世界の辺境とハードボイルド室町時代

  • 集英社インターナショナル
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784797673036

作品紹介・あらすじ

現代ソマリランドと室町日本は驚くほど似ていた! 世界観が覆される快感が味わえる、人気ノンフィクション作家と歴史家による“超時空"対談。世界の辺境を知れば、日本史の謎が解けてくる。

感想・レビュー・書評

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  • 現代アフリカのソマリ人と室町時代の日本人はそっくり!時空を超えた両者の奇跡的な符合について、ノンフィクション作家と日本中世史専門の歴史家という、普通は接点を持ち得ない二人が心ゆくまで語り合い生まれた「現代の奇書」。対談を重ねるごとにスイングする二人の会話。異分野間の交流から生まれた新たな発見も!文庫のための追加対談もボリュームたっぷり。驚きと興奮に満ちた対談本。

    目次
    第1章 かぶりすぎている室町社会とソマリ社会
    第2章 未来に向かってバックせよ!
    第3章 伊達政宗のイタい恋
    第4章 独裁者は平和がお好き
    第5章 異端のふたりにできること
    第6章 むしろ特殊な現代日本

    著者等紹介
    高野秀行[タカノヒデユキ]
    1966年東京都生まれ。『幻獣ムベンベを追え』でデビュー。2005年『ワセダ三畳青春記』で第1回酒飲み書店員大賞を、13年『謎の独立国家ソマリランド』で第35回講談社ノンフィクション賞、14年同作で第3回梅棹忠夫・山と探検文学賞を受賞

    清水克行[シミズカツユキ]
    1971年東京都生まれ。歴史家。明治大学商学部教授。専門は日本中世史

  • 辺境作家の歴史家の対談。

    現代の辺境と室町時代の庶民生活の共通点から、ノンフィクションの書き方まで幅広いジャンルの話をしているが、二人の知識の豊富さで次々に新たな視点が提示されていて面白い。
    「ここ」ではない場所について考えている人たちの知識は興味深くて、自分の知らなかった世界を見せてもらえる。

    あとカバーの絵がとても良い。

  • この本では、
    「現代の辺境地域」と「日本の中世」に共通する
    行動や習慣を面白がる所から
    対談が繰り広げられていきます。    

    日本の中世と
    アジア・アフリカ諸国の共通点で
    興味深かったのが、

    1.倫理観
    日本の中世では複数の法秩序が重なっていたように、
    現代のアジア・アフリカ諸国でも
    近代的な法律と伝統的・土着的な法や掟が
    ぶつかり合い、それが相反しながら社会で成立している。

    2.未来の概念
     日本語の【先日・後回し・先々・後をたどる】は、
    「アト」「サキ」を使った言葉で
    未来と過去を指す正反対の意味がある。

    ソマリ語でも同じように使う「アト・サキ」に当たる言葉がある。

    日本の中世では未来はアトで背中側、サキは過去の意味しかなかった。

    3.恋の歌
    日本の平安貴族のように
    ソマリ人は恋愛の作法としての詩歌が伝統として残っており、
    歌を詠むことが男性のたしなみとなっている。

    放牧中に少し離れた所から歌を投げかけているらしい。



    まったく離れた時代や国で
    起こる人間の行動が
    似通ってくるということが面白く紹介されています。


    世界の辺境と呼ばれる人たちや
    中世の人が何故そう考え、
    行動するのかがわかってくると
    少し親近感が湧いてきました。

  • 辺境作家の高野さんと中世史家の清水さんの対談。最初は、本書の表題のように、それぞれが専門とする室町とソマリランドの生き方が似ているというところから話が始まるが、後半はそこから離れて人生論、作家論、文化比較論、日本人論・・と様々な話題に及んで飽きさせない。お二人の教養の深さも物凄い。

    一つ言えるのは、価値観はもとより多様だが、それは辺境にも転がっているし、過去にも転がっていて同様に面白いし、やはり今の価値観が絶対ではないことを常に相対視できるようにすべきということなんだろうと。

    30年前と今と、かなり価値観は変わってきているが、それもそれ、古代から中世、織田信長を経て江戸、そこから明治、戦前から戦後と結構ドラスティックに変わっている。変わるもんだと思って順応していくということなんだろうと思う。

  • 20210919読了

  • 現代の日本社会を相対化するのに役立つ話が満載。日本史や

  • ソマリランドで知られるノンフィクション作家の高野さんと、日本中世史を専門とする歴史学者の清水さんの対談。異色の組み合わせではあるが、これが見事な化学反応を起こし、とても面白い内容となっている。

