イノベーションへの解

  • 翔泳社
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  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784798104935

感想・レビュー・書評

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  • 前作「イノベーションのジレンマ」の実践編との位置づけ。「ジレンマ」では、合理的な判断を重ねた優良企業が、その合理性ゆえに破壊者に敗北していく様子をドラマチックに描いた非常にユニークな内容であったが、本書では新市場型破壊という陳腐な概念が持ち込まれ、より広い状況に対応する理論となっている。それだけに前作ほどのインパクトが薄れた印象。
    独特の用語を用いているので惑わされるが、片付けたい用事=潜在顧客ニーズの解決を優先せよ、製品ライフサイクルの初期には相互依存型アーキテクチャ=内部摺り合わせが有効、など言っていることは至極常識的なことばかりである。
    それでも6章以降は経営戦略に必要な考え方が極めて論理的にまとめられており、非常に参考になる。
    自社の現在の状況が、悪循環に陥ったかつての優良企業の典型例に恐ろしいくらい合致しているが、経営陣が”経験の学校”で学んでいなかったのが元凶のような気がしてきた。今からでも遅くないので、まずは本書を読んでほしいと切に願う。でも彼らは今さら勉強なんかしないんだろうな。

  • 優良企業におけるイノベーションがはらむ落とし穴を実証し、衝撃を与えた名著『イノベーションのジレンマ』の続編。今回は破壊的な技術革新で新事業を構築し、優位企業を打ち負かそうとする側に重きを置いている。実際に、どうすれば最強の競合企業を打ち負かせるのか。どのような製品を開発すべきか。製品の設計、生産、販売、流通のなかでどれを社内で行い、どれを外部に任せるべきか…。きわめて具体的な意思決定の「解」が提出されている。

    第1章 成長という至上命令
    第2章 最強の競合企業を打ち負かす方法
    第3章 顧客が求める製品とは
    第4章 自社製品にとって最高の顧客とは
    第5章 事業範囲を適切に定める
    第6章 コモディティ化をいかにして回避するか
    第7章 破壊的成長能力を持つ組織とは
    第8章 戦略策定プロセスのマネジメント
    第9章 良い金もあれば、悪い金もある
    第10章 新成長の創出における上級役員の役割
    終章 バトンタッチ

  • これまでで最も感銘を受けたビジネス書は?と問われれば、「イノベーションのジレンマ」と答えることにしている。大きな成功をおさめた企業が、その成功のゆえに、リソース配分を成功事業の維持発展につぎ込むという合理的判断をせざるをえず、破壊的新規サービスには自ら乗り出せない。しかし、技術の進歩による破壊的新規サービスの利便性向上と、同時に成功既存事業に対する顧客の満足度が一定レベル以上増加しないことから、やがては破壊的新規サービスが成功既存事業を逆転し、市場を奪う。

    本書はこのイノベーションのジレンマを、新規事業者の立場にたって、既存成功事業者に挑む際の具体的な戦略について解説している。内容はもちろん、イノベーションのジレンマに基づいているので、前作ほどの目新しさは感じないものの、各戦略は具体的で理解しやすく、また、前作に対する理解を深めることができる。

  • イノベーティブな企業に求められる行動特性。イノベーションには持続と破壊があり、どちらを選択するかは置かれている状況とその企業次第。

  • 顧客そのものではなく、顧客が置かれている状況、求めている成果でセグメントする。

    ニーズは片付けるべき用事。

    シェークは朝はドライブのお供に、夜は子供へのご褒美に雇われていた。同じ商品でも求められている成果が違う。これが属性でセグメントできない理由。

    シェークは競合のシェークの売上を奪ってもシェア獲得にならない。単なる値引き競争を生むだけ。無消費や仕方なく使われている他の商品の売上を奪う必要がある。(求人なら派遣?)

