中央モノローグ線 (バンブー・コミックス)

著者 :
  • 竹書房
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感想 : 25
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (114ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784812471715

感想・レビュー・書評

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  • 5/1は中央本線が全通した日
    JR中央線沿いの街に住む8人の、等身大の「今」を描く

  •  『まんがライフオリジナル』に連載された4コマ・マンガで、JR中央線沿線に住む8人の女性たちのモノローグ形式で描かれる物語。

     中野に住むイラストレーター・なのか、高円寺の古着屋店主・マドカ、西荻窪の劇団員・茜、三鷹の大学生・ミカ、武蔵境の中学生(連載中に高校生になる)・キョウコなど、8人の女性たちのモノローグを通じて、中央線それぞれの街の個性がさりげなく巧みに表現されていく。

     4コマ・マンガだから「笑い」が大きな要素ではあるが、爆笑ではなく「クスッ」あるいは「ニヤッ」とさせられる上品でおとなしい笑い。その中には「中央線あるあるネタ」も多いが、べつに中央線のことを知らなければ面白くないわけではない(「中央線歴」が長い人ほど楽しめるのは間違いないが)。

     それに、この作品には「笑い」以外の魅力もある。「物語」と書いたとおり、4コマ・マンガでありながら、女性たちのモノローグの背後にライフストーリーが透けて見えるのだ。読み終えるころには一人ひとりが自分の友人に思えてくるくらいに……。
     そして、「笑い」と同じくらいの配分で「切なさ」もある。これはいわば「4コマ青春マンガ」でもあるのだ。

     業田良家は名作『自虐の詩』で、4コマ・マンガでも長編マンガ真っ青の感動を与えられることを証明してみせた。この『中央モノローグ線』には『自虐の詩』ほどの感動はないものの、「4コマ・マンガの歴史に新たな1ページを刻んだ」といってよいほどの独自性がある。こんなふうに、キャラクターのさりげない日常を描きながら人生を感じさせる4コマは、これまでなかった。シンプルでキュートな絵もいい感じだ。

     中央線歴四半世紀の私は、本作の舞台になった8つの街をそれぞれよく知っているので(ただし、武蔵境はそれほどなじみがないが)、なおさら楽しめた。

     難を言えば、武蔵境以西の国立や国分寺、そして我が街・立川も舞台にしてほしかった。

     武蔵境に住むキョウコちゃんのモノローグに、「ここはその名の通り『境』の街で――/中央線はここを過ぎると一気に普通っぽくなってしまうため/私たちは三鷹の向こうに強い憧れを持って暮らしています」という一節がある。
     これにはちょっと異を唱えたいなあ。国立・国分寺・立川はそれぞれ強い個性を持っているし、よくも悪くも中央線的だと思うから……。
     とか言いつつ、我々立川市民も23区内に出かけることを「都内に行く」なんて表現するのだけれど(笑)。

  • 中野、高円寺、阿佐ヶ谷、西荻窪、吉祥寺、武蔵境、荻窪、それぞれに割り当てられてキャラクターがモノローグで語る四コマ。中野の漫画家、高円寺の古着屋オーナーが一番多くて印象に残るかな。阿佐ヶ谷OLの年数を経て得たしたたかさや、西荻窪の劇団員のささやかな居場所だけど、それでも...と言ったところも目に。

  • 好きです。

  • 400 馬場北

  • 201305/中央線に住んでる人よりも、住んでない人がなんとなくイメージする「あの中央線」な空気感が出てて、他路線住民でもじんわり楽しめる。自分の路線でもこういう作品あったらいいなーと思ってしまう。

  • 面白いです!(*^_^*)中野、高円寺、阿佐ヶ谷、荻窪、西荻窪、吉祥寺、三鷹、武蔵境、と、JR中央線沿いの街に住む8人の女子(*^_^*)の物語。


    私のような地方に住む者さえ、うんうん、そうなんだろうね、と、それぞれの街の色、その街に何を求めて人は住まいするのか、が面白く読めたのだから、東京在住の人、特に、この漫画で取り上げられた街に住む人にはたまらない優しさと強さをもらえる作品なのではないだろうか。

    私も偶然だけど、少しずつこれらの街にはご縁があって、今は亡き従姉妹が高円寺に住んでいて泊めてもらったり、阿佐ヶ谷には本の雑誌の書評家先生が住んでおられたことがあったり、三鷹には娘の彼氏の大学の寮があったり、なんと言っても太宰治が心中の地だったり、吉祥寺には井の頭公園目当てで若いころにも、つい去年にも行ったばかりだし、と、なんか匂いがわかる気がするのも嬉しい。

    8人の女子(*^_^*)たちは、中野に住むイラストレーターのなのかさんを中心として、みな、日々を自分の身の丈にあった暮らし方で送っている。4コマ漫画なので、オチもきちんとあって笑えるし、でも、その笑いが時にツンと来る苦みを持っていたり、みんな、頑張ってるんだね、と元気づけられたり。

    川本三郎さんの「時には漫画の話を」で教えてもらったこの漫画。もう絶版になっていてなんとアマゾンでは定価の倍でユーズドが売られていたのを大人買い。このくらいの贅沢は許されていいかな、と思っていたら、近所の書店で見つけ、また買ってしまった私って・・・。(汗)
    新品の方は、東京に住む娘に何かのついでに送ってあげようと思います。
    彼女には馴染みのある街(特に三鷹には思い入れ深いんじゃないかな。二年間の遠恋中に通った街だから。彼が駅まで自転車で迎えに来てくれて、2人乗りして寮まで行った、ってよく言ってたから。)
    だから、きっと喜ぶと思うんだよね。

  • 中央線の“空気”を読む心地よさ。
    マンガに愛おしさを感じたのはひさしぶりです。

  • すばらしい。『遠野モノがたり』から作者を知ったのですが、中央線の「ありそうな」空気感が見事に再現されていて、同時に、どこか「街で暮らしてゆく」ことの切なさと暖かさが互いに交じり合って同居している。情緒的なモノローグが淡々としていて、何度読み返してもジンワリときます。絶版っぽいのですが、あちこち店内在庫を探し回ってみてよかった・・・!
    ただ、登場人物も描かれる街も数多いので、続編の『遠野モノがたり』よりも、少し散漫な印象が。どちらかと言えば『遠野モノがたり』のほうが、作品としては完成度が上かなぁ。

  • 中野~吉祥寺までの間の中央線沿線に住んだことがあるならば、一度は読んでおきたい名作。各駅の雰囲気が話の中によく染み出ていて、それがすごい。

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