、日本経済新聞出版)、スナイダー『毒見師イレーナ』(ハーパーコリンズ・ジャパン)、ソルニット『それを、真の名で呼ぶならば』(岩波書店)など。著書に『新・ジャンル別 洋書ベスト500プラス』(コスモピア)、『ベストセラーで読み解く現代アメリカ』(亜紀書房)、『アメリカはいつも夢見ている』(KKベストセラーズ)など、多数がある。

「2023年 『男性の繊細で気高くてやさしい「お気持ち」を傷つけずに女性がひっそりと成功する方法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

渡辺由佳里の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×