建築士・音無薫子の設計ノート あなたの人生、リノベーションします。 (宝島社文庫)
- 宝島社 (2017年2月7日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (319ページ)
- / ISBN・EAN: 9784800267382
作品紹介・あらすじ
産後クライシス(?)で妻子に出て行かれた男性、サモエドと暮らす老夫婦、自宅カフェ開業を考える二人の主婦…音無建築事務所には、今日もさまざまなワケありクライアントが訪れる。天才的な観察眼を持つ音無薫子は、彼ら自身も気付いていない真の問題に、建築士として切り込んでいく。「あなたに必要なのはリフォームではなく、リノベーションです」個性的な面々が織りなす、大人気"建築"ミステリー、第2弾!
感想・レビュー・書評
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作品そのものは非常によみやすい仕上がりになっていると思います。建築、設計をテーマに据えており個人的には楽しく読むことができました。
女性建築士とちょっと頼りない学生インターンという登場人物の組み合わせも悪くはないんですが、いかんせん作中のセリフや行動パターンからイメージされる薫子の人物像とカバーイラストに描かれた薫子の印象とがアンマッチすぎると感じます。イラストのイメージを持ちながら読み進めてしまうと違和感が・・・。
また薫子が依頼主のもつ心の闇や過去の秘密をつぎつぎと解き明かしてゆく部分については作中にもっとヒントが書かれていると読者も一緒に謎解きする楽しさがあるのですが、いきなり薫子が”答え”を提示してくるつくりになっていて読み手としてはちょっと唐突な印象がぬぐえません。
そのせいか、薫子には”弱さ”が感じられず魅力が半減しているかなと思いました。この点、過去の苦い記憶をひきずっていた月見里のほうが魅力的なキャラといえそうで、むしろ「建築探偵月見里の事件簿」ってことで、月見里を主役に、助手はインターンの女子大生、とした作品にしたほうがオモシロイかも・・・。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
いまいち自分に自信のない弱気だが真面目で誠実な建築を学ぶ大学生の今西と、彼をインターンとして雇っている個性派の建築士である音無薫子、その助手の月見里、オーナーのユカリママなど個性的な面々が、「リノベーション」で依頼主の人生をささやかだけれど前向きにするリノベーション小説、第二弾にあたる。
音無が描く設計プランはどれも破天荒で、現実的にはあり得ないだろうな、と思うものばかりだけれど、前作同様、リノベーションする前と後の間取り図が載せらえていて、何が変わったか、どういう設計思想でこうなったのか、と見比べるのは面白い。
本作では、因縁のある設計事務所の過去や騒動なども語られ、話がふくらんで、きちんと落としどころを見つけて着地した感じ。 -
建築×ミステリー。新鮮な感覚で読めた。
建築について易しい部分を知れるだけではなく、ちゃんとミステリー要素もあり、ハッとさせられた。
また、Before Afterの見取り図も載っていて、分かりやすかったし、見取り図見るとワクワクした。
なぜか2巻から読んでしまったが、1巻もちゃんと読みたい。
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謎解きではなく隠れた要望を探して解決するところが面白いです
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シリーズ二作目
今回は星見里さんとか薫子さんの過去もちょっとわかる
壁紙に限らず、家は住んでいた人の様々なものを写す鏡のようで
どんな想いで暮らしていたのかがわかるんだね
うちも数年ではあるけど住んでいた痕跡がところどころに残っているんだろうなぁ
子供がいない夫婦がペットを拠り所にするというのはよく聞くけど
個人的にはどうなのよ?それ?って思う
けど、今回の件に関しては、相手が幸せだったかどうかを自分が納得できれば問題ないのかね
明確な意思疎通ができないペットだからこそ相手の心情は自分の思い込みによるところが多い
なので、ペットと人の組み合わせ毎に最適な関係は異なるというのはわかる
鏡合わせの家って、こんなケースに限らずあるっちぁああるよね
コピペで複製したみたいな町並みの住宅街とか
そんな中で妙な対抗意識があったりすると厄介でしょうねぇ
作中ではフルールに対してネガティブな描写があるけど、あんな会社も一長一短あって
場合によっては便利に使えると思う
個人的にはもしリフォームを頼むとしたら薫子さんのところじゃなくてフルールの方に行くと思う
システマチックに要望を叶えてくれるならそれはそれでいいと思うんだよね
マニュアル設計でもいいじゃないか、ある程度のクオリティが約束されているならね -
すごい好みの話でしたー!特に最後のフルールの話が好き。建物が変わることで、人間関係も円滑になるのならこんなにいいことは無い。派遣でフリーアドレスの会社に行ったことがあるけど、自分は絶対に無理だなと思ったので、最後の事務の人の意見にとても共感した。
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妻が出て行った家、犬のために、困った隣人
自由すぎる自由。
結婚すれば家族が増え、中心になるのは違うもの。
ついていけない人が、肩書だけの『親』になる。
ものすごく通関する話です。
一人でも二人でも、変わるときは変わるのだから
そこを無視し続けるのは駄目です。
ペットが中心となった家に、夫はどう思っているのか。
そこも気になっていましたが、確かに犬の方も
気になる心情です。
最後には思い切りすぎたリノベーションに驚きです。
どうしてこうも筒抜け? と思ったら…。
最後の落ちに納得しましたが、確かに隣さんは甘い。
人に任せていれば、というのはある意味正解ですが
決定権を下すのは自分。
責任は持たねばなりません。
あの設計事務所の、まさかの『代表』の話。
そういうカラクリを作っただけでも凄いと思いますが
ここまでの回でちらちら出てきていたお悩み相談室も
謎が解けてしまうという。
さくっと正体が出て、さくっと釘挿してましたが
一安心、でしょうか?? -
この本、次男が建築系の職に就きそうだという時期に、たまたま目にした背表紙に惹かれて買ったのが、もう数年前になるのでは…?
暇つぶしに…くらいの気持ちだったかと思い出す。
の割に、特に後半引き付けられた。
今読み終わって、様々なことに思いを巡らせている。
逃げ出したような感じで退職して、無職生活2年目の今の宙ぶらりんな私自身に投げかけられた諸々の言葉。
購入してすぐ(仕事に没頭していた頃)に読んでいたら、面白かった…で終わったかもしれないけど、今の私だから響いた気がする。
少し勇気を持って行動してみようかと背中を押されたような…そこまでのパワーはなかったけど、このままではだめかと思うに至った。 -
設計行為そのものをラノベ、エンターテイメントにするとは! という驚きが、まず。強引さはありつつ、楽しく読めた。
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家の間取りなどを見て考えるのは子どもの頃から好き。この話は、家のリフォームというよりリノベーション。どう違うの?というと、あのテレビのビフォアフみたいな、と言うとわかりやすいかな。単純にオーナーの希望の声だけではなく、今の家からその人の暮らしぶりとどうなりたいかを推し量る。そんな建築士と、彼女を取り巻く建築士仲間やインターン学生たちとの、リノベあれこれ。ビフォアフで間取り図が載っているのがうれしかった。