犠牲者120万人 祖国を中国に奪われたチベット人が語る 侵略に気づいていない日本人
- ハート出版 (2018年2月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784802400466
作品紹介・あらすじ
チベットには、心から平和を祈る人々は僧侶をはじめたくさんいた。しかし中国は、そんなチベット人を無慈悲にも、大量に虐殺したのだ。侵略の実態を知るチベット人には、「平和憲法を守れ」という声は、他民族による支配の現実を知らない人の戯言にしか聞こえない。「日本人には絶対に同じ悲劇を繰り返してほしくない」本書には、祖国を失ったチベット人の願いが込められている。
感想・レビュー・書評
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チベットについて、自分は多くを知らない。「Free Tibet」という言葉を聞くに、どうやら中国から弾圧を受けていることは分かっていた。
2019年の香港の学生のデモを見て、ようやく日本も他人事ではないのだと思うに至った。今こそ、中国共産党について知る時だと思い、本書を読み進めていった。
果たして、タイトルに反して、本書の内容は手広い。チベットについて集中的に書かれているのは2章のみ。そこではチベットがいかにして中国共産党に取り込まれていったかが解説される。
それ以外の章では、筆者が日本とアジアのこれからについて憂慮し、取るべき未来を示してくれる。
筆者のペマ・ギャルポさんは戦後、難民として日本にやってきて帰化した。彼の目から見た日本を、本書を読むことで垣間見ることができる。その語り口はあまりにも暖かく、筆者が心から日本を愛していることが分かる。
本書のおかげでチベットが辿ってきた過去を把握することができた。さらには、中国共産党のこれまでについてもおさらいすることができる。また、戦勝国世界である現在において、アジアの連帯がどうあるべきかについても考えさせられた。
チベットについて知るつもりが、より大局的なアジア史観を教わった気分。かつての自分のような、アジア情勢について学びたい読者には強く薦めたい一冊。
(書評ブログも書いています。よければそちらも宜しくお願いします)
https://www.everyday-book-reviews.com/entry/%E3%82%A2%E3%82%B8%E3%82%A2%E5%8F%B2%E8%A6%B3%E3%82%92%E5%9F%B9%E3%81%86_%E7%8A%A0%E7%89%B2%E8%80%85120%E4%B8%87%E4%BA%BA%E7%A5%96%E5%9B%BD%E3%82%92%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E3%81%AB%E5%A5%AA%E3%82%8F%E3%82%8C詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
チベットが中国によって支配されて長い時間が経ちました。民族浄化という実質上のの虐殺や弾圧、迫害を受け続けています。誰でも知っているダライ・ラマ14世。でもチベットの現状を知っている人がどれだけいるか甚だ疑問です。
北京五輪の時に物凄く違和感が湧きました。何故平和の祭典の背後でこれだけの迫害が公然と行われているのに誰も声を上げないのか。何がオリンピックだと。
色々調べ、自分にも何か出来ないかと思って作った曲が「愚かで愛しいこの世界」です。
https://youtu.be/HmVthEBjrNk
この本はチベットを憂う本ではなく、このチベットに対する中国の迫害を見て、日本人は自分たちに危機感を憶えないのか。危機感を持たないと気がついた時には母屋迄攻め込まれる事になるという事を語っている本です。
著者ペマ・ギャルポさんが日本へ亡命してきたのは埼玉の毛呂山町なのですが、知る人ぞ知る日高市のとある病院の西蔵ツワン先生も同じときに亡命してきているようです。とても身近でびっくりしたのですが一気にチベットが近くなったような気がします。
さて、そんな身近に感じると言いながら、この本は僕に大混乱をもたらしました。
彼が言うのはこのような内容でありました。他にも沢山色々な事を教えてくれる本ではあるのですが、下記に該当する部分のインパクトがとても大きかった。要約した文章ですのでご了承ください。
「祖国を護るためには他の国(アメリカ)をあてにせず、武装を強化し国民全体が日本を守る意思を持たなければいけない。自分の国を守ろうとすることは世界の常識で、日本は戦後教育により祖国を大事に思う事がいけない事だと思わされて来た。憲法9条をいくら唱えても中国はチャンスと見たら躊躇せず攻め込んでくるのだから。」
