大量絶滅がもたらす進化 (サイエンス・アイ新書 152)

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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784797344073

作品紹介・あらすじ

最初の生命が地球に誕生してから、全生物の70〜90%以上が死滅する大量絶滅は、わかっているだけでなんと5度も起こっているという。また世界の生物学者のうち約70%が、いま現在この地球上で大量絶滅が進行中だと考えている、とするレポートもある。本書では、5度にわたる大量絶滅がどのように起こり、生物がどう危機を乗り越えてきたか、また大量絶滅がもたらした生命の進化について検証する。

感想・レビュー・書評

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  • 進化論に関する学説をふまえて、地球史において過去5回起こった生物の大量絶滅を時系列に沿って説明しながら、生物がその危機をどう乗り越えて進化してきたのかについて考察した本。

    大量絶滅がおこった後、空いた生息環境の穴を埋めるようにその環境に適応した新い生物が進出してくる。絶滅の原因は、巨大隕石衝突説や超新星爆発の影響であるとする説などの宇宙規模の話まで諸説あるが、筆者は大量絶滅には周期性があり、マントル・プルームの周期的な浮上と関連があると主張していて、大部分は納得できるものだった。

  •  古生物学に造詣が深く、筋金入りの恐竜マニアとしても知られる著者らしい好著。

     過去の地球に少なくとも5度起こったという生物の「大量絶滅」(全生物の70~90%が死滅)をめぐる科学読み物である。

     5度にわたる大量絶滅はどのように起こったのかを考察するとともに、じつはその大量絶滅こそが生物の劇的な進化をもたらしたのではないか、という魅力的な仮説を追求した本にもなっている。

    《実は、大きな地質年代の区切り目には、かならず大量絶滅がつきまとっているのである。だがこうして大量絶滅が起こり、生態系に巨大な空白ができるからこそ、そのあとに生き残った生物が進出し、爆発的な適応放散を遂げることができるのである。
    (中略)
     地球史的なマクロのレベルで進化をとらえるとき、少なくとも飛躍的な生物の大進化をもたらすものが、この大量絶滅であることだけは断定できる。大量絶滅と大進化は表裏一体のものであり、大量絶滅を知ることなくして進化の実相をトータルにとらえることはできない。(第2章/98ページ)》

     全4章中、第1章は古典的進化論の歴史、第2章はゲノムサイエンスをふまえた現代的進化論の歴史を、それぞれ手際よく概観した内容になっている。この前半2章は、後半2章をより深く理解するための前準備のようなものである。
     ゆえに、進化論とゲノムサイエンスについて十分基礎知識をもっている人は、3章から読んでもよいかもしれない。私のようなシロウトには勉強になったけど。

     第3章は、過去に5度起きた「大量絶滅」の特色を探っていく内容。
     デボン紀、三畳紀、白亜紀など、5度の大量絶滅の舞台となった時代についての詳細な説明がなされる。それがあまりにも詳細すぎて、私には退屈だった。各時代にどのような生物がいたかなどという話は、古生物マニアや恐竜マニアにはたまらないのかもしれないが、マニアでない私にはついていけなかった。

     そして、最後の第4章は「大量絶滅の原因について考える」。この章がいちばん面白かった。

     本書の副題にもあるとおり、著者はここで、広く膾炙している「恐竜絶滅の原因は巨大隕石の衝突」という説を否定する。

    《天体衝突そのものは、たとえあったとしても(あったことは事実のようだが)白亜紀末の絶滅の主犯では決してなく、崩壊寸前の白亜紀生態系に、最後のわずかなとどめを刺しただけ、と考えるのが正しいようだ。》

     そのうえで、「マントル・プリュームの周期的浮上説」「超新星爆発(によって地球が大量の放射線を浴びること)説」「ガンマ線バースト説」など、大量絶滅の原因として挙げられてきた諸説を比較検討していく。

     そのうちどれが正しいとする答えを著者は出していないのだが、それは本書の眼目が原因の追求自体にはないからでもある。書名に言うとおり、大量絶滅が進化をもたらすという“不思議”に目を向けることこそが眼目なのだ。

