すぐわかる20世紀の美術

著者 :
  • 東京美術
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本棚登録 : 75
感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784808708467

作品紹介・あらすじ

美術とは何なのか?この根源的な問題をはらみつつ20世紀美術は多様な展開を見せた。その「わかりにくさ」を「面白さ」に変える入門書の決定版。

感想・レビュー・書評

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  • 20世紀の美術は、目まぐるしく変化する時代と同様に、様々な派、イズムが続々と出現し、そのスパンも5~10年と短い。20世紀の美術の源流は後期印象派、象徴主義、アール・ヌーヴォー、素朴派であり、そこからフォーヴィズム、キュビズム、オルフィスム、セクション・ドール、エコールド・パリ、ドイツ表現主義、未来主義、デ・スティル、シュープレマティスム、ロシア構成主義、ダダイズム、アメリカン・リアリズム、ヨーロッパ構成主義、ピュリスム、バウハウス、新即物主義、形而上絵画、シューレアリスム、アール・デコ、メキシコ壁画運動、アメリカン・シーン、現代彫刻、抽象表現主義、ポップアート、コンセプチュアル・アートと出現する。それぞれ、丁寧な解説と代表的な作品が挙げられていて、読んでいて非常に面白い。まさしく個の噴出と言っていいだろう。時代の動きにも影響はされているし、直前の美術運動への反動といった面も強い。
    さて、1950年代にアイデア勝負のコンセプチュアル・アートが現れてから以降は一体どうなっているのだろうか。意外と新しい流れは現れていないのではないだろうか。それとも百花繚乱という状態であろうか。昨年2019年に愛知・トリエンナーレを見に行ったが、どう総括していいのか、いや出来ないのか。そのあたりも探求していきたい。

  • この本のおかげで、現代アートへの興味と魅力が倍増した。全くのシロウトにも魅力が伝わるような解説を心がけて工夫されている。楽し過ぎて、3回くらい読んでしまった。ただし、いかにもな現代アートではなく、「より古典的な」現代アート(つまり20世紀前半)までしか扱っていない。「いかにもな」方については、本書ほど簡易な入門書がないのが悲しいところ。

    (なお、本書により足がかりを得たのちは、「20世紀の美術」「アート・ウォッチング」を初めとするもう少しお堅い図説を読み、「いかにもな」方へ進出を図っているところです!)

  • 様々な流派・イズムが乱立した20世紀の絵画の流れを簡潔にまとめてくれるありがたい一冊。

    ”芸術家は市民道徳や社会通念にとらわらない存在、アウトサイダーであるというロマン主義的なリベラリズム、ボヘミアニズムから、ダダイズムの壊し屋的なアナーキズム、あるいは徹底した反伝統主義を経て、今や自由をもてあまし、挑戦すべきタブーも、破壊、否定に値する偶像も見当たらず、前衛、が死語と化したのが現代である。”

    手厳しい。。

  • 概観するにはちょうどいい
    1文が長い文章が多いので、もうちょい区切ったほうが読みやすいと思う

  • 自分用キーワード
    ウィリアム・ドグーヴ・ド・ニュンク<盲目の家> ドラン<港の船、コリウール> アンリ・ルソー<飢えたライオン> ブラック<クラリネットのある静物> ドースブルフ<トランプをする人々> ピート・モンドリアン<菱形のコンポジション> ル・コルビュジエ<静物> ブランクーシ<空間の鳥> エルンスト<フランスの庭> マグリット<光の帝国> エドワード・ホッパー<ナイトホークス> ポロック<ブルー・ポール> 

  • 近代から現代の美術史がわかる。

  • キュビスム、ダダイスム、形而上絵画、シュールレアリスム、抽象表現主義、ポップアートまでの流れを作品、作者の思想を通して紹介。見やすい年表を添えられており、20世紀美術が一連の流れの中で理解できた。それぞれの画家の立ち位置も立体的に把握できる。

  •  題名の通り、20世紀の美術を概観したもの
     シャガールとかピカソとかクレーとかダリとかマグリットとか名前と絵は知っているけれど、一体どういう社会的文脈で有名になったのかを知らなかった

     で、その社会的文脈を知るためには概観を知る必要があると思って手にとったのが本書だ

     ブックフェアで定価の半額以下で買うことができた
     東京美術さんの心意気に感謝を表したい

    本書を読んだ理由

     さて、本書について話す前に、なぜ好きな作家が有名になった理由として「社会的文脈」を考えるようになったのかを述べる

     結論からいえば僕が今好きな作家である佐々木俊尚さんの著書「キュレーションの時代」に影響を受けたのだ

     「キュレーションの時代」ではキュレーションという概念を説明するために「アウトサイダーアート」について触れる

     これは簡単に説明すれば美術界とは関係のないいわゆる素人が書いた(しかも発表するつもりのない)作品のことだが、「キュレーションの時代」ではこの単なる素人の作品が評価された背景に注目する

     その背景というのは発見者の存在である

     ただキレイで上手であった素人の絵を、発見者がその素養をもって意味付けし価値を作り出したのだ
     価値がある理由を、「コンテキスト=文脈」を発見者は見出し、それが受け入れられて、始めて価値のあるアートとして受け入れられたと言うのだ

