三度目の殺人【映画ノベライズ】 (宝島社文庫)

  • 宝島社
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784800273475

感想・レビュー・書評

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  • 「真実」
    本当の事が最後までわからないで終わる。どうにでも解釈できるようで、だけど事実として殺人はあった。

    自分に置き換えて考えてみれば、事実を100%の真実としてその時の感情や行動をも人に話せるだろうか?
    無理な気がする。

    相手によっては理解されようがない事は伏せるだろう。
    相手によっては美化するわけでもなく無かった感情や思考も付け足したりもするだろう。
    相手によっては邪魔する感情が邪魔しだす。
    相手によってはその時々で自分の感情を伏せ、相手に併せるように時と場合を使い分ける。

    結局の処、相手によってほんの数ミリかもしれないが行動や言動は変わるだろう。
    対人関係において深く追求すれば相手にもよるが主人公の重盛のようにノイローゼ気味になる。
    自分としての一定のスタンスを強く持ち、なるべく思考も感情も嘘がないようにしていかないと辻褄の部分が揺らいでしまう。
    そう再認識させられる作品だった。



  • 「本当は、なんで殺したと思ってるんですか?本当のことに興味はないかな、あなたはー。」

    二度の殺人を犯した三隅と衝撃の秘密を抱える被害者の娘咲江に翻弄される重盛。三度目の殺人とは誰が誰を殺すのか…
    この作品はスッキリした推理や検事と弁護士の激しい攻防を期待してはいけない。

    同じ殺しなのにお金目当てより怨恨の方が罪が軽くなるらしい。法律とは不思議なものである。
    そしてその法を利用し、被告人の有利になるようにシナリオ、法廷戦術を考える、それが弁護士の仕事なのだ。そこに真実がなくてもいい。怖い闇を見た気がした。

    重盛もそんな弁護士だったけど、三隅と出会い何かが変わる。真実を、三隅を知りたくなり、三隅の意思を尊重し、そして…。

    最後まで三隅に翻弄されラスト重盛は悶々とする。ノベライズでは映画よりも悶々とする。闇がさらに増えた感じ。救ったのか裁いたのか…本当の事は結局ノベライズでもわからない。
    わからないからこそ、人を裁くことの意味について深く考えさせられた作品だった。

    重盛が見た夢が興味深い。十字架と大の字。あの雪のシーン大好き。

  • 映画を観てモヤモヤしたので読みました。
    読んでも事件の真相はきっとわからないんだろうなぁ...この作品がいいたいところは真相は何か?ではないんだろうなぁ...と思って読みましたが 映画を見終わった後と読後では少し印象が変わったかなっ...
    活字にすると映画では何気なく観ていたところの情景や登場人物のしぐさなどがより入り込んできたような気がします。
    咲江の「ここではだれも本当のことを話さない」という言葉は印象的で何のために裁判をするのだろうかと思ってしまう。裁判にかかわる人達はそれぞれに信念を持ってやっているのだろうが 私には人を裁くなんて精神的に出来そうにありません。けれどそれをやっている打算的じゃない人達もこの世の中にはちゃんといるんだよなっ、と...
    表紙の3人の顔の返り血に頷けます。

  • 「本当のことを教えてくれよ」…『そして父になる』の是枝裕和監督作品、真実の小説化。弁護に「真実」は必要ない。そう信じ、勝利するための“法廷戦術”を追求してきた弁護士・重盛。しかし、ある事件の被疑者・三隅は、供述を二転三転させ、重盛を翻弄する。そして次第に明らかになる、三隅と被害者の娘の関係。本当に裁かれるべきは、だれか。心の底から「真実」を求め始める重盛の前に浮かび上がるものとは。

  • 映画監督の「是枝裕和」とノベライズ作家の「佐野晶」の共著『三度目の殺人』を読みました。

    映画の方は観ていないのですが、予告編を観ると面白そうだったので、期待して読みました。

    -----story-------------
    『そして父になる』の「是枝裕和監督」、最新映画。
    出演・「福山雅治」、「役所広司」、「広瀬すず 」他。

    小説で浮かび上がる「真実」のその先――。

    「本当のことを教えてくれよ」
    ――弁護に「真実」は必要ない。
    そう信じ、裁判に勝利するための“法廷戦術"を駆使してきた弁護士「重盛」。
    しかし、担当した事件の被疑者「三隅」は、会うたびに供述を二転三転させ、「重盛」を翻弄する。
    そして次第に明らかになる、「三隅」と被害者の娘の関係。
    なぜ殺したのか。
    本当に殺したのか。
    本当に裁かれるべきは、だれなのか。
    心の底から「真実」を求め始める重盛の前に浮かび上がるものとは。
    -----------------------