    時間と空間の違いこそあれ、ソマリ社会も中世日本も、現代日本から見ればどちらも遠い異文化世界。むしろソマリ社会と中世日本のほうにこそ共通点が多いかも、という気づきから始まったこの対談。豊かな経験と強い好奇心で高野さんが打ってくれば、該博な知識で清水さんが当意即妙に返してくる。何といっても、お2人が楽しんで対話しているのが伝わってくるのがいい。

    古米と新米の話などトリビア的な知識も得られるし、鎖国と現代日本、NGOやNPOと現代日本など社会科学的に考えさせられるトピックもあるが、体系的学術書というわけではない。肩肘はらず、楽しく学ぶとはどういうことかを感じて読みたい。


  • 面白い。ノンフィクション作家の高野氏が世間に発見されかけている?

    世界の辺境に赴き、現代日本とは異なる感覚で生きている彼らを紹介してきた高野氏と、室町時代の学者が話す事で生まれるケミストリーが凄い。
    高野氏には前々から目をつけて、いつかもっと良い仕事をしてくれると思っていた。高野氏の性格なのだろう、本書でも語っているように難しく、固く文章を書かないのだ。しかしその文章やおふざけの中に深い洞察や見識も感じられており、いつか日の目を見るはずだと思って応援してきた。系譜としては近年ではその名は地に落ちたが本田勝一氏のような作家だと思っている。

    室町時代を想像する際に現代の日本人から彼らの生活を想像するのには限界がある。そこで本書で取り上げたテーマのように世界の殺人や略奪が日常として残っている辺境との比較をすることで日本の室町時代が見えてくる。

    本書は非常に知的好奇心をくすぐられる内容が多く含んでいる。また読書好きにはたまらないような数々の関係図書を紹介してくれているのが嬉しい。また本書で高野氏が読書家である事も披露されている。
    作家は固い文書を書かないと評価されない世界だ。高野氏にはそろそろそちらの世界に飛び立って欲しい。

  • タイトルにひかれて(ノーベル文学賞候補作家の小説ね)読んでみたけれど、内容がまったく入ってこない。10数ページで断念。

  • ●室町時代の日本人と、現代のソマリ人があまりに似ていることに驚いた私は、俺があって清水さんご本人と直接お会いする機会を得た。
    ●室町時代、幕府法など公権力が定める方があった一方で、それとは別次元の、村落や地域社会や職人集団の中で通用する法習慣がありました。それらが互いに矛盾していることもあって、訴訟になると、人々は自らに都合の良い法を持ち出して、自分の正当性を視聴していたんです。
    ●アジア・アフリカなんて、何かトラブルがあると、必ず誰かが中に割って入ります。全く関係なくても。「俺の顔を立ててくれ」って言って仲裁する。
    ●室町時代、贈り物にしても価値や量が釣り合うと言うことに徹底的にこだわる。「折紙」と言う金額を記した目録みたいなもの。
    ●「信長公記」を読むと、信長って正義とか公平をものすごく重んじていますよね。その辺もイスラム主義に見ているんですよ。
    ●信長の頃。それまでは銭中心の経済だったんですけど。貨幣経済から米経済に戻ってしまった。
    ●江戸時代の日本は、金と銀と銭の参加体制になっていくので、中世よりは銭が使われる領域は狭まっています。基本は石高生で、年貢は米だけ。小額取引は銭、高額取引は金と銀。東日本が金で西日本が銀。金一両って今で言うと100,000円以上の価値があるので、日常的にはゼニが庶民の間では使われていたと言う感じ。
    ●頬のヒゲを伸ばすのは、中国人に憧れていたから。
    ●比叡山延暦寺の焼き討ちはやってくれて良かったと言う話。相当な量の古文書が残っていたはず、中世史の研究はとてもめんどくさいことになっていた。
    ●歴史学者っていうのは古文書を読んで理解できないといけないので、独学ではなかなか難しい。在野の歴史学者って今はもうありえない。
    ●なぜアフリカに日本の中古車が売られるのか。日本以外の国では、中古車の値段はそんなに下がらない。日本だけは持ち主が変わると価格が下落する。しかも丁寧に乗るから、質の良い中古車がタダ同然で手に入る。

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著者プロフィール

1966年、東京都八王子市生まれ。ノンフィクション作家。早稲田大学探検部在籍時に書いた『幻獣ムベンベを追え』(集英社文庫)をきっかけに文筆活動を開始。「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それを面白おかしく書く」がモットー。アジア、アフリカなどの辺境地をテーマとしたノンフィクションのほか、東京を舞台にしたエッセイや小説も多数発表している。

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