    《地球生態系全体の組み替えをもたらすほど大規模な環境変動はまた、次の世代の生物相の登場を促す進化の加速要因でもあることを、われわれは忘れてはならない。先の例でいえば、ガンマ線バーストは少なくとも理論上、古生代シルル紀における植物の陸上への進出をもたらすきっかけになりうるものであり、植物の陸上進出がなければ節足動物の陸上進出もまたありえず、それを餌とする四肢動物(両生類)の進化も起こりえなかったわけである。》

     このへんを読んで私が思い出したのは、石森(石ノ森)章太郎の長編SFマンガ『リュウの道』である。これは私が石森SFの中でいちばん好きな作品で、核戦争後の荒廃した地球を舞台にしている。
     作中で核戦争勃発の原因として設定されているのが、「巨大隕石の落下を核攻撃と勘違いした某大国が、核ミサイルを発射してしまった」ということであった。

     そして、作中で「ゴッド」と名乗る謎めいた老人が、主人公の少年リュウに大要次のように言うのだ(本が手元にないのでうろ覚え)。
     
    《「それはおそらく、古代より何度もくり返されてきた進化の一プロセスじゃったろう。隕石の襲来は、人類の次の段階への進化を促すものじゃった。だが、人間どもは愚かにも核を使い、そのプロセスを歪めてしまったのじゃ」》

     石森のSFマンガには欧米のSF小説のパクリが多いらしいが、このへんの発想には元ネタがあったのだろうか。もし自分で考えたのだとしたら、すごいなあ石森。

  • 『大量絶滅がもたらす進化 巨大隕石の衝突が絶滅の原因ではない?絶滅の危機がないと生物は進化を止める?』読了 ★3.5
    https://www.amazon.co.jp/dp/4797344075/

    最近読んでいた古生物学、進化学を総まとめした本。
    タイトルはは「生物進化論全史」の方が正しいだろう。

    最初の進化論から最新の進化論まで時系列でまとめており、自分としては参考になりました。
    なりましたが、、これはすごいターゲットが狭い本。
    「種と科と属の違い」「K-T境界」「巨大隕石衝突説」ぐらい当然知っているでしょう?という感じで、前置き無しで、バシバシ専門用語を使ってくる。
    上級者向け(何の上級者だ!?w)

  • 10月新着

  • 生命発生以来、幾度かの大量絶滅を機に新たな種が発生し、また新たな主役となるという繰り返しの中、現在の生態系に至った。壮大なスケール感と歴史、膨大な時間の経過に感動を覚える。

  • 地質学史、古代生物史の現在の状況をさらった本。
    46億年の地球の歴史を振り返ると。
    まだまだ未知なことばかりなこと。
    今の世界で常識と思っていることはいままで簡単にひっくり返ってきたことがよくわかる。
    気温、絶滅、磁力線の方向など。
    人間社会、体、すべてが奇跡だとよくわかる。

    そもそも生物は嫌気性だった=酸素は毒。
    ただ酸素をエネルギーに変換する手段を得たことでことで(原核生物から真核生物に進化することで生命は単細胞から多細胞へと進化した。)
    それこそ。生物自体が原子炉で地球の環境を変えたのだ。

  • 題名から期待した内容ではなかった。

  • イラストがたくさんかつ綺麗で初心者(自分)が取っ付きやすい。
    言葉も理解しやすいです

  • 1、2章は面白かった。

    恐竜絶滅の原因として10年以上前からの持論、マントルプリューム説にまったく修正がないことは残念。

  • 大量絶滅が進化を促すという趣旨の新書。恐竜とかカンブリア紀とか好きな人は楽しめるのではないでしょうか。幾つかの学説が並立しているような事象については、紹介の仕方がちょっと偏っているきらいはありますが。

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著者プロフィール

金子隆一(かねこ りゅういち) 写真史家、写真集コレクター
~ 年 東京都写真美術館専門調査員、東京綜合写真専門学
校理事長、武蔵野美術大学非常勤講師などを歴任。
国内外の美術館、ギャラリーでも展覧会のキュレーションを多数手が
けている。
主な著者に『日本近代写真の成立』([共著]青弓社、年)、『イン
ディペンデント・フォトグラファーズ・イン・ジャパン』([共
著]東京書籍、年)『植田正治 私の写真作法』( ブリタニカ、
年)、『定本 木村伊兵衛』(朝日新聞社、年)、『日本写真集
史』(赤々舎、年)、『日本は写真集の国である』(梓出版社、
年)ほか。

「2023年 『インタビュー 日本の現代写真を語る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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