     それを読んだとき、マルセル・デュシャンのトイレのようなものが作品とされる理由がわかった気がした

    この読書体験から、美術が価値あるものとして大金が支払われる理由をもっと知りたくなったのである

     その理由が社会的文脈であると僕は「キュレーションの時代」からようやく考えることができた

    ***

    本書の内容

     さて、ここに来てやっと本書の説明に入ろう

     今まで述べてきたように本書は20世紀の美術を概観したものである
     「第1時世界大戦までの美術」と「両世界大戦間の美術」、「第2時世界大戦後の美術」という大きな章分けの元にその時々の美術界の流行、思想の経緯を説明していく

     半分以上が「第1時世界大戦までの美術」にあてられており、現在に近くなるほど記述が少なくなるのは、著者が「第2時世界大戦後の美術」を現代美術として見ており、それ以前を近代美術、つまり20世紀の美術と見ているからだろう

     「フォービズム」、「キュビスム」、「オルフィスム」、「セクション・ドール」、「エコール・ド・パリ」などなどなど「第1時世界大戦までの美術」で12種の流れを
     

     「バウハウス」、「シュールレアリスム」、「アール・デコ」などなど「両世界大戦間の美術」で10種の流れを

     第2時世界大戦後の美術では「抽象表現主義」、「ポップアート」、「コンセプチュアル・アート」以上3種の流れを紹介している

    ***

    本書の構成

     本書の構成はというと

     一つの流れにつき見開き1ページを割き、その流れに属する有名な作家を0~3人各見開き1ページずつ使う
     トピックスとして雑学的知識も1章につき3つほど差し込まれ、これも見開き1ページである
     また、必ずページの始めに年表と前後する流れを図示しており、全体の流れを効率的に学ぶことが可能だ

    ***

    本書は分かり易く20世紀美術の価値を紹介した本である

     さて、本書の説明は終わり、いよいよ本書の感想を述べよう

     一言でいえば「分かりやすい」である
     図による説明で時間的な流れを掴み、豊富に差し込まれた絵が全てカラーで、文字だけでなく直感的にどういった表現活動であったかわかるようになっている

     一つ一つ挙げていけばキリがないが、本書を読んだことで、19世紀から続く西洋美術の流れが「写実(印象派)→感情の抽象(フォービズム、ドイツ表現主義など)→感覚の抽象(キュビズム、オルフィスムなど)→合理性思想の追求(未来派、デ・ステイル、バウハウスなど)→自己批判(ダダイスムなど)→現在」であるということが理解できたように思う

     そして、本書を読む限り20世紀の美術は、社会との関わりが必然的にあり、バウハウスや未来派のように社会からの要請に応えたようなものもあった

     つまり、やはりアウトサイダーではないアートにおいても社会的文脈は重要であるということである

     アウトサイダーアートとの違いは、美術界の外か内かの違いであり、美術界の文脈に位置付けられるものか美術界の文脈に作家が位置付けるものかの違いにあるのだ

     村上隆の作品がなぜ高額で売れるのか
     それは彼が西洋美術界の文脈に受け入れられる作品を作ったからなのだ

    ***

    社会的文脈が価値を決める

     この考え方は「キュレーションの時代」でもある通り、これからの情報一般についてもそのまま言える
     今、僕らが生きている世界の中で価値があると感じる情報に、人びとはお金を出し、その情報を発信した人間に評価を与える
     
     溢れんばかりの情報の海で、情報を発信する側にとっても、自分の発信するコンテンツにどういう価値を持たせられるか(あるいは価値を持つか)を考えることは重要である

     「キュレーションの時代」における「キュレーター」とは違うが、情報の発信者(=コンテンツ作成者)にとっても社会的文脈を考えることは外せない業務になるのであろうし、本書はその社会的文脈を考える一助になりうるのではないかと思う

    ***


     てなわけで、「社会的文脈と価値と情報発信について」美術の歴史から考えてみた

     文脈って時間的広がりを持つものなので歴史を知ることは重要なのだと思うのだよなー



     てなわけで、

     さよーならー

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著者プロフィール

千足伸行(せんぞく のぶゆき)
美術史家、成城大学名誉教授。1940年東京生まれ。東京大学文学部卒業後、TBS(東京放送)を経て国立西洋美術館に勤務。1970〜72年、西ドイツ(当時)政府給費留学生としてミュンヘン大学に留学。主にドイツ・ルネサンス美術を学び、帰国後、国立西洋美術館に復帰。1979〜2011年、成城大学に勤務、現在は広島県立美術館館長。ヨーロッパ近代、特に世紀末美術を専門とし、多くの展覧会も企画。編著書に『世界美術大全集 西洋編』『アールヌーヴォーとアール・デコ』『交響する美術』(以上、小学館)、『もっと知りたいクリムト』(東京美術)、『隠れ名画の散歩道』『ゴッホを旅する』(以上、論創社)など多数。

「2021年 『画家たちのパートナー その愛と葛藤』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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