初期室町幕府研究の最前線 ここまでわかった南北朝期の幕府体制 (歴史新書y)
- 洋泉社 (2018年6月4日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (283ページ)
- / ISBN・EAN: 9784800315083
感想・レビュー・書評
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義満期までの室町幕府について様々なテーマでの論考が集まった一冊。最新のものを含めた研究史が整理されていて読みやすい。個人的に宗教政策に関してが興味深かったところ。仏教がいかに重要だったかが分かる。
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呉座勇一の「応仁の乱」以降、微妙な盛り上がりを見せている室町期。
3代義満までの初期にスポットを当て、最近の研究の成果を、実際の研究者が書き下ろした14本の論考で紹介。
専門書ではなくあくまでも一般向けの本で読みやすいものの、内容はかなり濃くて勉強になる。
最近は研究の進歩が著しく、小説や映画のイメージと研究成果としての史実との乖離がどんどん大きくなっているので、こういう一線の人たちが書いたものというのはとても助かる。 -
九州の南朝勢力を鎮圧するための九州探題の労苦。満足な根拠地を与えられず、在地の守護と利害が対立すれば、それは満足に戦えぬもの、と。今川了俊は、征西府をほぼ平定した後も、島津氏との関係で苦労。許す、背かれる、をくりかえすうちにもともとの味方の信頼も失っていき。最後は、義満に、懐良親王のあとをついで、明から対外窓口となることを危惧されて、罷免されたのでは、という見立て。/義満権力が桁外れという従来の評価には、それでも最終決済権は天皇にあったという点で、留保がつくのではという指摘/初期室町幕府は直義が最高権力者として全ての権限を行使する体制であったという試案/義詮が室町初期に受け継がれていた鎌倉幕府の制度を一つ一つ変えていったこと/などのトピックが興味深かった。