- Amazon.co.jp ・本 (337ページ)
- / ISBN・EAN: 9784801006812
作品紹介・あらすじ
知れば知るほど、死は育っていく。
甚大な空中汚染事故、消費社会の猛威、情報メディアの氾濫、オカルトの蔓延、謎の新薬〈ダイラー〉の魔手、いびつな家族関係、愛の失墜、そして、来るべき《死》に対する底なしの恐怖……。
日常を引き裂くこの混沌を、不安を、哀切を、はたして人々は乗り越えられるのか?
現代アメリカ文学の鬼才ドン・デリーロの代表作にして問題作、そして今なお人間の実存を穿つポストモダン文学随一の傑作が、より深く胸を打つ魅力的な〈新訳〉として装いも新たに登場!
ついに映画化!!
2022年12月、全国劇場&Netflixにて公開!
監督:ノア・バームバック/主演:アダム・ドライバー
感想・レビュー・書評
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死の恐怖。それ以外にどんな帰結があるのか。知覚できるあらゆるものが私の死と繋がっている。死の恐怖自体が私の死を育て、死をより恐怖すべきものたらしめる。家にいると電子機器の音が聴こえてくる。食品のパッケージにびっしりと記載されている化学物質が、目に見えなくてもリアルにそこにあるように感じられる。デマやフェイクニュースに我々が求めているのは真実性の復帰ではなく、畏怖を伴うほどの強い刺激だ。まるで狂ってるみたいにネットで喚き散らす人間。その隣りの投稿には死ぬ人間。人を殺しかねない激しい衝動。通りがかりの妊婦を殴る人間。良い効果があるらしい薬も我々にとってその物質が作用するメカニズムは正体不明。RNAワクチンは安全だが短期間で打ち過ぎない方がいいとはどういう意味なのか。まともに読まれないあらゆる注意書き。安全な範囲らしい放射能流出。ハザードマップ上危険かもしれないエリアにある家。30年以内にほとんど必ず起こるらしい地震。いつ大噴火してもおかしくない山。備蓄の量はどれだけあれば安心なのか。いっそ何の準備もしないで忘れていることが安心の正体なのか。スマホのアラートが鳴ったらどう行動すればいい。うまく行動すればミサイルは避けられるのか。核戦争のシミュレーションと核の冬による餓死人口。低く見える食料自給率に問題ないという人間。ウクライナで殺し合う映像。戦争の情報を楽しむ軍事オタク。新興宗教と共存する生活。新興宗教が引き起こす殺人。何をどう言い訳すれば死の恐怖がないといえるのか。それ以外のことを考えることなど本来できるはずもないのではないか。