    コダックの使い捨てカメラ。画質はイマイチだったが、ユーザーは『写真が1枚もないこと』に比較の基盤を置いたため、この画質で満足した。(シェークのカロリーが気にならないのと同じ)

    機能を付けすぎるとコモディティ化する。しかし企業はそうした失敗を繰り返す。背景には、的を絞ることへの不安、定量的分析の要求、チャネル構造、広告が製品のターゲットを状況ではなく顧客にしていることの対象の4つがある。

    デジカメは売れるのに、赤目補正のソフトは売れない。結局、写真のクオリティは思い出を残すこと以上には求められないケースが多い。

    解決すべき用事の優先順位が、商品によって変化することはほとんどない。無消費者なら余計に。

    用事を片付けたいが、市販製品が高すぎたり、複雑すぎるため、自力でできずにいる時に無消費は発生する。彼らは不便で高くつく方法、または満足いかない方法でそれを片付けることに甘んじるしかない。

    規模が実証できるのはすでに存在する確立した市場であり、資源獲得のため社内起業家が説得力のある論拠を示そうとすること自体が間違い。

    組織にある価値基準が破壊する者とされる者の間にある。ある組織で評価されないことが、別の組織で評価される。ここにモチベーションの非対称性が生まれる。

    成長率25%を持続するためには、売上高4000万の会社は1000万でいいが、4000億の会社は1000億が必要。この会社には1000万にうまみを感じなくなる。

    組織の能力は最初は人材にある。それが成功を収めて成熟するにつれてプロセスや価値基準となり、企業文化になっていく。そうなると『当たり前』が生まれ、変革は困難になっていく。

  • 前書「イノベーションのジレンマ」の改訂版と内容が一部重複しているので、本書だけ読んでも全体がわかるかな。
    製品やサービスを改良・改善していくのには持続的な技術と破壊的な技術があって、持続的なのか破壊的なのかは「相対的」なもので、ひとつの技術がある企業にとっては持続的でも別の企業から見ると破壊的となることがある。
    いままでの成功体験からつながるのは持続的であるが、この持続的な技術はいつかは顧客の要求レベルを超えてしまい、顧客はその性能向上に価値を見出さなくなり、価格の上乗せを拒否する。
    破壊的な技術は最初は(主要な)顧客の要求を満たさないかもしれないが、いつかは満たすようになる。
    破壊的な技術は今までのプロセスや価値観のままでは失敗する。プロセスや価値観は組織に根付いている。
    製品やサービスは顧客の要求に満たしていない時と(要求以上に)満たしているときがある。
    要求を満たしていない時には相互依存設計が性能向上するには最適で、そのときには顧客はブランドを重視する。
    市場にある製品が顧客の要求以上の性能を持つと、モジュール型設計へ移行しコスト削減などを目指さなくてはいけなくなる。(コモディテイ化)でそのとき上位か下位のレベルで逆にコストや性能向上のために相互依存設計による逆コモディティ化が起こり、ブランドもそちらに遷移する。
    コア・コンピテンスなんてのはまやかしで、それ以外のものを切り捨て(売却や移管)していくと、結局は昔はブランドだったカンバンだけが残ることに。
    新規事業を任す人材には、失敗していようが新規事業を立ち上げた経験を持っていることが大事で、じゃないとその新規事業は失敗する。

    波乗り(サーフィン)みたいだなと、やったことないけど。大きな波ひとつに乗れて快調でもいつかはその波はつぶれてしまう。つぶれる前の勢いがあるときに次の(今、大きいのではなく)大きくなりそうな波に移っていって自分のスピードを保つ。波に乗る技術と波に乗ったままにする技術が違くて企業は基本アホなのでどちらかの技術しか覚えていない。

  • 既存の組織の中でイノベーションをどのように育てるか、逆に言えばどのようにしてイノベーションはつぶされるのか。それはよく見かける光景なんだけど、このように整理されるとなるほどなと改めて納得させられる。

  • 『イノベーションのジレンマ』『イノベーションのDNA』と併せて読むと理解が深まる。非常に説得力のある研究成果です。

  •  「イノベーションのジレンマ」に続くクリステンセン教授のイノベーション論第2段。前作が「破壊的イノベーション」の理論構築を主眼に述べられていたのに対して、本作では実践面でのポイントを解説している。
     クリステンセン教授は2011年のThinkers50で「最も影響力のある経営思想家」のトップに選出されている。「破壊的イノベーション」戦略論が多くの人を惹きつけるのは、そのダイナミズムからだろう。「破壊的イノベーション」は市場を動的に捉えているだけでなく、組織の中での意思決定プロセスも組織力学を考慮した提言をしている。
     また「イノベーション」という経営戦略論の最先端分野を扱いながら、ドラッカー、ポーター、バーニー、ミンツバーグ等、多様な論点を包含しており、経営戦略論の全体像を理解するのにも役立つだろう。
     本書には「目からうろこ」が落ちるような記述が随所にあり、経営戦略バイブルの一冊に加える価値がある。

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