    映画監督「是枝裕和」と俳優「福山雅治」が再タッグを組んで、昨年9月に公開された映画『三度目の殺人(英題:The Third Murder)』のノベライズ作品です。


    勝利にこだわる弁護士「重盛(福山雅治)」はやむを得ず、30年前にも殺人の前科がある「三隅(役所広司)」の弁護を担当することになる… 解雇された工場の社長「山中」を殺し、死体に火をつけた容疑で起訴された「三隅」は犯行を自供しており、このままだと死刑は免れない、、、

    「重盛」は、どうにか無期懲役に持ち込もうと調査を開始するが、「三隅」は会う度に供述を変え、動機が希薄なことに「重盛」は違和感を覚える… やがて「重盛」が「三隅」と被害者の娘「咲江(広瀬すず)」の接点にたどりつくと、それまでと異なる事実が浮かび上がっていく。

    「山中」を殺したのは「三隅」なのか… それとも、、、

    想定できるのは、

    ○「三隅」が「咲江」のために殺人を犯した

    ○「咲江」が犯した罪を「三隅」が被った

    ○2人で犯行を行い「三隅」が罪を被った

    なのですが、真相は藪の中なんですよね。

    でも、何よりも「是枝裕和」が言いたかったのは、法廷は真実を解明する場所ではない… ということなんでしょうね、、、

    裁判官、検察官、弁護人は、三者とも司法という同じ船に乗り、期限までに目的地にたどり着くことを優先し、真実の究明は二の次ぎで、真実が何かわからないまま裁きのシステムだけが維持されている… 考えてみると、恐ろしいことですね。

    そして、タイトルになっている『三度目の殺人』って、司法による殺人(死刑となった「三隅」)のことを指しているんですよね… これまで、あまり理解していなかったことだけど、本書を読んで考えさせられたなぁ。

    映画も観てみたいけど… 先に本書を読んでしまったので、映画の方は物足りなさを感じるかもなぁ、、、

    書籍の方が、人物の背景や感情、細かな心理描写、難解な法廷論争のキーワード等が理解しやすいからなぁ… ちょっと迷いますね。

  • 三隅の不可解な行動が
    続きが気になるポイントになった。
    「なぜ三隅はそんなことを言うのだろう」
    と何度も疑問に思った。
    結局「本当のこと」という事実は分からず
    誰がお父さんを殺したのかが
    明確に記されていないけど
    わたしの予想は咲江が殺してしまったのではないか、
    または三隅と共謀して殺したのではないのか
    と思っている。
    たくさんの人が「人を裁く」ことに関与し,
    その裁き方が正しかったのか。
    今度映画を見てみたいなと思った。

  • え〜っと……ラスト、難しくてよくわからなかったんですけど…(^_^;)
    映画、観てみたいなぁ〜〜。。。

  • 日本アカデミー賞、「三度目の殺人」が六冠!で映画は見ていないが興味を持ち図書館で借りて読む。誰が三度目の殺人?判決を下した裁判官?三隅を庇った重盛?ここでは誰も本当の事を話さない。司法制度は「生まれてこなければ良かった人間」を判別し裁く。「殺すヤツと殺されるヤツは生まれた時に決まっている」はインパクトのある言葉だが果たして本当にそうだろうか。内容も「そして父になる」同様中途半端な終わり方で不完全燃焼で、全体的に映像と違い文章で伝えるのはまた別の才能が必要なのかなという感想。

  • 面白かった。映画でもいいと思う。

  • 二人目の殺人を犯したとして裁判で裁かれることになった泉(役所広司)、物語の展開上真実は最後まであきらかにされなかった。そのスッキリしないモヤモヤ感はずっと心に残った。死刑が確定している被告が犯人でなかったら被害者は泉になる。「3人目の殺人」ほんとうの犯人は?3人目って誰のことだ。泉だ。

著者プロフィール

著者)是枝裕和 Hirokazu KORE-EDA
映画監督。1962 年東京生まれ。87 年早稲田大学第一文学部卒業後、テレビマンユニオン に参加し、主にドキュメンタリー番組を演出。14 年に独立し、制作者集団「分福」を立ち 上げる。主な監督作品に、『誰も知らない』(04/カンヌ国際映画祭最優秀男優賞)、『そ して父になる』(13/カンヌ国際映画祭審査員賞)、『万引き家族』(18/カンヌ国際映画 祭パルムドール、第 91 回アカデミー賞外国語映画賞ノミネート)、『真実』(19/ヴェネ チア国際映画祭オープニング作品)。次回作では、主演にソン・ガンホ、カン・ドンウォ ン、ぺ・ドゥナを迎えて韓国映画『ブローカー(仮)』を 21 年撮影予定。

「2020年 『真実 La Vérité シナリオ対訳 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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