大枠でいうとこのような内容です。この内容だけみると誤解を生みそうですが全体としては博愛に溢れた本ですので誤解なきようお願いします。
僕の中でこの言説に反発を憶える心と、頷かざるを得ない部分とあります。実際に祖国に攻め込まれ主権を失った人の言葉は重いです。言葉だけを弄んでいる人々とは重さが違います。しかも彼は今は日本人なのです。彼の憂いには共感する自分がいます。核武装すらすべきかもしれないという彼の言葉には到底頷けないのですが、ではどうやって国を守るのかと言われた時に言葉に詰まるのも事実です。
僕自身、集団的自衛権の行使の為の改憲については認める事はできません。しかしアメリカとの安全保障条約の揺らぎ、ホルムズ海峡のタンカー警護についての議論。待った無しの状況を迎えているのもリアルな現実なのです。
考えるしかない、みんなそれぞれ考えるのがまず必要だと思います。日本人は見せかけの平和だけを見て本当に考えなければならない事から目を逸らせ続けてしまいました。
話は変わらないようで変わりますが、やはり日本の投票率が上がらない現状にはこういった本当に議論しなければならない事から目を背けさせるように仕向けた、マスコミと政治の在り方が問題だったのではないでしょうか。
日本の棄権者の皆さん、日本国から馬鹿だから放っておいていいと思われていますよ、そろそろみんなで真剣に話し合いましょう。 -
チベット人ペマ・ギャロポ氏による著書。
果たしてこの平和ボケした日本に、チベット人が、いかに中国に侵略され、祖国を追われたのかを正しく理解している人が如何程いるのであろうか。
本書を読んでいると、単にチベットの悲劇、中国の危険性を紹介するだけでなく、まさに日本人が考えなければならない国防、国としての立脚点、国家意識、戦略、国家観、真の国際感覚、教育など多方面において日本人以上に考えており、その言葉には傾聴以上の価値がある。
こうしている間にも、中国は協力者を作り、スパイ活動を行わせ、海外にも拠点を作り、サイバー攻撃を行ったりと巧妙なる手で忍び寄ってきているという危機感を持たなければならない。
日本という国を失わないためにも。 -
不勉強は、罪だとつくづく感じた。
ざっくりと、チベットは中国に併合された、今も抵抗運動が続いている、程度の認識しかなかった。
著者が祖国を追われ来日して、日本が日本らしさを失なう過程を体験し、日本人以上に日本の行く末を案じている書。
戦前古くからあったチベットと日本との交流や大東亜会議の意味を再定義している。また、戦後から現在の日米、中国とチベットの歴史を検証した上で、60年代の思い出と共に日本人よりも日本人的な目線で古き良き日本が失われていくのを憂い、国際社会においてこれから進むべき日本人のあり方を説いている。
もっとチベット問題が知りたくなった。 -
ペマ・ギャルポ 著「犠牲者120万人 祖国を中国に奪われたチベット人が語る侵略に気づいていない日本人」(2018.2)、タイトルが長いですが、タイトルが内容を適格に表している気がします。日本には、法律、警察、裁判のような外的な力を必要としない社会の道徳や倫理がある。ただ、自由、個性、プライバシー、国際化の掛け声とともに、80年以降、破壊されてきている。また、日本は日中友好の美名のもとに経済支援を続け、その結果、中国を強大な独裁国家にしてしまった。私は日本が失った道徳、倫理、伝統、正義を取り戻すべきと!
次の9つの章立てです。①私の原風景(60年代の日本)②チベットの悲劇と日本 ③失われた日本の文化、言語、国家観 ④国際化の流れの中で国際感覚を失った日本人 ⑤チベット人が見た覇権国家・中国 ⑥歴史問題と日本の自己責任 ⑦大東亜会議の意義 ⑧日本の難民問題と憲法改正 ⑨「おかげさま」の復興へ。 -
中国に侵略されるとは、具体的にどういうことなのかが分かる。
平和条約が一方的に破られる→軍による侵略→実質支配→亡国(他民族による支配) という流れでチベットは侵略され、多くの方が亡くなった。
難民の受け入れは、受け入れる国・国民の覚悟がないと難しい。難民と、受け入れる国民の両方の尊厳が保たれないと、難民受け入れ政策は失敗する。
議員の使命は、国と国民を守り幸せにすること。チベットの例から、日本国憲法の9条は、日本を守ることはできない。中国は、9条のあるなしに関係なく、侵略できると感づいたら侵略してくる。
義務教育で、近代歴史を日本の立場を教えないといけない。そこから知識を深めていくかどうかは、個人の自由。世界・アジアにおいて、日本の果たした役割をきちんと見直すべき。大東亜会議の内容が知られていない。
日本が守りたい守るべき国と、日本国民全員が意識しないと、これからの厳しい世界情勢では国を守れない。今、危機的状況にある。
チベット難民として来日し、日本で教育を受け、日本文化について理解されているからこその著作であり、大変、勉強になった。実質的にアジア唯一の独立国だった、独立を守り通した日本の先人たちのことを、誇りに思う。